2012年8月1日水曜日

■LCC、空の安全は大丈夫? 「搭乗中に給油」広がる不安


LCC、空の安全は大丈夫? 「搭乗中に給油」広がる不安
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1207/31/news011.html
2012年07月31日 00時00分 UPDATE

格安航空会社(LCC)の参入で“日本の空”を取り巻く環境が変わりつつある。運航・安全面の規制の一部が見直されたが、関係者などからは「本当に大丈夫なのか」といった声が出ている。
[産経新聞]

 航空運賃や路線の規制を撤廃し、自由化する「オープンスカイ」や格安航空会社(LCC)の参入で“日本の空”を取り巻く環境が変わる中、運航・安全面の規制の一部が見直されたことが静かな波紋を呼んでいる。パイロットの資格審査や乗客搭乗中の給油など安全面で不安を抱える規制緩和があるためで、今後議論を呼びそうだ。

万が一、引火・炎上なら大惨事

 国土交通省は、昨年12月から今年6月まで4回にわたって「安全に関する技術規制のあり方検討会」を開催。学識経験者と航空業界関係者から意見を聴き、安全規制について話し合ったが、国内外の航空会社16社からは129項目に上る緩和または見直しの要望が続出した。このため、国交省は「即時対応」「平成23年度中に対応」「24年度中に対応」「不可」へ分類した。

 この中で、利用客の安心・安全やLCCの運用に影響が大きいとみられるのが、乗客が機内にいる間も給油を実施可能にする(オンボード給油)▽副操縦士に昇格するための資格試験で、実際の機体を使って受験していたものをシミュレーター(模擬飛行装置)で実施できるようにする――の2点だ。

 オンボード給油は、これまで原則禁止で、条件が整えば可能だったが、安全確保を最優先する観点から規則の表現が否定的で、実質的に道を閉ざしていた。発熱量が大きく燃えやすいジェット燃料に万が一引火した場合、機内に乗客が残っていれば大惨事につながるためだ。

 これに対し、今回の検討会では、着陸から折り返し便の離陸までの時間を可能な限り短縮したいLCCのニーズを反映。ルールを明確化してオンボード給油を可能にするよう要望が出された。

 これを受け、国交省は規則を一部改正し、乗客の避難をすぐ指示できるよう適切に要員を配置▽燃料補給を監督する者と機内の責任者との間で、適切な方法で相互の連絡(無線など)を確保――の2条件を満たせば可能と明記した。国交省によると、これらは国際民間航空機関(ICAO)の基準に準拠している。


ピーチ・アビエーションをはじめLCCの参入などを背景とする規制緩和で、運航・安全面の一部が見直されつつある=3月1日、関西国際空港

 関西空港を拠点に3月1日に就航した全日本空輸系のピーチ・アビエーションや、7月から成田空港や関空を中心に飛んでいる日本航空系のジェットスター・ジャパンは機材の有効活用のため、30分で折り返し運航するスケジュールを組んでいる。

 ピーチはオンボード給油を普段行っていないが、大幅な遅延が生じる場合は実施する方針。ただ、これまでに実施した例はないという。

 ジェット社は、社内規定でオンボード給油を不可としている。しかし、「スムーズなオペレーションが可能になる」(広報)と、オンボード給油が実施できるように社内規定を変更する方向で検討している。

 また、8月1日から成田発着で就航する全日空子会社のエアアジア・ジャパンも「オンボード給油はLCCのビジネスモデルを確立するために不可欠」(広報)として、実施する方向で国交省と調整中だ。

 一方、米国当局はオンボード給油に対してきわめて厳しい。連邦航空局(FAA)は実施の要件としてICAOの基準に加え、機体の近くに消防車を配備▽監視員を適切に配置▽乗客の避難のため、機体周辺に整備車両などを置かない-といった項目を設定。こうしたハードルの高い要件を設定することで実質禁止にしているとみられ、空港業務関係者は「中小型機で給油に要する時間は5分程度。この短い時間を短縮するために乗客をリスクにさらすのか」と反発する。

 また国交省は実際の飛行機を使って実地試験を行ってきた副操縦士への昇格試験について、シミュレーターによる実地試験を認める方向だ。実機を使わないことで、航空会社にとっては経費削減のメリットがある。

 シミュレーターの機能が向上しているほか、欧米で条件付きで認められていることが日本の規制緩和の背景にあるが、「運航で最も重要な着陸時の機体の特性や操縦桿の重さは、実機でないと再現できない」(航空関係者)との懸念は根強い。国交省は、訓練課程には実機飛行を含める規定は維持する方針だが、今後のLCC増便によるパイロットの需要増を控え、一抹の不安は残る。(南昇平)



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