2012年9月7日金曜日

■大阪・泉佐野市のペット課税論争


大阪・泉佐野市のペット課税論争
http://www.yomiuri.co.jp/job/biz/columnnational/20120906-OYT8T00703.htm?from=yoltop
(2012年9月7日  読売新聞)編集委員 近藤和行

 ペットへの課税を巡る論争が起きている。大阪府泉佐野市が、2年後に犬の飼い主に課税する構想を打ち出したことで、ネット上などで賛否両論が闘わされている。

 今回の犬税の趣旨は、同市内で犬のフンが放置されることが多いため、その清掃経費などに充てるという。犬税は、かつて日本でも1980年代前半まで市町村税として残っており、ドイツやオランダ、中国などでは今も存在するという。突拍子もない話ではない。

 予想通り、「飼い主が清掃費用を負担するのは当然」などとする賛成意見もあれば、「ライフスタイルへの課税は問題」「課税により逆に買い主のマナーが低下する」などの懸念や反対意見もあり、なかなか議論は一筋縄では行かないようだ。

 筆者自身はどちらかといえば導入に賛成なのだが、ここで言いたいことは犬税の是非ではない。

 泉佐野市は、市の財政難から市名の使用権を売りに出す「ネーミングライツ」に踏み出すなど、独自の地方自治のあり方を模索してきた。市長や議員報酬の大幅カットを打ち出し、騒ぎになったこともある。犬税構想も、税収が市財政を改善させるほどの金額ではないにせよ、地域の可能性を広げる新しい試みと捕らえれば、むしろ好ましく思った次第だ。

 政府の来年度予算は概算要求が締め切られ、国と地方との間で、地方の財源不足をどう埋めるかの攻防に入る。国による交付税の特例加算と、地方による臨時財政対策債の発行で不足分を折半する現行ルールはあるが、地方は「もっと国の支援を」というだろうし、国は「地方の歳出全体を見直すのが先」と主張するだろう。毎年繰り返される光景だ。

 疲弊する自治体がもっと財源を欲しがるのは理解できるが、一方で、自治体や首長による増収努力があまり見られないことには不満を感じている。総務省によると、課税自主権を使って超過課税をしている自治体は、例えば、市町村の個人住民税では均等割・所得割合わせて述べ5団体しかない。都道府県の住民税所得割では神奈川県のみだ。固定資産税の超過課税も10市町村に1つの164団体にとどまっている。

 それどころか、選挙での人気取りに、首長候補が「水道・下水道料金を下げる」と公約し、公営企業会計の積立金を取り崩すような事例もあると耳にする。

 泉佐野市の取り組みに関しては、市の名前の売却などに対して批判もあるだろう。ただ、増収努力もせずに、国に「もっとカネを寄こせ」と求めるだけの自治体と比べると、どこか前向きで、応援したい気分になるのだが、どうだろう。(了)



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