2011年11月16日水曜日

■シンガポールがカジノ規制を厳格化?


■東南アジア  シンガポールがカジノ規制を厳格化?
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2011/11/post-2337.php
Singapore May Ban Debtors From Casinos
2011年11月15日(火)17時51分 ニューズウィーク パトリック・ウィン

ラスベガスを凌ぐカジノ天国となったシンガポールがギャンブル依存症の経済弱者を救う苦肉の策
 シンガポール経済はカジノ効果で好景気に沸いている(カジノ総合リゾート「マリーナ・ベイ・サンズ」)

 借金のある人、自己破産した人、生活保護を受けている人はカジノに入場できません──そんな法案を、シンガポールの国会議員や精神カウンセラーらが議会に提出しようとしている。

 シンガポールの日刊紙ストレーツ・タイムズによれば、法案の狙いは「経済的に不安定」な人々をギャンブル依存症から守ること。一攫千金を夢見てカジノにのめりこみ、さらなる深みにはまり込むケースが急増しているのだ。

 シンガポールにとってカジノは、国を挙げて推進してきた観光客誘致の目玉。今年のカジノ収入は、ラスベガスを上回る64億ドルに達するとみられ、マカオに次ぐ世界2位に躍り出る。

 国家が市民生活を厳しく統制してきたシンガポールだけに、ギャンブルという新興産業が国民の道徳心を破壊するとの批判が起きた時期もあった。だが、シンガポールの好景気を牽引するカジノ産業を規制するのは非現実的。ギャンブルにのめり込みそうな危険人物をカジノから締め出すのが一番手っ取り早い、ということなのかもしれない。




■カジノに懸けたシンガポール
http://www.newsweekjapan.jp/newsroom/2010/07/post-122.php
2010年07月06日(火)02時05分 ニューズウィーク

 6月23日、シンガポールでカジノ総合リゾート「マリーナ・ベイ・サンズ(MBS)」が正式に開業した(一部は4月に先にオープンしていた)。先に、南部セントーサ島にユニバーサルスタジオと共にオープンしていた「リゾートワールド・セントーサ(RWS)」に次いで2つ目になる。

 これでシンガポールのカジノ・リゾートが出そろった。観光客数の低迷に頭を悩ませた政府は、このカジノ事業に観光立国としての生き残りを懸けていた。MBSのトーマス・アラッシCEOは、月に7万人、年に1800万人の来場者を見込んでいると自信を見せている。

 香港のディズニーランドやマカオのカジノ建設ラッシュなど、アジア各国による観光客獲得競争に一歩遅れをとっていたシンガポール。法律を改正してまでカジノ開発に焦点をしぼったのは、経済的に好調な中国からの観光客を惹き付けたいという狙いがあった。

 この国家的なカジノ計画のはじまりは、カジノ管理法案がシンガポール国会を通過した06年2月に遡る。それまでカジノは法律で禁止されていた。

 政府が認可すると発表した2枠のカジノライセンスを巡り、カジノ大手19社が誘致計画などをプレゼンして競い合った。最終的には、まず06年5月にカジノ大手ラスベガス・サンズが、金融街近くのマリナ・ベイで、シンガポール史上初となるカジノ・リゾート開発のライセンスを獲得。そして同年12月には、マレーシアに拠点を置くリゾート開発大手ゲンティン・インターナショナルが、セントーサ島での国内2つ目となるカジノ・リゾート開発のライセンスを認められた。


■実はカジノに怯えるシンガポール

 ただカジノ建設を観光産業の起爆剤にしたいという思惑の裏で、政府は国内において大きなジレンマを抱えることになった。

 政府が望んでいるのはこんな光景だ。中国本土からの観光客でカジノフロアーは連日大盛況で、マカオ・カジノのように中国人ハイローラーが湯水のごとく大金を落とす。だがそこには、普通のシンガポール人の姿はどこにも見当たらない----。

 シンガポールでは過去にも何度か、カジノ建設案が浮上している。02年の経済審理委員会でも賭博施設の開発が検討されたが、リー・シェンロン財務相(現首相)は「(シンガポール国民に)ギャンブル依存症が増えるリスクがある。また、組織犯罪やマネーロンダリングにつながる」と主張。社会不安を引き起す可能性があり、シンガポールの徹底した統制社会への脅威、ひいては建国以来45年間続く人民行動党(PAP)体制の崩壊につながりかねないという警戒感を示して、建設を見送ったことがあった。

 1965年の独立以来、建国の父にして現首相の父親であるリー・クァンユー内閣顧問が徹底して国民を管理、統制してきた理由の一つに、私会党と呼ばれる華人秘密結社の存在がある。建国前には賭博、麻薬などの利権にはじまり、ストライキや選挙へ介入していた組織だが、現在はほとんど消滅している。政府が恐れているのは、カジノのような商業施設が誕生すれば、再び同様の組織が暗躍する可能性だ。

 一般の中国系シンガポール人のギャンブル好きも、政府の懸念材料だ。政府の発表では、約8割を華人が占めるシンガポール人は毎年、政府が管理する合法賭博(ロトやトト)で60億SDを費やし、海外のカジノで15億SDを落とす。私はシンガポールに住んでいたことがあるが、街のあちこちにある販売所で老若男女問わず行列をなす光景は、珍しくも何ともなかった。

 ある英国団体が以前行なった調査では、カジノで最も負けている国民はオーストラリア人に次いでシンガポール人が2位。1人あたり500ドルほど負けている計算になるという。カジノがギャンブル依存症の増加を招く引き金になりかねない。


■国民への規制も効果なし?

 カジノの認可でパンドラの箱を開けてしまったシンガポールは、こういった諸問題に対処するために、シンガポール人をカジノに近づけない対策を取りまとめているが、その効果は疑わしい。

 まずシンガポール国民からは入場料を徴収する課金制度。1日につき100SD、または1年間の年間パスならば2000SDを支払わなければ入場できない。ローカル人にとってこの金額設定はかなり高く、気楽に足を運べる額ではない。だがカジノで最大の顧客は、実はシンガポール人と永住権保有者になるだろうとシンガポールでは言われている。

 政府は国民に対して、この事業があくまで総合リゾート・プロジェクトであってカジノはその一部分でしかないと強調している。そして全敷地内でカジノが占めるスペースの割合を5%以下にすることを定め、例えば、MBSの敷地内でカジノ施設の占める割合は3%に過ぎない。ただカジノが目玉であることを考えれば、これも大した効果があるとは思えない。

 リー・シェンロン首相による05年のカジノ解禁の声明でも、「このリゾート開発は1年以上の間、政府によって検討されてきたプロジェクトだ。それにはカジノのような賭博場も含まれている」と慎重な言い方をしている。また国民の目をカジノから逸らせるために、地元メディアでのカジノ広告を禁止している。

 「水がきれいすぎて、魚がいない」と香港や台湾から揶揄されるシンガポール。水を汚す必要に迫られた今、シンガポールの素顔が見られるはずだ。



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