2012年10月3日水曜日

■シンガポール、再開発できらびやかに変身-カジノやF1も


シンガポール、再開発できらびやかに変身-カジノやF1も
http://jp.wsj.com/World/Europe/node_523473?mod=WSJFeatures
2012年 10月 3日  11:47 JST

  【シンガポール】裕福な中継貿易地であるシンガポールは長年、アジアで比較的おとなしくて退屈な都市の一つとして知られていた。住んで働くには良いところだが、香港、ロンドン、それにニューヨークといった派手な金融中心都市にはほど遠い感じだった。

 しかし、それが変わりつつある。シンガポール中心部のビジネス街では、数十年で最大規模の再開発が行われている。

 中心部の360ヘクタールにわたる造成地に見受けられるのは、娯楽施設とビジネス街を融合した数々の新しい巨大開発施設だ。娯楽施設とビジネス街の融合は、とりわけ歴史的に保守的な都市国家シンガポールには異例だ。

 このマリーナベイ地区には、カジノ運営大手の米ラスベガス・サンズが50億ドル(約3900億円)以上をかけて建設したカジノリゾートがあり、57階には全長150メートルの巨大プールがある。このほか、敷地内にはシンガポールのセントラルパークとなることを目指した熱帯植物園(建設費10億ドル)や、真新しいオフィスビル群があり、世界の名だたる企業を引き付けている。

 この野心的なプロジェクトが発表された際には、シンガポールが何十億ドルもの投資を引き付ける地区を開発できるのかと疑問視する人が多かった。例えばパリのラ・デファンス、ロンドンのカナリー・ワーフ、それに上海の浦東に匹敵するような地区だ。

 しかし造成工事の完了から20年もたたない今、マリーナベイは目標達成に順調に向かっている。地区で初めて開発された分譲マンションが発売から何週間かで完売されたし、完成したオフィスビルの70%以上は入居企業で埋まっている。またこの地区には他の主要都市をしのぐほどの有名レストランや高級ブティックが存在する。

 インターネット検索大手のグーグルは今年、マリーナベイ地区にあるビル「アジア・スクエア」に東南アジア本部を開設した。シティグループは8500万シンガポールドル(約54億円)を出資し、同じビルに新たにシンガポールオフィスと、アジア太平洋地域で最大となるトレーディングフロアを構えた。またロンドンを本拠とするスタンダード・チャータード銀行はこの地区に同行としては世界最大のオフィスを開いた。

 マリーナベイの成功の大半は、アジアが目覚ましい成長を遂げた時期に起こったのは確かだ。そのため、持続的な停滞による試練をまだ受けていない。シンガポール経済が他のアジア諸国とともにクールダウンしていることを背景に、この点が懸念材料になってきている。

 シンガポール貿易産業省は8月、2012年の経済成長率がわずか1.5~2.5%にとどまるとの見通しを示した。10年は14.5%だった。これがオフィスの賃貸市場を圧迫しており、マリーナベイ地区の111万平方メートルの開発予定地に問題を引き起こす恐れがある。

 それでも、インフラ整備に既に90億シンガポールドルをつぎ込んだシンガポール政府は、この地区に重点的に投資を続けている。同国の成長が鈍化しているにもかかわらず、政府はマリーナベイ地区に向こう10~15年で33億シンガポールドルを投資することを約束している。

 マリーナベイは、1970年代に政府の都市計画者が考案したプロジェクトで、面積に限りのあるシンガポールを香港やその他のハブ都市と競争し続けられるようにしたいとの願いがあった。そこで政府当局は広範囲に及ぶ土地の造成工事に着手し、南端に人工的な湾を作って、不動産開発業者に次世代の中心街を建設させた。

 この計画には批判的な声も上がった。派手な再開発で裕福な外国人が増え、物価が地元住民の手が届かないほどに上がるのではとの意見が出た。またお堅いイメージのシンガポールの中心部にカジノを建設することを疑問視する人が少なくなく、カジノが犯罪を呼び込むとの懸念もあった。

 しかし、シンガポールは2005年、カジノ建設を承認した。それはアジアの各地にカジノが開設されるという状況から自国の観光業を保護するという意味もあった。サンズのカジノリゾートは、自動車レースのF1といったマリーナベイで開かれる派手なイベントとともに、シンガポールに全く欠けているとされた魅力を高める効果をもたらしつつある。

記者: Shibani Mahtani




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