2013年2月7日木曜日

■【社説】中国は野蛮なサイバースパイ国家


【社説】中国は野蛮なサイバースパイ国家
http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887324261304578285152629425338.html?mod=WSJ_hp_mostpop_read
2013年 2月 05日 16:20 JST


 昨年、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)のオフィスにやって来た、情報機関の事情に詳しいある議員によると、最近のサイバースパイ行為に関する限り、米国企業には2種類しかないそうだ。ハッキングされた企業とハッキングされたことに気付いていない企業だという。

 そんなわけで、WSJもハッキングされていたという事実を知ってもたいして驚くことはなかった。

 具体的には、WSJの編集者、記者、論説委員など20数名の電子メールアカウントが中国政府によって数カ月以上にわたってハッキングされていた。ハッカーたちはWSJのシステムに侵入し、中国に関する報道をモニターしようとしていた。われわれはそうしたハッキングに昨年気付き、その対策を講じてきた。WSJに対する攻撃は、サイバースパイ行為を中国軍のある部隊によるものと考えているニューヨーク・タイムズへの侵入や、昨年起きたブルームバーグ・ニュースに対して試みられたハッキングに類似している。

 抗議されることを覚悟であえて言うが、われわれはこうしたハッキング行為を同じ部隊によるものと考えている。ニューヨーク・タイムズは中国側の動機について、温家宝前首相の一族の莫大な蓄財に関する同紙の調査報道と関係があるとみている。ブルームバーグは、当時国家副主席で現共産党総書記の習近平氏の親族の膨大な資産に関する暴露記事を出したあとにハッキングされたと確信している。

 WSJも特に昨年の薄熙来氏(前重慶市党委員会書記)の失脚に関連して中国政権にばつの悪い思いをさせるような記事をいくつも掲載してきた。中国政府は自らの腐敗に関する記事や、反体制派、チベット族・ウイグル族などの自由の闘士、政府の抑圧に勇敢にも刃向ってきた人々の著作の掲載に頻繁に異議を唱えたり、検閲したりしてきた。われわれはWSJの論説委員がハッキング被害を受けたことを、ジャーナリストの勲章と受け止めている。

 WSJへのハッキング行為は、サイバースパイ活動が特定の記事にとどまらず、情報源や報道内容に関する一般的な興味にも及んでいることを示している。米グーグル、2009年に経営破綻したカナダの通信機器メーカー、ノーテル・ネットワークス、英防衛最大手BAEシステムズといった企業も監視、商業知的財産や国家機密の窃盗を目的としたハッキングが中国流のやり方になっているということに気付いていた。

 米下院情報特別委員会が昨秋まとめた超党派の報告書の結論も同じだった。共和党のマイク・ロジャース議員と民主党のダッチ・ルパースバーガー議員が中心となった同委員会は、中国の通信機器大手「華為技術(Huawei)」と「中興通訊(ZTE)」による主張を調査した。自分たちはクリーンな企業であり、米国での事業展開がサイバースパイ行為のリスクを生じさせたり、重要なインフラへの脅威となったりすることはないというものだ。

 そうした主張とは裏腹の事実が浮かび上がった。特に華為技術に関しては、中国軍の情報工学大学の元学長が創設した企業であり、共産党とのかかわりが深く、その所有権についてもごまかしていたということがわかった。その報告書は「華為技術や中興通訊の機器を使った米国中の企業がおかしな、あるいは警戒を要する不具合を経験していた」と指摘している。こうした不具合の具体的な内容は機密の添付書類に記されており、明らかになっていない。両社はいかなる不正行為についても否定している。

 われわれは両社の否定にしっかりとした根拠があることを、少なくともそれが、WSJがハッキングの証拠を提示したときに中国当局者から得た返答よりもましであることを望む。中国大使館のある広報担当者はWSJに対し「中国政府はサイバー攻撃を禁止しており、中国の法律にしたがってそうした活動を根絶するためにできることはしてきた」と語った。

 こうした声明は旧ソ連のアンドレイ・グロムイコ外相の「ニエット(ノー)」と同じくらい信用できない。華為技術のような企業が海外市場に参入し、規制当局からの認可を受けるのがますます難しくなっているのはなぜなのかと疑問を呈する前に、中国の高官たちは中国がそのソビエト流のスパイ活動や窃盗行為でいかに国際的な評判を落としているかを考えるべきである。

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 より大きな疑問は中国がこうしたことをする理由と、そのスパイ行為への衝動から政権について何がわかるかである。

 昨年のWSJの論説欄で、マイク・マッコーネル元米国家情報長官、マイケル・チャートフ元米国土安全保障省長官、ウィリアム・リン元米国防副長官の3人は「サイバー空間での経済スパイ活動は中国政府の国策だ」と指摘、そうなった理由を中国政府が国民生活向上のために急激な経済成長を必要としているからだと説明した。3人は「中国からすると、コストや時間をかけて技術革新や知的財産を自ら生み出すよりも、盗んだ方がずっと効率がいい」とも書いている。

 それは確かにその通りだが、中国政府のサイバー攻撃を技術的な財産の分配を目的としたロビン・フッド的な活動の一部などと考えるべきではない。中国がスパイ活動を行う理由としては、開かれた情報交換、国民の個人的な考えにさえ脅威を感じている政権にとってそれはごく自然なことだからというのが大きい。つまるところ、圧政の最たるものである。

 中国が他に何を企んでWSJをハッキングしたのか知らないが、記事の発表が阻止されたことは1度もなかった。そのハッキング行為が結局は見抜かれて記事になってしまった今、中国の不面目は強調されるばかりである。こうなった以上、中国はわれわれへの観光ビザ発給を拒否したり、われわれのジャーナリストに嫌がらせをしたり、中国で展開するわれわれの事業に口出しをしてきたりするかもしれない。

 そうしたなか、中国によるメディアへのハッキングを国家安全保障問題として捉えた米連邦捜査局(FBI)によって捜査が進行中とも報じられた。それは世界の次の超大国を自負しながら巨大な盗人企業のように活動する中国政府によって実行された普通の犯罪でもある。

 中国はかつて人類文明の中心にあったかもしれない。ところが、デジタル世界における中国は野蛮な来訪者でしかない。われわれの電子メールの受信ボックスに侵入することで中国がどれほどの情報を得たにせよ、世界は中国についてそれよりもずっと多くのことを学んでしまった。




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