2011年12月15日木曜日

■破産に近づくデトロイト:逃げ場なし


The Economist 破産に近づくデトロイト:逃げ場なし
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/32472
2011.12.14(水)
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(英エコノミスト誌 2011年12月10日号)

自動車の街は財政破綻に近づいている。

 ゼネラル・モーターズ(GM)とクライスラーは破産手続きを経て再生したが、今度はデトロイト市が財政危機に瀕している〔AFPBB News〕

 1960年代にベリー・ゴーディのモータウン帝国が放った最初のヒット曲は「Money(That's What I Want)」だった。これは今のデトロイトのテーマ曲であっても何らおかしくない。

 ミシガン州は12月6日、デトロイト市吸収に向けた最初の法的措置を取った。もし実現すれば、デトロイト市は州に吸収された全米最大の都市となる。

 問題は数十年前から積み上がってきた。不動産価格の下落と、裕福な市民の郊外転出が税収を直撃する一方で、なお広大な都市の行政サービスにかかる費用は税収減に見合うほどには減らなかった。


来春には資金が枯渇

 景気後退の影響は特にミシガン州では深刻で、これが危機の引き金となった。デトロイト市のデイブ・ビン市長は今、市は2012年4月に資金が枯渇すると話している。

 問題を解決できないことは「自らの運命をコントロールする能力」を失うことを意味する、と市長は付け加える。これは、財政難の地方政府や学区に対して緊急管理人を任命する権限を州に持たせる法律「公法第4号(PA4)」に言及した発言だ。

 緊急管理人が任命された場合、選挙で選ばれた市議会議員の権限は一時停止され、管理人が市の契約や資産、職員、給与、各種給付金に対する実権を握る。ミシガン州知事は12月1日に、フリント市に緊急管理人を任命した。

 デトロイトでは12月6日に、結果次第で州による吸収が決まる30日間に及ぶ予備財政審査が始まり、反発が高まっている。デトロイト市は州による吸収は望んでもいないし、必要でもないとしている。

 だが、ビン市長はミシガン州が取った行動を非難したものの、その措置がデトロイト市を救うために必要な合意を上手くまとめるのに役立つかもしれない。もし労働組合が拒否すれば、残る選択肢がもっと悪いものになることが分かっているからだ。


人種問題の様相も

 こうした困難に加えて、この戦いは人種問題の様相を帯び始めた。デトロイトのある女性市会議員は、奴隷制との闘争を呼び起こす発言をした。地元媒体はリック・スナイダー州知事のことを、黒人が多数を占めるミシガン州の都市に対して法律の「ムチ」を使う奴隷の主人と表現している。

 ミシガン州選出の黒人下院議員ジョン・コニャーズ氏は連邦司法長官に書簡を送り、差別的なやり方で適用されているとの懸念を示して、PA4の再考を求めた。ベントンハーバー、エコース、フリント、インクスター、ポンティアックのような黒人比率が高い管轄地域はすべてPA4の適用に見舞われている。

 選挙イヤーである2012年に、白人で共和党のミシガン州知事が民主党の黒人市議を免職する権限を持つ人物を任命したら、デトロイト市では騒動が一層大きくなるだろう。しかしPA4に異議を申し立てる試みが始まっており、署名が一定数集まれば、2012年11月の住民投票まで法律が一時失効する。

 もしそうなった場合、間違いなく複雑な法廷闘争が起きるだろう。企業にとって、このような長引く危機は有難くない結末だ。不確実性が、デトロイト市の商業地区や中心部で芽吹いてきた景気回復の芽を摘んでしまう恐れがあるからだ。

 ミシガン州知事はデトロイトを救う戦いに踏み切ることで相当なリスクを背負い込んだ。しかしそれ以外の選択肢はもっと悪いかもしれない。例えばデトロイトが破産したりすれば、ミシガン州の他の地域にも影響するかもしれない。裕福なオークランド郡は、隣接する市に問題があるというだけでトリプルA格付けを失うだろう。

© 2011 The Economist Newspaper Limited. All rights reserved.英エコノミスト誌の記事は、JBプレスがライセンス契約 に基づき翻訳したものです。
英語の原文記事はhttp://www.economist.com/で読むことができます。



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