2013年1月24日木曜日

■【コラム】 中国の新幹線はなぜ利用しづらいのか? 鍵握る日本のノウハウ


【コラム】 中国の新幹線はなぜ利用しづらいのか? 鍵握る日本のノウハウ
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2013&d=0122&f=column_0122_019.shtml
2013/01/22(火) 10:26

中国の新幹線(高鉄)が利用しづらい理由

 経営資源というと「ヒト」・・・作業者 「モノ」・・・設備,機械 「カネ」・・・資本、運転資金 と言われ、昔から経営には欠かせない要素として知られていますが、今の時代は「ソフトな経営資源」も欠かせない要素になっていると思います。つまり、「ソフトな経営資源」を持った会社は、日本でも中国でも貴重であり、他社との差別化の武器になり得るということなのです。

 と言っても、一体何の事やら?と思われている方も多いと思います。そこで、身近な例として中国の「高鉄」(新幹線)を例にとって説明しましょう。

 世界一という歌い文句で華々しく登場した中国高速鉄道。確かに早くて乗り心地も良く、ダイヤも正確で申し分ないのですが、実際に利用した方は、日本の新幹線と比べて、どこか利用しづらいと感じている方も多いと思います。

 例えば、切符売り場はどうなっているかというと・・・

●上海駅の南口では駅舎から道路を挟んだ別の建物が切符売り場。地下通路を渡って切符を買いに行きます。雨が降ったり、大きな荷物を持っているとき、本当に困ります。

●上海虹橋駅は、飛行機を降りて長い通路を通り、やっと駅舎にたどり着いたと思うと、さらに広いフロアーの一番向こう奥側に 切符売り場があるので、切符を買うためには、またそこから歩かなければならない。

●切符売り場は長蛇の列、そこで20,30分費やしてしまう。しかも、外国人は自動販売機では切符は買えずパスポートを提示し窓口 で購入しなければならない。

 などなど・・・

 日本の感覚で新幹線を利用しようと思うと、とんでもないことになってしまいます。私の事務所は昆山にあり、上海から新幹線で20分程度で着きますが、切符を買って指定の列車に乗るまで早くて一時間掛ってしまいます。

 では、なぜこんな利用しづらいシステムになっているのでしょうか?

 それは、車両などの「ハード」は最新鋭ですばらしいのですが、それを運用するシステム、「ソフト」の部分が昔のままになっているからです。

 新幹線は、中国の鉄道利用のあり方を劇的に変えてしまいました。日本では、東京-大阪を日帰り出張も可能ですが、中国でも数百キロの距離ならビジネスやちょっとした所用で新幹線を利用しようと思う人が増えていると思います。ところが昔から中国では、国慶節や旧正月に帰省するために何時間も並んで切符を手に入れると言う光景がよく見られましたが、鉄道利用システムは、このような昔の感覚から抜け切れていないのでは無いでしょうか。

 話をまとめますと

●すばらしい車両や駅舎など優れた「ハード」があるのに、切符の販売場所・方法、さらには駅に通じるバス、タクシーなどの乗り継ぎ、列車時刻表の掲示など、「ソフト」の部分で顧客の利便性がほとんど考慮されていない。

●新幹線の出現で、鉄道の利用法が変わってきたのに、運用システムは昔のままで、利用者のニーズ変化に応えられていない。 

 となります。

「ソフトな経営資源」を蓄えた企業が勝ち組となる

 これをものづくり製造業に当てはめて見ると、どうなるでしょうか?例えば、親企業から与えられた図面をもとに、納期通りに、忠実に部品を製造する、というのは、部品という「ハード」を親会社へ納入すると言うことです。ところが、これだけでは親企業は満足せず、値段をどんどん下げて来ました。では、部品製造の会社は、親企業のニーズに応えるためには、これからどうすれば良いでしょうか?

 話は戻りますが、時速350KMの新幹線車両はいくら立派でも、それを取り巻く切符売り場や時刻表、バスやタクシー乗り場などの「ハード」の要素を一つ一つ関連づけて、顧客が利用しやすいように組み合わせるという「システム化」する作業が非常に大事なのです。

 「システム化」するには、切符売り場の配置や窓口の数、売り方などの様々な「ハード」の要素を、どう組み合わせるかなど「ソフト」設計の作業が必要で、日本の新幹線は、50年以上の歴史の中でそのノウハウを蓄積してきたのだと思います。

 車両は分解してコピー出来ますが、「ソフト」の部分はコピーしてもそのまま事情の異なる中国では使えないし、ノウハウの部分は見えないので、簡単にはまね出来ません。

 ここでは、二つの事柄が、ものづくり企業にとっても、今後の重要な方向性を示唆していると思われます。一つは、競争が最も激しい中国で、製造業が勝ち残る要素として、モノを売るだけではなくて、ソフトも含めて「システム」としてグローバルな顧客に提供することが重要ということ。

 もう一つは、企業内でソフトを含めたシステムをどのように構築するか?顧客満足をどのように実現するか?を考え、実現する経験や能力を持つヒトと組織が必要なこと。

 「システム」としての商品・サービスの提供と、それを創り出す機能を企業が保持していないと、ものづくりだけでは、競争に打ち勝つことは、もはや出来ないということです。システム化を推進するヒト、組織は一朝一夕では育ちません。ノウハウは何十年も掛かってやっと完成の域に達するのです。

 このことに気付いて、地道に「ソフトな経営資源」を蓄えている企業が勝ち組として残っていくのです。



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