2012年10月25日木曜日

■「貧困のブラックホール」自営業720万人時代


「貧困のブラックホール」自営業720万人時代
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2012/10/24/2012102401440.html
2012/10/24 14:19 朝鮮日報

414万人は月収入100万ウォン未満
「ハイリスク・低収益の罠」
半数は3年以内に廃業…50代自営業者は30%に急増

 ソウル市内に住むキムさん(51)は3年前に会社を辞め、不動産仲介士の資格を取った。古い住宅の建て替えが進む再開発地域で不動産仲介業を始めたが、競争が激しい上に経験不足ということもあり、6カ月間で1件しか契約が取れなかった。

 不動産仲介業をあきらめたキムさんは料理教室に6カ月間通って調理師の資格を取得、昨年初めに若者の街、弘益大エリアでチャジャンミョン(韓国風ジャージャーめん)店をオープンさせた。若者層をターゲットに低価格で勝負しようとしたがうまくいかず、1年もたたないうちに廃業した。そして今年初めには、スーパーとは名ばかりの小さな雑貨店を買収、3度目の自営業に挑んだ。しかし、近所にコンビニエンスストアがオープンしたため、またまた苦戦を強いられている。キムさんは「子どもたちはまだ学校に通っているのでいろいろとお金がかかる。あらゆることをやってみたが、どれもうまくいかない」と言ってうなだれた。

 多くの人々が自営業を「ハイリスク・ハイリターン」のゲームだと思っている。リスクも大きいが、うまくいけば大成功するものと期待しているのだ。しかし実際のところ、韓国の自営業は「ハイリスク・ローリターン」のゲームだ。失敗の危険性が高く競争が激しいため、高収益を得る可能性がかなり低いということだ。

 本紙が民間経済研究機関「現代経済研究院」と共同で統計庁の資料などを基に自営業の実態を調査したところ、起業して3年続いた自営業者は46.4%にとどまった。中小企業庁の実態調査では、自営業者が昨年手にした純利益は月平均149万2000ウォン(約10万4000円)に過ぎなかった。職に就くことができず最低限の生活費を支援してもらう国民基礎生活受給者(日本の生活保護受給者に相当)=4人家族基準=とほぼ同じ額だ。また、自営業者の57.6%は1カ月の収入が100万ウォン(約7万円)以下だった。これを経済協力開発機構(OECD)の資料に基づき「2010年現在で、韓国では就業人口の28.8%を自営業者が占める」という割合で全自営業者数を算出すると、そのうち約414万人が月100万ウォンの収入も得られていないことになる。

■「貧困のブラックホール」になった自営業

 それでも最近、自営業者が急増している。ベビーブーム世代(1955-63年生まれ)で会社を退職する人が増え、起業せざるを得ない状況に追い込まれていることが主な原因だ。

 建設会社の役員を務め退職したチョンさん(56)は昨年、5億ウォン(約3500万円)を投じてソウル・江南地域のテヘラン路近くに70坪(約230平方メートル)の店を借り、大規模な輸入ビール専門ビアホールをオープンさせた。オフィスが密集している地域のためうまくいくと思っていたが、現実は違った。週休2日制の会社がほとんどのため金曜日の夜から日曜日までは開店休業状態で、平日でも日中は客が入らなかった。売り上げは伸びず、2000万ウォン(約140万円)の店舗賃借料と従業員8人の給料まで払うとなると、赤字は雪だるま式に膨れ上がった。結局、1年もたたないうちに投資額の半分も戻らないまま先日、店を閉めた。

 統計庁の経済活動人口調査に基づき推算したところ、2007年から11年までの間に20-40代の自営業者数は減ったが、50代は年平均2.5%ずつ増加していることが分かった。50代の自営業数は186万人から206万人に増えている。09年は起業した人の約4分の1がその1-2年前に会社を退職した人だった。

 だが、成功する確率は極めて低い。零細自営業者の廃業が多いため「もうかるのは看板屋ばかり」と言われるほどだ。事実、04年から09年までの統計庁資料を分析した結果、自営業者が多い飲食・宿泊業は年平均12万4000店が新規で事業を始める一方、12万7000店が廃業していることが分かった。

■借金して起業、借金の泥沼にはまる

 「起業さえしていなければ…」

 イさん(53)は07年に会社を退職してすぐに印刷会社を設立した。資金は退職金2億ウォン(約1400万円)をはたいた。コンピューター関連会社に勤めていた経歴を生かし、コンピューターグラフィックスでチラシ・名刺・カタログを製作・納品した。知人が協力してくれたおかげで起業当初は収入も良かったが、6カ月後に危機が訪れた。紙・インクなどの原材料費は値上がりする一方、印刷物の値段は逆に下がった。印刷会社同士で値引き合戦が起きたからだ。名刺100枚当たり3万ウォン(約2100円)だったのが、500枚で1万5000ウォン(約1050円)にまで下がった。イさんの会社は赤字が出始め、負債は雪だるま式に膨れ上がっていった。結局、自己破産したイさんは借金の一部が帳消しになったが、残りの借金は重機を運転する仕事をしながら返済している。イさんは「起業ではなく、再就職のための教育を受けるなどして別の仕事を探すべきだった」と後悔している。

 自営業者が経済的に苦しいのは、多額の借金をして起業することにも原因がある。統計庁によると、自営業者の昨年の平均個人負債額は8500万ウォン(約590万円)で、一般社員の5100万ウォン(約350万円)に比べ3400万ウォン(約240万円)多い。これは、開店時に必要な費用が平均6570万ウォン(約460万円)にも達するためだとみられる。



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