2012年5月18日金曜日

■“高い壁”勝手が違う…中国EC市場で日本勢挫折


“高い壁”勝手が違う…中国EC市場で日本勢挫折
http://sankei.jp.msn.com/world/news/120518/chn12051809260000-n1.htm
2012.5.18 09:24

 日本の電子商取引(EC)大手が中国から相次いで撤退する。楽天は中国のインターネット検索大手「百度(バイドゥ)」との合弁で開設したネット上の仮想商店街のサービスを5月末で終了。ヤフーも中国のEC最大手「淘宝網(タオバオ)」と組んで展開してきたサービスを17日で終えた。乱立するEC事業者との競争に埋もれ、日本とは勝手が違う商習慣の壁も乗り越えられなかった。急成長している中国のEC市場では、需要獲得を狙う日本や世界の有力企業が苦戦しており、戦略の練り直しを余儀なくされている。

商習慣の違いネック

 「競争が厳しかった。ミスを犯したことも認め、撤退する」。楽天の三木谷浩史社長は10日の決算発表会見で、悔しさをにじませた。

 楽天の仮想商店街「楽酷天(らくてん)」は2010年10月に大々的にスタート。年間の流通総額が1兆円を突破した日本の「楽天市場」と同様に、出店者を募って手数料収入を得るビジネスモデルで参入した。

 ただ、中国では通販サイトが乱立して過当競争に陥っており、楽天は「収益面での抜本的な改善は見込めない」(担当者)として撤退を決断。既に楽酷天のサイトでは商品の陳列や売買を停止した。

 三木谷社長は「中国の(EC)バブルは想定以上に大きかった」と説明。模造品対策の難しさや、ラインアップした商品が受け入れられなかったという戦略ミスなどを失敗の理由に挙げた。

一方、ヤフーは日本の利用者が中国の商品を買える「ヤフー!チャイナモール」と、中国の消費者が日本の商品を買える「タオジャパン」のサービスを、10年6月の開設から約2年で終了。ヤフーによると、短文でやりとりするネット上のチャットで利用者と店舗側が値段を交渉するといった中国の商習慣が日本にはなかったことに加え、自動翻訳の精度が低いこともあって、利用が伸び悩んだという。

後発企業の反面教師

 中国のEC市場の拡大ぶりは目覚ましい。民間調査会社のアイリサーチジャパンによると、既に11年の実績で約7736億元(現在の為替レートで約9兆8300億円)にのぼる総取引額は、4年後の15年には3.3倍の2兆5510億元に拡大する見通し。

 ただ、シェアの大半はタオバオが握っており、残りの需要を数多くのEC事業者が奪い合う消耗戦が繰り広げられる中で、日本企業は埋没している。

 新興国の市場調査を手がけるストラテジック・デシジョン・イニシアティブの森辺一樹代表取締役兼CEO(最高経営責任者)は「中国人は安く買うためにECを利用するのであって、中国製品より価格が高い日本製品をすべての中国人が求めているわけではない。(中国のEC市場の特性を)はき違えている企業が多い」と分析する。

 とはいえ、日本製品に魅力がないということではない。森辺氏は「ブランド価値を前面に出せばうまくいく」と指摘。「2社の撤退で日本企業の間には『やはり中国でのEC事業は難しい』との受け止め方が広がるだろうが、『同じ轍(てつ)を踏まないように頑張ろう』という企業も出てくるはず」とみる。

                   ◇

戦略練り直し 再進出にも意欲

 中国のEC市場に挑戦する日本の有力企業も現れている。日本最大級のファッションECサイト「ゾゾタウン」を運営するスタートトゥデイは、11年10月に中国向けのECサイト「ゾゾタウンチャイナ」を立ち上げるとともに、タオバオのサイトにも出店して日本のブランド衣料の販売に乗り出した。

 ファッションに対する日中の消費者意識の違いを見極めている段階ながら、手応えもつかみ始めているという。「できることを手探りしながら地道にやっていく」(担当者)と、中国の消費者ニーズに対応しながら時間をかけて浸透を図る構えだ。

 日本のEC市場も拡大しているとはいえ、中国市場の成長の余地は桁違いに大きい。楽天はいったん撤退するものの「事業環境が整った段階で再進出したい」と意欲をみせ、ヤフーも「タオバオとの関係は続いており、機会があれば再進出したい」とリベンジを狙う。中国EC市場の争奪戦が今後、さらに激しさを増すのは間違いない。



0 件のコメント:

コメントを投稿