2012年10月26日金曜日

■中国、55%が貯蓄ゼロの極貧状態…反日の背後に「仇富と仇官」


中国、55%が貯蓄ゼロの極貧状態…反日の背後に「仇富と仇官」
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/other/601254/
2012/10/25 10:19【石平のChina Watch】

 今月13日に中国・成都市で開かれた経済関連の国際フォーラムで、西南財経大学経済学院の院長で、同大学所属「中国家庭金融調査と研究センター」の主任を務める甘梨教授は、自ら行った研究調査の結果として、「現在の中国では、上位の10%の家庭が民間貯蓄の75%を有している」との数字を披露した。

 この衝撃的な数字が各メディアによって大きく報じられ、中国の国民は改めて、この国の格差拡大の深刻な実態を認識した。実は上述の研究センターが今年5月に発表した『中国家庭金融調査報告』で55%の中国の家庭が貯蓄をほとんど持っていないことが分かっているから、格差が拡大している中で、半分以上の中国家庭は「貯金ゼロ」の極貧状態に陥っていることが分かった。

 このような現実からさまざまな問題が生じてきている。まず経済の面では、今後の成長の牽引(けんいん)力として期待されている「内需の拡大」が難しくなっている。「貯金ゼロ」55%の中国家庭に「内需拡大」を期待するのは最初から無理な相談だし、貯蓄の75%を持つ1割の裕福家庭の消費志向はむしろ海外へと向かっているからだ。

 たとえば「中国財富品質研究院」と称する研究機関が行った最近の調査によれば、中国国内の富裕層の67%は現在、海外での不動産購入を考えている、もしくは購入しているという。

 この一点をとってみても、「永遠不滅の中国経済成長」の神話はただの神話であることがよく分かるであろう。

 格差の拡大から生じてくる社会問題も深刻である。

 近年、中国ではやっている新造語の一つに「仇富」というのがある。日本語に直訳すれば「金持ちを仇敵にする」となるが、要するに経済成長から取り残されている貧困層の人々が富裕層を目の敵にして恨んでいるという意味合いである。

 とにかく「金持ちは恨むべきだ」というのが現在の中国に蔓延(まんえん)している普遍的な社会心理である。先月に起きた反日デモでは、日本車や日系企業の商業施設が暴徒たちの打ち壊しの対象となったが、その背後にはやはり、高価な日本車を乗り回し、上品な日系スーパーで買い物を楽しむ富裕層に対する貧乏人たちの恨みもあったのであろう。

 仇富と並んで「仇官」という流行語もある。「官僚=幹部を目の敵にする」という意味だ。共産党幹部の汚職・特権乱用があまりにもひどくなっているので、彼ら全体は今、中国人民の仇敵となっている。今月17日のMSN産経ニュースでも報じているように、中国共産党機関紙、人民日報系の雑誌「人民論壇」がこのほど実施した官僚腐敗に関する意識調査では、回答者の70%が「特権階級の腐敗は深刻」とし、87%が特権乱用に対して「恨み」の感情を抱いていると回答したという。

 このような調査結果に接して深刻な危機感を抱いたのは共産党の最高指導部であろう。そのままでは体制の崩壊はもはや時間の問題だ。現在の胡錦濤政権は10年前に誕生した当時から「協調社会建設」の目標を掲げて何とか格差の是正をやろうとしていたが、10年たった今、それが完全に失敗に終わっている。ならば来月に誕生する予定の習近平政権には果たして、「仇富・仇官」を解消するための妙案があるのかといえば、それがまた疑問だ。

 もし習近平政権が今後、「仇日」を煽(あお)り立てて国民の恨みの矛先を「外敵」へと向かわせるようなことがあれば、われわれ日本にとって、甚だ迷惑なことになる。

 【プロフィル】石平(せき・へい) 1962年中国四川省生まれ。北京大学哲学部卒。88年来日し、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。民間研究機関を経て、評論活動に入る。『謀略家たちの中国』など著書多数。平成19年、日本国籍を取得。




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