2011年12月6日火曜日

■日航、再上場に高いハードル アメリカン破綻の影響は?


日航、再上場に高いハードル アメリカン破綻の影響は?
http://www.sankeibiz.jp/business/news/111201/bsd1112010503002-n1.htm
2011.12.1 05:00

 2012年中の再上場に向けて経営再建中の日本航空に、リスクが顕在化してきた。提携している米航空大手アメリカン航空の親会社AMRが11月29日、連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を裁判所に申請し、日航の経営合理化などに影響が出る可能性がある。これに加え、欧州債務危機に端を発した世界経済減退に伴う旅客需要減、来年から本格化する格安航空会社(LCC)との競争激化なども懸念材料だ。燃料高や株価低迷など難題が山積しており、再上場に向けたハードルは高くなっている。

 アメリカンの経営破綻について、日航は「運航に影響はない」とコメントした。アメリカンは再建中も他社との共同運航を続ける考えを示し、“ドル箱”の日米やアジア路線を縮小する可能性は低いとみられる。

 だが、両社の提携内容は共同運航だけでなく、業務面から経営ノウハウ提供まで多岐にわたり、アメリカンの今後の再建計画次第では、日航にも影響が及ぶことも考えられる。


 株価低迷、燃料高、LCC…難題山積

 日航とアメリカンの共同事業の提携はまず、今年4月にアジアと北米を結ぶ計10路線で共同運航路線を就航させた。この過程で日航は、機体整備やマーケティングなどの手法を学ぶほか、経営効率化や機材合理化などの面でアメリカンが利用する分析システムを採用した。この結果、東日本大震災後の運航ダイヤ編成では、1週間単位で路線や便数を見直すなど提携の具体的な成果を出していた。

日航は「アメリカンのノウハウをもっと学びたい」(関係者)とし、将来的には人事交流やさらなる経営ノウハウの共有も視野に入れていた。その矢先のアメリカン破綻となった。

 アメリカンの経営再建については、労使交渉で難航していた人件費削減に弾みがつき、燃費の良い新型機の導入、不採算路線からの撤退などの経営再建が進むとみる向きが大勢だ。

 ただ、“手本”としていたアメリカン自身が経営コストの増加で破綻したことで、連携関係が滞る恐れもある。

 早稲田大の戸崎肇教授は日航の経営面への影響は当面ないとみるものの、「今後は同じ航空連合(ワンワールド)の一員として、金銭以外の支援を検討しなければならない」と指摘した。アメリカンの運航路線見直しが日米路線にも及べば「両社の共同運航や乗り継ぎの利便性に影響が出る可能性がある」(アナリスト)。慶応大の中条潮教授も「両社の日米路線の役割を考え直さなければいけない」と強調する。

 日航再上場への懸念材料はアメリカンの破綻だけではない。足元の原油価格は1バレル=90ドル台半ばで推移、原油価格が1ドル上がれば20億円の営業利益が吹き飛ぶ。現在は超円高による為替メリットで相殺されているものの、資源高の流れは変わっていない。


 原油価格がさらに高騰したり円安傾向に進めば、予想以上の燃料費負担が生じる。

 再上場を阻む一番の懸念は、株式市場の低迷だ。日航の再建を進める企業再生支援機構は、支援を始めてから原則3年以内に保有株式を売却しなければならないが、国内株式市場の低迷が続いているため、支援延長論も取り沙汰されているという。

 このほかにも、来年から日本に本格参入するLCCとの競争激化とそれに伴う運賃下落も業績下ぶれ要因となる。

 日航の再建は今のところ、順調に軌道に乗っているようにみえる。5000億円超の債権カットや人員削減、不採算路線からの撤退で経営コストを大幅に圧縮。11年9月中間連結決算で1061億円の営業利益をたたき出した。「上場のハードル」として掲げた通期目標の757億円を上期で上回る成果を上げた。

 日航の大西賢社長は「どのような経済状況でも確実に利益を上げられる企業を構築していく」と強調するが、アメリカン破綻に加え、単価の高いビジネス客の減少を招けば、再上場にも黄色信号がともりかねない。


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