2012年2月2日木曜日

■業界人が語る2011年実績と市場予測-読者アンケート(1)


業界人が語る2011年実績と市場予測-読者アンケート(1)
http://www.travelvision.jp/news/detail.php?id=51975
2012年1月26日(木)

 今週火曜日から旅行会社の今年の展望、方針をまとめた記事を掲載しましたが、今回は読者の方々を対象に実施したアンケート結果を掲載します。読者の方々のそれぞれの業務を通して見た2011年の動向と今後の予測をたくさんいただきました。2012年は、ロンドンオリンピック、日中国交正常化40周年、東京スカイツリーの開業など明るい材料や、日系LCCの本格運航など業界の変化につながりそうな出来事も予定されていますが、実務を通してどのように感じているでしょうか。未曾有の危機に襲われた2011年を振り返りながら、2012年がどんな1年になるのか、また、どんな1年にしていきたいのか、率直な意見をまとめました。

 ※旅行会社、航空会社、ホテル、ランドオペレーター、旅行業関連の方など106人の方にご回答いただきました。ありがとうございました。

2011年の重大ニュースは東日本大震災と原発事故

 2011年の重大ニュースとして12項目を挙げたところ、72人が東日本大震災を、19人が原発事故と回答しました。あわせると91人と、全体の8割以上になります。「2011年上期の団体案件がほぼ中止となり、業績に多大な影響が生じた」(第1種旅行会社営業、50代前半、男性)「旅行先の選び方の意識が変わった気がする。海に近いという利点が『もし地震が起きたら津波が来る』という考えに直結して難色を示されたことも」(第2種旅行会社カウンター、20代後半、女性)など、会社の業績に影響を与えただけでなく、個人の価値観や趣向にも変化が生じたようです。

 また、日本全体で、「絆」という言葉がキーワードにもなりましたが、「ボランティアツアーに個人的に参加した。現地の方々と交流を持てたが、それをどう生かしていくか考えてから復興支援を考えたいと思った」(第2種旅行会社カウンター、40代前半、女性)という人も。このあとの、「2012年に注目が集まると思う旅行商品は?」という質問項目の回答にも、ボランティアツアーと回答した人は多く、はからずも震災によって旅行業界に新たな商品ジャンルが確立しました 。

 震災、原発以外の回答は全て一桁台ですが、その中でもっとも多かったのは、タイの洪水と回答した4人。「レジャーのみならず、業務渡航の売上にも非常に響いた。マスコミの影響により被害が出ていない地域も敬遠され、タイ全土すべてが洪水にのまれている印象を持ったお客様も少なくなかった」(第2種旅行会社営業、30代前半、男性)とメディアの報道のあり方を指摘する声もありました。また、チュニジア・エジプト暴動、円高基調、日系LCCを選んだ人は3人、プライベートフェア開始、燃油サーチャージ高騰を選んだ人は1人に留まりました。

 さまざまな要因により旅行需要が落ち込んだことも事実ですが、8月には海外旅行者数は2ケタ近くの伸び率を示し、単月で過去最高を記録するほど、夏以降は旅行需要が回復するという傾向が見られました。「震災後の反動か、夏の旅行が激増した」(第1種旅行会社営業、40代後半、女性)、「震災後は申し込みがほとんど無くなり、団体旅行も取りやめや延期になったが、個人的には海外や国内の旅行にでかけていたことがあとでわかった。後半の秋になって団体が集中した」(第2種旅行会社カウンター、40代前半、女性)と回答した人も。では実際に、2011年に好調だったデスティネーションはどこだったのでしょうか。

アジア強し、安・近・短の傾向は継続ヨーロッパやハワイ、国内旅行を挙げる声も
 
 2011年好調だったデスティネーション、もしくは売り上げを伸ばしたデスティネーションについての質問(複数回答)では、「アジア」が106人中52人とほぼ半数を占めました。また、ヨーロッパやハワイ、ミクロネシア、国内を挙げる人もいました。

 アジアでは、「安・近・短の最たるもの」(第3種旅行会社営業、50代後半、男性)という韓国(都市ではソウル)が人気で、「韓流ブームとウォン安」(その他旅行業営業、20代前半、女性)という回答が目立ち、特に最近では韓流やKPOPブームが後押しした可能性が伺えます。「最近、海外ではないという感じになってきた」(第1種旅行会社営業、50代後半、男性)、「女性のリピーター客増加が売り上げを伸ばしている」(その他旅行業企画、20代前半、男性)などの意見もありました。旅行需要を喚起する要素として安・近・短といえるデスティネーションはやはり強いようです。また、台北、上海、香港、北京などの都市も挙がっていました。

 アジアと回答した人の中には「(震災の影響で)遠距離の旅行に出かけることに不安を感じたのでは」(第2種旅行業カウンター、30代前半、女性)という意見もありました。ただ、中・長距離のデスティネーションも不調であったわけではないようで、ヨーロッパと回答した人は20人、ハワイは14人でした。ヨーロッパについては、円高だけではなく、「ドイツ・ロマンティック街道をからめ中欧ツアーが売れた」(第3種旅行会社営業、60代、男性)、「FCバルセロナ観戦の方が増えた」(第1種旅行会社企画、40代後半、男性)など、その多様性を挙げる声も。また、業務渡航を取り扱う旅行会社では、「国際会議(学会)が多かった」(第3種旅行会社営業、50代前半、男性)との理由を挙げた人もいました。

 国内との回答も多く、18人。全体的に西日本が好まれる傾向があり、九州新幹線の開通などの理由が挙がっていました。その一方で、ボランティアを兼ねたパッケージツアーへの申し込みや復興支援のために被災地を訪れるという需要もあったようです。また、ハワイやミクロネシア(都市ではグアム、回答者数は8人)は、「グアムのウェディングが好調であった」(第1種旅行会社カウンター、30代前半、女性)など、ウェディング需要が堅調でした。なかには、「国内で結婚式をできないお客様や公に盛大な結婚式をできないお客様が、円高・安心・快適なハワイへ、海外ウェディングを実施するため、たくさん来訪された」というように、震災の影響と考えられる回答も目立ちました。

2012年“売れる”デスティネーションは、ロンドン、ハワイ、東京や平泉、小笠原

 2012年に“売れる”と思うデスティネーションについて聞いたところ、ロンドン、ハワイ、国内の回答が多い結果となりました。ロンドンは、ロンドンオリンピックの影響で観戦ツアーや露出が増えることでの注目の高まりが期待されているようです。また、円高ユーロ安が続いていることも選ばれた要因のひとつです。ハワイは明確な理由を挙げる回答者はいなかったものの、「原点回帰」(第3種旅行会社営業、50代後半、男性)というコメントがあり、日本の海外旅行を盛り上げてきたハワイに期待する声もありました。

 また、韓国も引き続き、“売れる”デスティネーションとして多くの人が選んでいました。デスティネーションの魅力だけでなく、安・近・短、ネット商品、ダイナミックパッケージといった旅行のしやすさも理由にあがっています。

 国内では東京や平泉、小笠原諸島、中国地方が選ばれています。東京はもちろんスカイツリーの開業、平泉や小笠原は世界遺産登録などに注目が集まっていることに比例した旅行需要の高まりが期待されているようです。また、中国地方は大河ドラマ「平清盛」の放映で、広島や宮島へのゆかりの地ツアーなどに注目が集まるのではという声がありました。

 デスティネーションではなく、2012年に注目が高まると思う旅行商品についても質問したところ、オリンピックや平清盛ゆかりのツアー、ボランティアツアー、エコツアーなど、テーマ性のあるツアーでした。一方で、ダイナミックパッケージやエアー&ホテル、LCC利用のツアーなどを挙げる人も多く、個人旅行が増えているという傾向にあわせ、FIT商品に注目が集まっています。このほか、クルーズを挙げる人もあり、「クルーズ商品が特別なものではなく、コンスタントに販売できるようになればいいと思います」(第2種旅行会社、女性)というコメントもありました。



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