2013年3月21日木曜日

■キプロスの預金課税ショックで欧州危機再燃か


キプロスの預金課税ショックで欧州危機再燃か
小国救済の条件に銀行預金課税を持ち出したユーロ圏のみみっちさに世界の株価が急落。最悪の事態も招きかねない
http://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2013/03/post-2878.php
2013年03月19日(火)18時06分 フレヤ・ピーターセン

 EUなどに金融支援を求めている地中海の小国キプロスに対して先週、救済と引き換えの驚くべき条件が提示された。国民のすべての銀行預金に課税するというのだ。これを受けて週明けの世界の金融市場では株価が大きく下落した。

 ユーロ圏諸国などは100億ユーロ(130億ドル)規模のキプロス救済計画の条件に、銀行預金への課税を含めると発表。10万ユーロ(13万ドル)未満の銀行預金には6.75%、10万ユーロ以上に9.9%の課税を実施するとした。

 今週に入り、ユーロ圏各国の財務相は緊急の電話会議で小口の預金者に限っては課税しないことで合意したが、高額預金者への課税率はさらに引き上げることが検討されている。

 この決定で、キプロスの国民が預金を引き出そうとATMに殺到する様子が報道されている。同時に、ユーロ圏のより広い範囲で銀行取り付け騒ぎが起こることも懸念されている。ギリシャやスペインなど自国が経済危機に直面している国は、特にその危険が高い。

 AFP通信は、アメリカのコンサルティング会社CMCマーケッツのアナリスト、マイケル・ヒューソンのこんな発言を報じている。「ヨーロッパの政治家たちの目的が、銀行システムの根幹を成す社会的な信用そのものをボロボロにすることだったとしたら、彼らはこれ以上ないくらいの大成功を収めた」

 AP通信は、欧州債務危機の中にあっても、これまで各国の預金者が直接的な被害を被ることはなかったと指摘している。

小額の救済の割に大き過ぎるリスク

 ユーロが対ドルで3カ月ぶりの安値をつけるのと並行し、欧州株式市場も軒並み下落。スペインIBEX平均株価とイタリアMIB株価指数はともに2%下落した。ロンドンのFTSE100種総合株価指数は1%、ドイツのDAX株価指数は1.3%、フランスのCAC株価指数は1.6%、それぞれ下落している。肝心のキプロスの株式市場は、銀行休業日だったために開かれなかった。

 アジアの株式市場も影響を受けている。日経平均株価は2.7%、香港ハンセン株価指数は2.1%下落。一方でリスクの少ない円が買われ、円高が進行した。

 オーストラリアでも、S&P/ASX株価指数は2.1%下落した。オーストラリアン紙は、資金運用グループのペンガナ・キャピタルのファンドマネジャー、ティム・シュローダーズのこんな言葉を引用している――キプロスはGDPがユーロ圏17カ国全体に占める比率がわずか0.2%に過ぎない小国だが、投資家は連鎖反応を懸念している。

 AP通信は、英ソードフィッシュ・リサーチ社の最高経営責任者ゲーリー・ジェンキンズの発言を報じた。「中期的に見れば、銀行預金者にとって損失となるこのような決定は、欧州債務危機が再燃した場合に最悪の事態の引き金となる可能性がある。何より私が驚いたのは、キプロス救済程度のカネのために、ユーロ圏諸国がこんな大きな賭けに出ようとしているということだ」



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