2012年7月19日木曜日

■【コラム】 会社の金に対する中国人の感覚と「発票(領収書)」の使い方


【コラム】 会社の金に対する中国人の感覚と「発票(領収書)」の使い方
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2012&d=0718&f=column_0718_090.shtml
2012/07/18(水) 16:39
       
タクシー運転手も

 山東省にある泰山に行った時の話です。泰山は世界遺産であり、封禅の儀式が行われる山として名高く、道教の聖地である五つの山(=五岳)の中でも最も有名な山です。中国人であれば死ぬまでには一度は登りたいと憧れる聖山です。日本人にとっての富士山のような存在かも知れません。

 このときは時間を節約すべく、北京からは列車では向かわず、最寄りの済南空港まで飛行機で向かいました。夕方の便で出発したものの、離陸が遅れ、済南空港への到着時には最終バスもなくなっていました。目の前にはお約束かと思う如く、白タク化しているタクシー運転手たちが待ち構えていました。すべては個々人との交渉により値段が決まる方式です。

 筆者は、旅行代理店の中国人従業員に電話を掛け、済南空港から泰山の最寄りのホテルまでの所要時間と大体のタクシー代を聞いていました。目安として聞いていた額よりもはるか多額の額を吹っかけてくるタクシー運転手相手の激しい交渉を行った結果、どうにも埒が明かなかったことからタクシーメータをきちんと倒してもらったうえで、その額を支払うこととしました。

 タクシーは一路、泰山に向けて走り始めました。高速道路にのり、しばらく走るとタクシーは右に曲がっていく道と真っ直ぐに行く道との間にある安全地帯に止まりました。どうしたのかと訝りながらしばらく止まっていると、後ろから来た別のタクシーが横に止まり窓が開きました。隣のタクシー運転手が発票の束を渡してきたのです。それまで運転手は電話連絡もしていませんでしたので、「どこから現れた?このタクシーは!?」といった気持ちでいっぱいになりました。

 タクシーは迷いに迷い、ようやく泰山近辺の予約をしてあったホテル前に到着しました。すると、このタクシー運転手は必死になってまくし立ててきたのです。

「金を多めにくれ!どうせ後で会社に請求できるのだろう?こちらも多めに発票を渡してあげるから」

 このタクシー運転手が言ってきた内容はこういうことです。たとえば、そのときのタクシー代が本当は1,000人民元だとします。それに対して、タクシー運転手は1,500人民元くれ、と言います。このタクシー運転手はこちらに2,000人民元分の発票を渡してきます。こちらは会社に2,000人民元分の発票を証拠に、会社に対して2,000人民元を請求します。そうすると、タクシー運転手とこちらにはそれぞれ懐に500人民元ずつが入ってくる、という仕組みです。もちろん即座に断りました。このときは休日を利用した個人旅行であり、そもそも会社に請求できる筋合いのものではありませんでしたが、それでもこういうことを言われたのです。中国では個人旅行まで、出張旅費として会社に請求していることが多々あることが垣間見えるような経験でした。


中国人の感覚と日本人の感覚

 上記の事例は中国の北方地域で多く経験しました。南方でも広東省東莞市など一部の都市では同様の働きかけをされることがあります(筆者の経験では、広東省東莞市は“よそ者”に対する警戒心が中国一強い土地柄です)。

 言わずもがなですが、筆者はすべての中国人がこういう不正をしている、と言っているわけではありません。中国では発票という独自の書類を利用した不正がある、という事例の紹介に過ぎません。そもそも、似通った事案は、コンプライアンス研修花盛りの日本企業内でも耳にするものです。そういった意味では、日本企業や日本人のみが誠実だというわけではありません。中国ほどではないにしても、五十歩百歩の部分があるのです。

 しかしながら、筆者に発票を利用した不正を持ちかけてきた中国人のうち多くの人には、罪の意識や後ろめたい気持ちがほとんど見受けられなかったことも事実です。

 筆者が断ったとき言われた忘れられない言葉があります。

「あなたは馬鹿だ!会社の金は引き出せるだけ引き出すのが当然の権利だ!」

(執筆者:奥北秀嗣 提供:中国ビジネスヘッドライン)



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