2011年12月2日金曜日

■年末年始の国内旅行、前年並みの動きか


年末年始の国内旅行、前年並みの動きか
http://www.kankokeizai.com/backnumber/11/backnumber/chiiki_kanko.html
第2635号《2011年12月3日(土)発行》     

 東日本大震災や自然災害の風評などで、国内旅行市場は大きな打撃を受けたが、時間の経過とともに回復の足取りも力強さを増しつつある。「西高東低」傾向に大きな変化はないようだが、首都圏の温泉・観光地からは「入り込みは増えている」との声も聞こえてくる。「この先どうなるのかと絶望したころと比べると、環境はグッと良くなっている」とある旅館経営者は安堵の表情を浮かべる。稼ぎ時、年末年始の動きを追った。


旅行業

 近畿日本ツーリストの首都圏発商品は、北海道方面の添乗員付きツアーが好調。また、沖縄方面商品は全社キャンペーン「たのシーサーおきなわキャンペーン」などが奏功し、前年比2割増。このほか、伊豆・箱根、新潟、信州、伊勢志摩、山陽の各方面も好調だ。通期で取り組んでいる早期申し込みを対象とした割引施策も行い、需要の囲い込みを図っている。

 「全方面で前年並み」というのは日本旅行。その中でも好調なのは首都圏・東京ディズニーランド(前年同期比5%増)や京阪神(同3割増)、九州(同2割増)などだ。「特にディズニーランドは、西日本や九州地区出発分が伸びている」という。一方、首都圏発関東方面、京阪神発関西方面の近郊プランは間際化傾向が続いている。

 トップツアーは「昨年並みの予約状況だ」。新幹線開業効果が続く九州方面が好調という。12月29日や1月4日などに格安で宿泊できるスペシャルデーを設けるなどして消費者を引きつける。

 阪急交通社は全体で前年同期比10%増(人員ベース)となっている。特に、九州新幹線効果で近畿方面は70%増、九州が30%増、四国や中国方面は20~30%増と好調だ。「全般的に西高東低で、西日本がいい。北海道や沖縄方面は10月の同時期と比べると予約の入りが鈍かったが、ここにきてほぼ前年並みとなった」という。宿泊プランでは沖縄周遊や南九州周遊コースが売れ筋。

 クラブツーリズムの予約状況(販売高ベース)は「ほぼ前年並みかややプラス」に。東日本大震災の影響で、福島を含む東日本方面は「依然苦戦中」としており、西日本でこの落ち込みをカバーしている状況だ。「目立った好調商品は見当たらないが、年内出発(12月30、31日)が比較的反応がいい」。

 日帰りバスツアーがメーンのはとバス。「まだ動向が見えていない」とするが、11月が好調だったことから、年末年始も手ごたえを感じている。週末は管理部門のスタッフも客の誘導などに駆り出されており、この状態が続けば年末年始も多忙となりそうだ。しかし、「栃木や茨城方面はまだまだ敬遠されている」。

 ANAセールスは沖縄、関西、中四国方面が前年超えの状況。

 ジャルパックは「ほぼ前年並み」。日並びの関係で好調なクリスマス連休は、東京ディズニーリゾート商品や北海道商品が好調。クリスマス連休も好調の沖縄については、11月25日に「沖縄を遊ぼう」と銘打った商品を発売し正月明け需要に対応している。

温泉・観光地

 「中・小規模旅館はまだ空きがあるが、大手旅館や高級旅館は既に満室状態」というのは群馬県の草津温泉。「多少料金が高くても、年末年始ぐらいはリッチに過ごしたいのでは」と旅館協同組合。「入り込みが増えているのは嬉しいが、全般的に宿泊単価が低い」のが悩みだ。また、間際化に加え、連泊が少なくなっているのが最近の傾向という。「昔は3、4泊する客もいたが、今は1泊2日が多い。12月31日に泊まって1日に帰り、後は家でのんびりするというスタイルだ」。

 北海道・定山渓温泉は、昨年並みの予約状況を見込んでいるが、「今年は例年以上に早めに予約が入っている」と旅館組合。11月24日現在、12月30日〜1月2日の予約は8割程度埋まっている。定山渓温泉は10月の紅葉の期間に観光入り込みのピークを迎えるが、今年は昨年並みの入り込みを確保しており、この勢いを年末年始、その後のスノーシーズンにつなげたい考え。

 兵庫県の城崎温泉は、冬の味覚、カニをPRする恒例イベント「カニ王国」が11月23日にスタート。女性客を呼び込む「女子旅」のキャンペーンなども展開している。旅館協同組合は「年末年始の状況は分からないが、8、9月は入湯人員でみると前年を2割前後上回った。女子旅なども予想以上に反響があるが、宿泊に結び付けられるかが重要だ」と話す。

 九州新幹線の全線開業が追い風となっている熊本県。阿蘇市観光協会は「9月までの宿泊人員は、関西からの宿泊客が7%増加した。ただ、韓国人客の減少で、全体では前年実績には届いていない。新幹線の全線開業、12月までの南九州DC(デスティネーションキャンペーン)などの効果は大きいが、年末年始、それ以降の状況は楽観していない。一過性に終わらせない取り組みを考えたい」。

 一方の東北新幹線は、全線開業から4日で1周年を迎える。青森県青森市の浅虫温泉旅館組合によると、12月31日はすでに多くの施設が満館の状況。年末年始を含めて1、2月に開業1周年の集客効果を期待する。今年3、4月は東日本大震災による新幹線の運休などの影響を受けたが、7月以降は回復し、9月は前年比33%増だった。

 台風被害の風評の払しょくに取り組む和歌山県の観光地。主な道路はすでに復旧しているが、復旧工事で運休となっていたJR紀勢線の紀伊勝浦〜新宮駅間が3日に運転を再開した。白浜温泉旅館協同組合は「運転再開を契機に被害のイメージを払しょくしたい。再開に合わせて県やJRが実施する誘客キャンペーンにも参加する。年末年始には多くの観光客に来てもらいたい」と期待をかける。


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