2012年11月23日金曜日

■NY五番街の驚くべき賃料 それでもユニクロが出店した理由


NY五番街の驚くべき賃料 それでもユニクロが出店した理由
http://jp.wsj.com/Business-Companies/node_552487?mod=WSJFeatures
2012年 11月 22日  15:22 JST WSJ

 ニューヨークの高級ショッピングエリア、五番街では、商業用不動産の価格や店舗の賃貸料が過去最高の水準に達しており、全般的な景気が停滞する中で、高級不動産市場が踏みとどまっている様子がうかがえる。

 五番街ではあちらこちらで、投資家が店舗の購入価格で記録を打ち立て続けており、価格は今や1平方フィート(0.09平方メートル)当たり1万5000ドル(124万円)を超えている。投資家がこれだけのカネを払うのは、ドルチェ・アンド・ガッバーナといった高級デザイナーブランドから、へネス・アンド・マウリッツ傘下のH&Mといった中間市場向け企業に至るさまざまな小売業者が、五番街の一等地である49丁目から59丁目の建物の1階を借りるのに、1平方フィート当たり最高で年間3000ドルを支払う意欲をみせているからだ。


五番街のアップルストア

 ここでは、ブラックフライデー(感謝祭の翌日の金曜日)から年末商戦が始まるのに合わせ、相次いで新店がオープンしている。先週にはファッションブランドのトミー・バハマやマッシモ・ドゥッティが、20日には化粧品のメイクアップ・アーツ・コスメティクス(MAC)が店舗を開設したほか、21日には女性向けファッションブランド、アリツィアも新店オープンの予定だ。53丁目にあるユニクロの店舗はブラックフライデーに合わせてダウンジャケットやカシミヤセーターの特売を実施する予定であるほか、百貨店のサックス・フィフス・アベニュー、高級ブランドのカルティエ、それに宝飾品のティファニーのショーウインドーは、ホリデーシーズンに合わせたディスプレーがなされている。

 企業がこういった店舗で利益を出すためには、かなりの量の衣料品や化粧品などを販売する必要がある。しかし、小売業者、不動産仲介業者、それに店舗のオーナーによると、多くの企業は利益を出しており、1平方フィート当たり年間1万5000ドルを売り上げているケースもあるという。ちなみに米国で最も利益を上げているショッピングモール、例えばラスベガスのカジノホテル、シーザーズ・パレスに隣接するフォーラム・ショップスは1平方フィート当たり年間最大で1400ドルを売り上げている。

 五番街の店舗がこれほど売れている事実からは、富裕層や観光客の支出が依然堅調であることがうかがえる。これは最近だとボルネード・リアルティ・トラストやリシュモン・グループといった商業用不動産やビルの購入に驚くほど高い金額を出そうとしている不動産投資家だけでなく小売業者にとっても朗報だ。

 同時に、五番街での堅調な売り上げは、世界中の多くの高級ショッピングエリアで起こっている変化が成功していることを浮き彫りにしている。最近まで、こういったエリアにある店舗の大半は高級品を販売していた。ティファニー、ニーマン・マーカス・グループ傘下のバーグドルフ・グッドマン、それにハリー・ウィンストン・ダイヤモンドといった企業だ。

 最近、H&Mやユニクロなど、中間価格帯のほか、低価格帯のファッション・チェーンまでもが五番街の超高級ブランド店の隣に店を構えている。ブーツに1000ドルを出せる富裕層もTシャツを20ドルで購入したいからだ。

 不動産仲介のプルデンシャル・ダグラス・エリマン・リアル・エステートのリテール部門のフェイス・ホープ・コンソロ会長は「純粋に高級品だけを購入する人は、もはや存在しない。デニムからダイヤモンドに至るまで、さまざまな場所を回って購入する」と話した。

 五番街の一部の店舗は非常に収益力が高い。プラザ・ホテルの向かいにあるアップルの店舗の年間売上高は4億ドルに達し、アップル帝国の中で最も収益力の高い店舗の一つとなっている。ファッションチェーンのアバクロンビー・アンド・フィッチの広報担当者によると、2005年に5番街720番地に開設した2万5000平方フィートの店舗が同社で最も収益力のある店舗であり、年間売り上げは約1億ドルに上るという。ここの年間賃料は1250万ドルだ。

 しかし、苦戦している店舗があるのも事実だ。ユニクロが昨年五番街666番地に開設した8万9000平方フィートの店舗はまだ利益が出ていないという。同社米国部門の小竹伸最高経営責任者(CEO)が明らかにした。黒字化するには年間1億ドル近くの売り上げを実現する必要があるため、客足と売り上げを改善する必要があるのは明らかだという。

 小売りのU.S.ポロ・アッスンは今後5年間、米国で年間30~50店を開く計画だが、五番街での計画はない。米国で同ブランドのライセンスを受けているジョーダッシュのクリフ・レロネク社長兼CEOは「提示される価格はとんでもなく高いが、現段階ではそれほどの価値があるように思えない」と話した。

 しかし、小売業者はブランドイメージが受ける恩恵は計り知れないほど大きい可能性があると指摘する。不動産仲介のロバート・K・ファターマンの部門長、ロバート・コーエン氏は「企業が五番街に出店するのに多くのカネを払おうとするのは、買い物客、家主、それに金融機関に気付いてもらうために、そこに店舗を出す必要があるからだ」と指摘した。

 ユニクロの例を挙げると、同社が五番街の店舗にかなりの資金を投じたのは、05年の失敗を繰り返したくなかったからだ。同社は05年にショッピングモールに出店して米国での拡大を狙ったが、小竹CEOによれば、「消費者がブランドを知らなかった」ために苦戦したのだという。

記者: Kris Hudson、Dana Mattioli




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