2012年4月4日水曜日

■なぜ日本企業は劣勢なのか 大学生が世界で見た「勝てないワケ」



■なぜ日本企業は劣勢なのか 大学生が世界で見た「勝てないワケ」(上)
http://www.sankeibiz.jp/business/news/120325/bsg1203251201000-n1.htm
2012.3.25 12:00

~世界の若者と交流して分かったこと~ 

 なぜ、日本の企業はいま世界で劣勢に立たされているのか。挽回するには、何が必要なのか-。獨協大学4年の有志学生記者、金田隼人さんが、世界一周をしながら各国の大学を巡り、ともに未来を描ける同志を探す旅の中で考えた。半年に及ぶ卒業旅行では、その難題を解くいくつかのカギが浮かび上がってきた。

 □ リポーター 獨協大学 有志学生記者 金田隼人さん

 日本企業や日本の社会では、「グローバル化」という言葉がごく日常的に飛び交うようになった。だが、大学生をはじめとする若者たちは、漠然とした見えないものを追いかけるかのような不安に襲われ、言葉だけが独り歩きしている。

 いったい「グローバル化」とは何なのか-。海外と日本では何が違うのか-。何を変えていかなければならないのか。大学生という視点で海外と海外の同世代を見てみたいと思った。

 飛び入り日本語授業

 「彼らは何を考え、どういう将来を描いているのか」「世界中の大学を見て、各国の教育環境、文化を肌で感じたい」「今後の将来を共に描ける同志を見つけたい」…。次から次へと夢がふくらんだ。

 大学の先輩の大村貴康さんと宮本秀範さんが昨年、世界一周大学巡りのプロジェクトを自分たちで立ち上げ、成功させた。その旅は、昨年(2011年)2月8日付「Campus新聞」で、「起業調査の2人旅 『世界一周ライブ!』」として紹介された。その第2期プロジェクトとして旅立つことにしたのである。

 このプロジェクトは、世界の大学へ出向き、大学生たちが描く夢を直接、聞き取り調査をするというものだ。今年(2012年)も、昨年と同様に数多くのスポンサー企業や学生団体の支援、協力を得ることができた。経済界の著名人たちの応援メッセージもいただき、2011年8月30日、半年間の世界一周大学巡りの旅に出発した。

 日本からアジア、中東、ヨーロッパ、アメリカ東海岸、中南米、アメリカ西海岸の順に、23カ国50の大学を訪ねた(ルート図を参照)。各国の大学訪問では主に、日本語や経済・経営を学ぶ学生、教授に会い、インタビューを行った。

 このほかにも、大学のキャンパス見学や講義の聴講もさせてもらった。日本語学科ではなんと、にわか日本人講師として飛び入りで授業をする機会にも恵まれた。事前に大学側に面会の予約を入れることもあったが、キャンパスに飛び込んで見ず知らずの学生に声をかけたりもした。そこでは最初の問いの答えとなるヒントを得た。

 トライリンガルも

 海外に出て最初にぶつかったのは言語の壁だ。基本的には、大学巡りのみならず私生活も英語で会話をするわけだが、英語圏ではない場所は通じないこともある。それでも多くの学生が親切にインタビューに受け答えしてくれた。

 言語については、さまざまな意見をもらった。ベトナムでは「せっかく異国にいくのに、なぜその国の言葉をしゃべれないで平気なの? 僕だったらかなり勉強してからいく」。イタリアでは「日本人は謙遜し過ぎだ。英語をちゃんとしゃべれるのに話せないと言う」。言語の習得に関しては、お国柄によって認識の違いを感じた。

 アメリカの学生と話をしたときのことだ。「日本語、しゃべれる」といわれて、実際に会話をしてみると、一向に「ありがとう」「こんにちは」しか言わない。これでしゃべれているという解釈なのである。日本人は最低限生きていくための英語は話せる。だが、シャイ(恥ずかしがり屋)だったり、苦手な英会話を避けたり、外国人とのコミュニケーションを避けたりしているようだ。

 また、英語圏以外の学生は、大半は母国語と英語は完璧で、それ以外にも他の言語を話せる人が多い。最低でも、2カ国語を話すバイリンガル。3カ国語を操るトライリンガルも珍しくはない。日本はどうだろうか。英会話を避けていては、いつまでたっても「グローバル化」という波にのみ込まれていくだけではないだろうか。(リポーター:獨協大学 有志学生記者 金田隼人、写真も/SANKEI EXPRESS)



 かねだ・はやと 1990年3月埼玉生まれ、私立新島学園卒、獨協大学在学中。高校まではサッカー部に所属し、毎日練習の日々。大学入学後は、フリーペーパー発行、ビジネスコンテスト開催、採用イベント主催、地方大学セミナー開催を通して全国的に活動。今春からは新社会人としてベンチャー企業入社予定。






■日本の「当たり前」は通用しない 大学生が世界で見た「勝てないワケ」(下)
http://www.sankeibiz.jp/business/news/120325/bsg1203251800001-n1.htm
2012.3.25 18:00  

 ~世界の若者と交流して分かったこと~

 旅で痛感したのは、教育から根付いた「当たり前」が日本とは全く異なることだ。

 イタリアでは、一般高校(5年制)で早くも専門科目を専攻する。エジプトでは、小学校が5年制のため、日本より1年以上早く21歳で大卒としてIBMで働いている学生がいた。イスラエルでは、軍役が男性3年、女性2年と義務づけられているので高校卒業後、軍に入りその後受験勉強をする。韓国の男性もこれと同様である。

 シンガポールでは、小学校の成績順で中学校のクラスが分けられ、その後の進路がほぼ決まってしまう。大学進学率は10%ほどで、さらに優秀な学生は政府の要請で海外へ留学するという。インドでは、生まれた瞬間にカースト制度で階級が決まり、大学に進学する人はほんの一握りである。

 一方の日本は、大学の進学率は世界と比較すると、かなり高い。しかし、海外を目指す留学生の数は年々、少なくなっている。欧米の大学を見ると、中国人やインド人が圧倒的に多く、韓国人もいる。それでも、日本人の留学生は増えない。

 制度に守られた学生

 海外の学生に一番驚かれたことは、私が企業から内定をもらいながら、休学せずに半年間世界一周の旅をしているということだった。海外の大学の多くでは、在学中に企業内定を持っていること、それ以前に就職活動をすること自体ありえない。

 ヨルダンでは、大学卒業後アラブ諸国でインターンをしてからでないと、国内で就職がほとんどできないらしい。そもそも卒業後すぐに就職というのも変な話である。新卒一括採用は日本独自の制度で、外国では基本的に就労体験を在学中、卒業後に積んで就職をする。日本と外国の企業では学生に求めるものが違うのだ。

 日本では、大卒には将来性を求める。

 一方、海外では、即戦力を求める。

 おそらく、いまの日本の学生は、この新卒一括採用制度に守られている。それでも、日本では新卒一括採用に反対するデモが起きている。この制度がなくなれば、さらに多くの日本の学生は路頭に迷うことになるだろう。

 「インパクト残す」

 大学訪問で面白かったのは、国によって夢の持ち方、夢に対する考えが違ったことだ。

 イスラエルでは、日本と対照的で「夢を持て」という教育はされない。夢は特別持つものではなく、日々を楽しむことを教えられるという。そのため、夢の調査をしたとき、学生たちに私がふざけているとの印象を持たれた。一方、英国の学生は他の多くの国の学生が、答えをためらったり考えたりするのとは対照的に全員即答した。常日頃、頭に入れて勉強をしているからだという。

 もっと広い枠で捉えると、アジア・南米は一言目に「社会貢献」という言葉が出ることが多かった。反対に欧米では「社会にインパクトを残す」という言葉が多かった。

 現地を理解しない

 「日本はビジネスの海外展開が下手くそだ」。至る所でこう言われた。なぜか。

 日本人は海外でサービスを展開する際、日本人が海外に出向き、海外で現地人を雇用し、日本の文化や仕事のやり方を教育し、やっと仕事をし始める。一方、アメリカや中国は、現地法人とパートナー契約を結び、現地人にやりやすい文化・環境で仕事をさせる。日本式は教育をしている分、約3年間遅れるわけである。


 海外にある日本食レストランを見ても同じだ。日本人の経営と中国人の経営では、一般的に後者の方が人気である。なぜならば、日本人は職人肌で素材や細部にまでこだわって納得いく料理を出しているが、中国人は安く早くをモットーに味もそこそこのものを出す。人件費も日本人の方が高く、ほとんど現地化はしていない。

 ここに日本のグローバル化の問題があるように感じる。いくら外国語をしゃべれるようになっても、教育制度の違いを克服しても、現地を理解しない海外進出は受け入れられない。グローバル化とは、このことをまずは念頭に入れないといけないだろう。

 恵まれた自分たち

 海外に出てみて、自分が日本人であることを再認識すると同時に、いかに自分が恵まれているかがわかった。自分というものさし、日本人のものさしは明らかに海外とは違い、ずれや差があった。しかし、それを海外に押し付けている日本も痛感した。それはグローバル化ではなくジャパニーズ化ではないか。それを理解しない限り日本は海外へ出ても受け入れられないだろう。


 ≪「夢」を語る世界の学生たち≫

 半年間に及ぶ世界一周の旅では、23カ国50の大学を訪ね、そこで出会った学生たちに思い思いの夢をホワイトボードに書いてもらった。

 「着物の着付けの仕事をしたい」「有機野菜の農家になりたい」…。そんな夢調査で一番印象に残ったのは、ヨルダン大学日本語学科を訪ねた際、イスラム教徒の女性が身につけるスカーフの一種、ニカブをまとった女子学生が「アフリカでの医療ボランティアの仕事がしたい」と日本語で書いてくれたことだ。

 彼らの内の何人かは、来日を真剣に検討している。どんなに困難な時代でも、夢を思い描き、時代を変えていくのは若者たちの特権ではないだろうか。(リポーター:獨協大学 有志学生記者 金田隼人、写真も/SANKEI EXPRESS)




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