2011年11月22日火曜日
■「医療観光都市」韓国・大邱の実情 神戸を参考に
「医療観光都市」韓国・大邱の実情 神戸を参考に
http://www.kobe-np.co.jp/news/iryou/0004633572.shtml
2011/11/21 17:52 神戸新聞ニュース
神戸市と昨年7月、親善協力都市提携を結んだ韓国・大邱(テグ)市。国の後押しを受けて先端医療複合団地を造成中で、神戸市と同様に医療産業都市を目指している。中でも大邱市が力を入れるのは、医療サービスと観光20+ 件を組み合わせた「医療観光20+ 件」で、日本人を含む外国人患者を積極的に誘致する。特徴的な韓方医療、自毛による植毛(自毛植毛)などの現場を訪ねた。
350年の歴史
韓方医療とは中国由来の伝統医学と、朝鮮ニンジンや鹿の角といった生薬を使う韓国の民間療法などが融合し、韓国独自に発展したものとされる。韓国では大学に専門で学ぶ学部や付属病院も。韓方薬材市場である「薬令市」で350年の歴史がある大邱では、30の韓方系医療機関がある。
「あなたは消化力がやや弱く、体が冷たくなりがちな『少陰人』です。消化を助け、体を温める食べ物の摂取、適度な運動を心掛けて」
大邱韓医大学校付属の大邱韓方病院。記者に4種類の韓方薬材を手に握らせ、腹部などに痛みや凝りがないかを触診した後、医師はそう語り掛けた。
韓方医療独特の体系「四象医学」に基づく診断で、体質を太陽人、少陽人、太陰人、少陰人の四つに分類。体質に応じた食事、ストレスへの対処法などを指導する。
薬膳食は体質に応じたものを提供する。少陰人の場合、体を温めたり、消化を助けたりするとされるネギ入りスープやジャガイモ、ニンニクなどを使った食事が準備される。希望すれば韓方薬の処方も。女性向けには、針を使った顔の皮膚美容も用意されている。
最新機器を使った診断もある。上半身の前面、背面の体温分布を画像化し、「肩の温度が高いのは緊張しているためで、ストレスを和らげて」「腹部の低温は腸が弱いため」などと助言。自律神経のバランスを調べる検査もあり、記者は「あなたはストレスを感じやすいので注意を」と指導を受けた。
世界的権威
自毛植毛については、大邱市にある慶北大学校の教授が世界的権威として知られる。髪の毛が太く、真っ黒で直毛の多いアジア人に適合した移植技術という。同大学校病院内に毛髪移植センターがあるほか、同大学校出身者らによる植毛可能な医療機関が集まる。
同市のシン・ドン・ピル・エステティッククリニック・ヘアセンターでは、阪神地域に住む50代の男性会社員が植毛を受けていた。
男性は40代ごろから頭頂部の髪の薄さが気になりだし、育毛剤を使用したが十分な効果が得られなかったという。知人を通じて大邱の植毛技術の高さや手術時間が短いことなどを知り、渡航を決断。入国前には、医療機関側とネット電話「スカイプ」で現状を相談し、日本で血液検査も受けていた。
手術は約4時間で、医師による説明後、すぐに開始。毛が抜けにくいという後頭部の頭皮を毛髪ごと帯状に切り取り、それを細かく分けて頭頂部に移植した。
手術後、「麻酔のためか、ほとんど痛みはなかった。すごいスピード感」と男性。翌日には包帯が取れ、抜糸などの処置は日本で受けたという。
このほか大邱の医療観光20+ 件で対応できる技術として、2時間程度で終わる歯の美白などもある。
現地の状況に詳しい旅行会社オリアンティ(西宮市)の山本茉(ま)由(ゆ)代表取締役は「本格的な病気の治療ではなく、韓方を生かした健康や美容増進の体験を、異文化を訪ねて歴史を学ぶ観光とつなげる方向なら、日本からの観光客が増える可能性はあると思う」と話す。
◇ ◇
外国人患者の誘致のため、大邱市では医療機関だけでなく、市など行政も取り組みを進める。
同市では、韓方医療や自毛植毛など医療機関の特徴を紹介したり、医療相談に応じたりするホームページ「医療観光20+ 件情報システム」の日本語版を用意。電話相談に日本語で対応できる職員も採用している。同市寿(ス)城(ソン)区の日本語版冊子では、韓方医学、西洋医学、歯科など計48カ所の医療機関を写真入りで紹介し、医療費の基準額も示す。
紹介する医療機関の多くは宿泊施設に近接しており、万一の場合でも対応しやすいことに配慮しているという。医療用語にも詳しい通訳や、患者と医療機関との橋渡し役であるコーディネーターの養成も進めており、同区保健所医療観光20+ 件係日本担当のペ・イスルさんは「体にメスを入れる治療を海外で受けることに、不安を感じるのはよく分かる。そうした日本人の心情に配慮しながら、可能な限り受け入れを目指したい」と話す。
医療の産業化については、2009年に誘致が決まった国家プロジェクト、先端医療複合団地の計画も大邱であり、今年10月に同団地内の医療センターが着工。13年に完成予定で、ここでは主に新薬と先端医療機器の開発に取り組む。
大邱市の担当者らは今年9月に来日し、神戸の医療産業都市の取り組みを視察した。担当者の一人は「神戸市は10年以上前から医療産業都市構想を進めてきた“先輩”。神戸空港が近いことなど交通の便の良さや、企業の集積が進んでいることなどが参考になっている」とし、今後も神戸に学びながら医療の産業化を目指したいという。
神戸市と大邱市
両市は今年2月、今後5年間の交流事業計画をまとめた「親善協力都市交流事業協定」に調印し、先端医療産業分野での共同研究開発などが明記された。理化学研究所分子イメージング科学研究センター(神戸市中央区)と大邱韓医大学校は、韓方薬を使って認知症などへの効果を確認し、仕組みを解明する共同研究に着手している。
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