2012年7月4日水曜日

■韓国 70歳まで働き続ける高齢者のつらい現実


韓国 70歳まで働き続ける高齢者のつらい現実
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2012/07/04/2012070401072.html
2012/07/04 10:58 朝鮮日報

 京畿道・坪村で紙資源ごみを集めて売ることで生計を立てるキム・チョルスンさん(71・仮名)は最近、毎日の仕事がつらい。蒸し暑さの中で、足が震えるほど歩き回っても、1日に稼げるのは1万ウォン(約700円)程度。運が悪いと、リサイクル業者からお金をもらえないこともある。昨年から右のひざの状態が思わしくないというキムさんは「いつまで働けるか分からない」と不安がった。

 韓国にはキムさんのように、高齢でも仕事を辞められずにいる人が多い。経済協力開発機構(OECD)のまとめによると、韓国の実質退職年齢は、男性で70歳を超える。老後にもやりたい仕事をして、充実した人生を送るといった優雅な話ではない。70歳になって初めて、生計費を稼ぐための仕事から解放されるという意味だ。韓国はOECD加盟国のうち、メキシコに次いで2番目に実質退職年齢が高い。欧米では60代半ばが一般的だ。職場を早い時期に追い出された後、さらに10年以上働き続けなければならないというのが、韓国で家庭を支える一般的な男性の現実だ。

■引退が70歳を超える理由

 韓国では「サオジョン(四五定=45歳定年、沙悟浄の韓国語と同音)」「オリュクト(56歳まで職場にいれば給料泥棒、釜山の五六島と同音)」といった流行語が生まれるほど早期退職の圧力が強い。1990年代後半の通貨危機以降、10年以上続く現象だ。統計庁のデータによると、韓国人が「一生で最も長く勤めた職場を離れる年齢」は平均53歳(男性55歳)で、普通の感覚で考える引退年齢と大差ない。

 しかし、OECDが韓国人の実質退職年齢は70歳だというのはなぜか。結論から言えば、OECDがいう退職年齢とは、会社員や個人事業者が長期にわたり定職として勤める職場を意味するわけではない。どんな形であれ、金銭を受け取って働けば退職者ではない、というのがOECDの分析基準だ。

 先に登場したキムさんのように、1日働いても1万ウォンしか受け取れない人も、OECDの基準ではまだ引退していないことになる。企画財政部(省に相当)のキム・ボムソク人的資源政策課長は「職場を退職すれば、人々は自分が引退したと考えるが、実際は退職者の大半が起業したり、報酬が少ないほかの職場を探す。実際の引退とは、そうした職場も全て辞める時点と考えるべきだ」と述べた。

 では、長年の職場を退いても、人々は働き続けなければならないのはなぜか。老後への備えができておらず、働き続けなければ生計を立てられない高齢者が増えているためだ、というのが専門家の分析だ。OECDの昨年の所得不平等統計でも、韓国の65歳以上の人は、所得水準が全世帯平均所得の3分の2程度で、OECD加盟国で最も低かった。これは、韓国の高齢者が国民年金などの公的年金による恩恵を本格的には受けられずにいることを示している。

 韓国の高齢層は、年金所得が15%にすぎず、勤労所得の割合は58%に達する。一方、フランスでは高齢者世帯の所得に占める年金の割合は86%で、勤労所得は6%にすぎない。韓国の高齢層所得に占める勤労所得の割合は、OECD加盟国平均(21%)の2.7倍に達する。

■高齢者の貧困率、自殺率トップ

 ソウル・乙支路の集合住宅で借家住まいするイ・ボンナムさん(80・仮名)は、道路脇でトーストを販売し稼ぐ月30万ウォン(約2万1000円)と、区庁から支給される支援金20万ウォン(約1万4000円)で持ちこたえてきたが、8月からこれまで5万ウォン(約3500円)だった家賃の値上げを求められ、不安を抱いている。イさんは「まともに食事もできないのに、子どもがいるという理由で基礎生活保障(生活保護に相当)の対象に含まれない」と嘆いた。

 国民年金保険院の報告書によると、イさんのようにつらい立場に置かれた高齢者が増え、韓国人の高齢者の貧困率(所得が中間値に満たない人の比率)は45%(2000年代半ばの平均値)に達し、OECD加盟国で最も高い。韓国の高齢者10万人当たりの自殺者数は77人(09年)で、これもOECD加盟国で最高だ。

  専門家は高齢者が働ける質の良い雇用を創出し、あらかじめ老後に備えることができるセーフティーネットづくりが急がれると指摘する。LG経済研究院のシン・ミニョン経済研究部門長は「健康状態が悪くても、生計を立てるために高齢者が働かなければならないとすれば、社会の幸福度が低下する。若い世代が老後にしっかりと備えられるように制度を整え、高齢者にも相当額の収入が保障されるような質の良い雇用を創出べきだ」と述べた。

 韓国経済研究院(KDI)の高英先(コ・ヨンソン)研究本部長は「人口構造が高齢化すれば、高齢者も働かなければならないが、雇用の質が悪く、高齢者に貧困層が急増している現実が問題だ。年齢によって賃金が上昇する体系を変え、企業の高齢者雇用の負担を軽減するとともに、自営業者などの国民年金加入率を高め、老後に備えられるようにすべきだ」と指摘した。

キム・テグン記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版



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