2012年7月16日月曜日

■豪雨の爪痕観光地悲鳴 熊本


豪雨の爪痕観光地悲鳴 熊本
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/313031
2012/07/16付 西日本新聞朝刊

 記録的豪雨に見舞われた九州は15日、久しぶりに晴れ間が出て、被災地では復旧作業が本格化した。激しい雨から一転、各地で気温がグングン上がり、汗を流す被災者たちを苦しめた。最高気温が34・7度を記録した大分県日田市では、道路の清掃活動中に熱中症の疑いで救急搬送された93歳の女性も。豪雨が各地に残した爪痕は深く、生活再建は容易でない。梅雨の出口はまだ見えず、被災者たちは「雨も暑さも、もううんざり」と天を仰いだ。

 年間1700万人の観光客が訪れる熊本県・阿蘇。12日の記録的豪雨は外輪山や登山コース、宿泊施設を襲った。夏山シーズン目前に受けた傷痕は大きい。

 土砂崩れで7人が死亡した阿蘇市一の宮町坂梨にある「古閑(こが)の滝」。落差100メートルの滝は冬場に凍ることでも知られ、阿蘇の観光名所だが、滝つぼに向かう山道の約350メートルが崩壊した。外輪山の頂上付近から山肌が大きくえぐられ、展望台の手すりや階段も流された。市民の一人は「福岡市からも観光客が訪れる人気スポットだったのに…」と悔しがった。

 すっきり晴れた15日は、緑濃い外輪山に幾筋も土砂崩れの茶色い爪痕が目立った。牛馬の餌を運んだかつての生活道を新たな観光資源にしようと、生い茂ったやぶを切り開き、登山コースをつくってきた「阿蘇北外輪山トレッキング協議会」の阿南善範会長(60)も心配そうに見つめた。

 定期的に開く山歩きの参加者は年間800人。自然を散策し、地域の歴史を学ぶ新しい観光に関西の旅行業者も注目。だがコースの一部が崩壊。登山路の補強など対策を急ぐ。阿南さんは「阿蘇の魅力は大自然。秋に色づくモミジを植樹するなど新たな活動も展開したい」と復旧へ力を込めた。

 温泉街として有名な阿蘇市内牧は川の氾濫に伴う浸水で、大型ホテルなどが営業停止に追い込まれている。長靴に短パン姿で後片付けに大忙しだったのは阿蘇プラザホテル社長の稲吉淳一さん(43)。「1階のロビーや大広間、調理室がむちゃくちゃ。22年前の水害と違うのは泥土の量。大人の膝下まであったが、何とか片付いてきた」と汗をぬぐった。

 3連休で約460人が宿泊予定だったが、ふいに。「自然が相手だから仕方ない。阿蘇は自然と人間の共生の場。愚痴をこぼさず、これからも阿蘇と向き合っていくしかない」。28日の再開を目指す。




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