2012年6月5日火曜日

■中国富裕層の旺盛な消費に少し翳りか=大原平


中国富裕層の旺盛な消費に少し翳りか=大原平
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2012&d=0529&f=business_0529_044.shtml
2012/05/29(火) 09:55
       
 高騰していた物価指数は収まりつつある。しかし、中国の富裕層は今後どう消費行動をとってくるだろうか。

 中国駐在の英国公認会計士が創業した「故潤<フージワーフ>研究院」レポートによれば、俗に「お金持ち」層とは、1000万元(約1.3億円)超保有者が96万人(1億元= 約13億円相当保有者は6万人)と言われ、地域別には北京市、広東省、上海市の順で分布しているとのこと(2010年末現在)。

 保有資産は平均6300万元(約7億6600万円)で前年同期比では15%増(平均年齢41歳)だが、年間平均消費額は176万元(約2100万円)と前年比で9%減少しているとのこと(資産の3%以下に相当)。

 ところが2011年にバブルが勃発した茅台酒フィーバー。品不足から価格が高騰し、ニセモノが反乱した。幹部代表が宴席で茅台酒を施すとき、決まって自らが先ず賞味し、テーブル在席者全員に宣言する:「これはいける」ではなく、「これは大丈夫だ」の皆の前で発声をする。ワイン賞味時とは大きく異なる情景だ。

 中国の「国酒」と言われ、建国まもない1952年全国銘酒品評会では八大銘酒に選ばれた茅台酒。白酒の最高峰の代表的な存在であり、高粱を原料に麹を使って造る、世界三大蒸留酒の一つ(欧米ではウィスキー、ブランデーも蒸留酒)としても有名だ。アルコール度数が53度と高いため、初めての方には飲み慣れない口当たりだが、香りが高く、たとえ飲み過ぎても二日酔いしにくい高級酒でもある。

 300年以上の歴史をもつこの銘酒は、中国内陸部の貴州省が原産。四川省の南東に位置し、人口が約4200万人。一人あたりGDPも約2000ドルと全国平均を下回るが、少数民族が多いことと、アルミニウム(業界最大手企業チャルコの重要生産拠点)の他、石炭、ホーキサイト、リンなど幅広い資源が存在する。麹が育つ環境が整っていることもあり、古くから「貴州茅台酒」として全国的に名を馳せた。

 建国の父と言われた毛沢東がかつて貴州省解放時に勝利の酒として振る舞い、1972年の日中国交正常化時でも国賓をもてなす乾杯酒として使われた高級白酒。周恩来首相(当時)が風邪をひいても薬は飲まず、茅台酒を飲んで治した逸話はあまりに有名だ。

 中国のお金持ちは、本当に茅台酒が好きだ。いや、自分で飲むのが好きというより、最近は贈り物として好む傾向が強い。贈り物10大ブランドのうち、9つが欧米ブランドの中、茅台酒が唯一の中国ブランドとしてランクインしているとのこと。

 今年年初に発表されたレポートによれば、ルイ・ヴィトン、カルティエ、エルメスの上位3ブランドに次ぎ、茅台酒は5位に入り、6位のアップルやベンツなどよりも評価されたとのこと(前出レポート)。海外ブランド好きの国民性はよく知られているが、アルコール度数が高いお酒がここまで好まれているとは正直、驚かされた。

 元来、中国の人はお酒が好きな人種だということもよく知られている。ビールでは国別消費量が世界一であり(2003年から8年連続トップ)、4000年も前から醸造酒(穀物や果実を原料として発酵)が史物記録で確認されている。蒸留酒も比較的に歴史が浅いといっても、数百年前から飲まれてきているわけだ。

 中国が経済開放した78年以降は特に、政府役人や国営企業幹部など、俗にいう国内代表選手らは、当時、初めて海外投資家と接する際、宴席で乾杯、乾杯を繰り返し飲んだのがこの茅台酒だ。その時分から、事業が成功するように祈念する「お祝い」のお酒という意味から、日常生活で飲むお酒と分けて飲んできた。

 筆者も80年代はよく茅台酒を飲んだ。最初は飲みにくくても、二杯目からはピッチが乗り、足に羽が一本一本生えてくる感覚に浸った覚えが今でも鮮明だ。当時は一本あたり数10元(当時レートで300~800円)位だった値段が、最近は数百元、中には数千元から一万元まで価格がつり上げられ、なかなか下がってこない状況とのこと。

 50年代に政府により接収された現地酒蔵は後に統合され、99年に貴州茅台酒として株式会社化、2001年には上海証券取引所に上場を果たした。2010年の売上高は99年比で10倍強まで大きく成長し、昨年年初より9ヶ月間の売上高も前年比で46%増。15年までに10年比で更に4倍増の500億元超(約6600億円)を目指しているとのこと。株価も上場来10倍超上昇してきている流れだ。

 貴州茅台酒の株式は儲かりそうだ。ただ株式を保有するより、実物をしばらくの間寝かせて(?)保有した方が更に価値が出やすく、一攫千金狙いできるという考え方が横行している。元々生産量が少なく、また10本のうち9本がニセモノと言われていることもあり、希少価値性を助長していることも背景にあるようだ。

 顧客をもてなす「乾杯酒」の高級イメージがいつのまにか「贈答品」化し、それがまた資産価値を高騰させ、「コレクター」の間で人気を博している。まさに現代中国の一つの社会現象だと言えよう。

 お酒の価格上下の変動はあっても、それとは別に、国民の間での祝宴のための乾杯酒としての存在感は今後も発揮し続けていくだろう。



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