2012年8月10日金曜日

■米国、W杯の雪辱なるか なでしこの組織力と技術力に再び挑む

米国、W杯の雪辱なるか なでしこの組織力と技術力に再び挑む
http://jp.wsj.com/Life-Style/node_492054?google_editors_picks=true
2012年 8月 9日  17:51 JST

 五輪サッカー女子米国代表にとって、9日の金メダルを賭けた戦いで勝ちたい理由はいくらでもある。

 米国サッカー連盟から150万ドル(約1億1760万円)、米国オリンピック委員会から選手1人当たり2万5000ドルが支給されるうえ、五輪後の遠征試合の収益金からも相当な取り分を得られる可能性がある。米サッカー団体関係者は、金メダルを獲得した場合、10試合程度を行う可能性があるとしている。

6日の準決勝で、カナダのFWシンクレア(右から2人目)にタックルされる米国のFWチェニー(中央)
 また、メダルを取れば新たな国内リーグ発足が促される可能性があるほか、労働契約更新をめぐる連盟との交渉で選手にとって有利に働く可能性もある。

 さらに決勝戦はパフォーマンスを披露するこの上ない機会となることが約束されている。ロンドンのウェンブリー競技場で8万人を超える観衆を前にプレーする姿がNBCで全米に放映されるのだ。

 このように理由は多々あるものの、試合を控えた米国代表ロッカールームの皆の思いは恐らく1つだろう。全選手の頭に唯一あるのは昨夏のワールドカップ(W杯)決勝での日本への惨敗であり、これがまたとないリベンジのチャンスだということだ。

 世界最強で最速かつ最も運動能力の高い米国代表が金メダルを手にするには、最も体の小さいチームの1つである日本代表を相手にしなければならない。そうした身体的特徴は不思議にも近年有利であることが証明されている。スペインのクラブチーム、バルセロナやそのほとんどのメンバーがそろった無敵のスペイン代表を見ればそれは明らかだ。トップレベルの国際大会で最も体の小さいチームでありながら、過去5年主要タイトルを独占している。

 佐々木則夫監督の指導の下、日本代表はポゼッション(ボール支配)を軸にしたスペインのパスサッカーをヒントにスタイルを確立している。そのスタイルでここ13カ月、自分たちよりも背が高く、運動能力の高いチームを打ち破っている。5フィート7インチ(約170センチ)を超える選手は1人もおらず、大半の選手が5フィート5インチ以下で、5フィート2インチ以下の選手も数人いる。

 日本代表、通称「なでしこ」は、高度な技術的・戦術的アプローチで、準々決勝ではパワフルなブラジルを、準決勝では才能豊かで運動能力の高いフランスを打ち負かした。

 91年に米国代表を初のW杯優勝に導いたアンソン・ドランス元代表監督は、「最もレベルの高い試合では地上戦が中心となるため、より素早く俊敏な体の小さい選手がおおむね有利になる」とし、「この試合では速さとすばしこさが重要になってくる」と話す。

 さらになでしこは並外れて組織化されている。試合開始の笛の音とともに「人間版サッカーゲーム台」と化し、相手に攻撃で数的優位を作らせることはめったにない。ブラジル戦では1対1の場面ではほぼ日本が負けていたにもかかわらず、なぜだか最終的に2対0で勝っている。

 そうした組織化されたスタイルは米国戦でも同じく有効であることが証明されている。5フィート10インチのFWアビー・ワンバックを筆頭に米国は身長では圧倒的に勝っているにもかかわらず、今年に入ってからの対日本の戦績は1勝1分1敗だ。

日本との決勝を前にロンドンでトレーニングする米国サッカー女子代表
 佐々木監督は、過去13カ月で4度米国と対戦したことで、08年以降FIFA(国際サッカー連盟)ランク1位を維持する米国と同じ土俵に上がっているという自信がチームについたと話す。われわれのチームは成長している、と佐々木監督は言う。もちろん背が伸びているという意味ではない。

 なでしこのGK福元美穂は、徒競走やレスリングでは米国に勝てないことは十分認識しているが、それは重要なことではないと指摘する。

 高さとスピードに関しては、ゴールを狙われたら追いつかないが、重要なのは相手を自由にさせないことだと福元は話す。

 米国の選手は、ボールを足元に引きつけておくなでしこの能力の高さに畏怖の念を込めて話す。まるでシューズが強力接着剤で覆われているかのようだと。「ボールコントロールと視野が非常に正確でクリエーティブだ」と、主将のクリスティー・ランポーネは感心する。

 米国は日本のプレースタイルを多少まねてはいるものの、大半はスピードを生かしてピッチ中盤で相手にプレッシャーをかけ、ペナルティーエリアにロングボールを放ってゴールを狙う作戦を取っている。そうすればワンバックとアレックス・モーガンが相手ディフェンスに競り勝ってヘッドでゴールをたたき込むか、そのフィジカルの強さでボールを奪い、ディフェンスを振り払ってシュートに持ち込める可能性があるからだ。

 「ポゼッションを維持しつつ、真っすぐにゴールを狙うという両方を少しずつ組み合わせたやり方だ」と、ピア・スンダーゲ監督は話す。

 日本のアプローチとはほとんど対照的だ。日本のアプローチは前回は奏功しており、今回もうまくいく可能性もある。99年W杯で米国の代表監督を務めたトニー・ディチコ氏は「勝機は米国にある」とし、「だが昨年もそうだったが実際は違った」と述べた。

記者: Matthew Futterman




■手痛い仏のPK失敗-なでしこ2-1で準決勝制し米と決戦へ
http://jp.wsj.com/Japan/node_490348
2012年 8月 7日  10:17 JST

 【ウェンブリー(英国)】6日のロンドン五輪女子サッカー準決勝勝利の瞬間、日本チームのメンバーたちがウェンブリー競技場のピッチ上で互いに抱き合って決勝進出を喜び合う中で、フランスチームのエリーズ・ブサグリアは「あの時成功していたら」とばかり、ぼうぜんとしていた。

 MFのブサグリアは後半、残り時間10分強の段階でPKチャンスを得た。PKに成功していれば2-2の同点になるはずだった。だが、彼女が蹴ったボールはゴール右のポストを外れ、日本が2-1でフランスに勝利した。

 2011年のドイツ・ワールドカップ(W杯)王者の日本チームは残り時間、フランスチームの怒濤の攻撃を懸命にかわして決勝進出を決めた。決勝の相手は米国で、9日にウェンブリー競技場で行われる。

 ブサグリアは試合終了後、「ひどい気持ちだ」と述べた。「恥ずかしい。体を開きすぎてボールが外に行ってしまった。決勝を逃してしまい、本当に落胆しているし、皆悲しみに暮れている」と語った。しかし「銅メダルを目指して気を取り直すしかない」とも語った。

 6日の準決勝勝利で、日本は少なくとも銀メダルが保証された。しかしフランスにとっては、この敗北は痛手だ。W杯でも準決勝まで進んだあと敗退しているからだ。

 試合開始直後はフランスが優勢だった。エロディ・トミやマリーロール・デリーといった有力選手がサイドを脅かしたからだ。

 しかし前半32分、日本の宮間あやのフリーキックに、フランスのゴールキーパー、サラ・ブアディが捕球をミスし、大儀見優季がこれを突いて足でゴールにねじ込み先制。日本チームのロンドン五輪得点王である大儀見は、リバウンドに即座に反応し、近距離からボールをゴールに押し込んだ。

 また後半開始わずか3分には、同じく宮間のフリーキックにミッドフィールダーの阪口夢穂がヘディングしてゴール右上に決め、日本が2-0とリードを広げた。

 その直後、フランスのブルーノ・ビニ監督がストライカーのユージニ・ルソメールを投入すると、フランスチームの動きががぜん良くなった。ルソメールは後半30分、クロスから1点を入れた。そのわずか1分後にはゴール前で転倒させられてPKを得た。だが、ブサグリアがキックを失敗してゴールを外した。

 フランスは残り10分間、波状攻撃をみせ、ルソメールが再びゴールに向けて蹴り込んだが、セーブされた。後半45分、今度は大儀見がハーフウェーラインからフランスのディフェンダーを突破し、シュートしたが、ゴールポストにはじかれて3点目にはならなかった。

 宮間は試合終了後、「彼ら(フランスチーム)は素晴らしいチームだったが、われわれは(是が非でも勝利をと)気力が充実していた」と述べた。4分間のアディショナルタイムでフランスのウェンディ・ルナールやルイーザ・ネシブがゴール寸前まで行ったが、いずれも日本のキーパー福元美穂に阻まれた。

 ビニ監督は「きょうは昨年のワールドカップ以上に失望的な試合だった」と述べた。同監督は「最後の20分間、われわれは非常に良くプレーし、日本以上に良かった。彼らは自陣に釘付けで、われわれのエリアにほとんど入れなかったほどだった」と述べた。

 日本の佐々木則夫監督は、メダル獲得の祝いにチームを和食レストランに連れて行くつもりだと述べた。しかし9日の決勝に集中するとも付け加えた。また、試合前に主将の宮間が 「Motivation Speech(選手のやる気を引き出すスピーチ)」でチームメートに語った言葉を称賛した。同監督によると、宮間は「わたしはこんなに素晴らしいチームメートとともに、この素晴らしいピッチに立てることを幸せに思う」と述べた。同監督は「わたしも(彼女の言葉に)涙が出た」と述べ、「きょうの違い、それはわれわれのメンタリティーにあった」と総括した。




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