2013年2月21日木曜日

■中国式繁栄の代価:5800万人の取り残された児童と疲弊した農村


中国式繁栄の代価:5800万人の取り残された児童と疲弊した農村
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2013&d=0221&f=column_0221_033.shtml
2013/02/21(木) 16:28

 中国のここ数十年の経済発展は主に膨大な数の農民工(出稼ぎ農民)に頼っている。しかし、その繁栄の背景には多くの農民工たちの子弟が農村に取り残されるという実態が浮き彫りになっている。

 報道によると、広西省尤其村のある小学校で、40人余りの生徒が、ぼろぼろの教科書を前に、厚厚の綿入れを着て暖房のない教室に座っているという。この辺鄙な小学校には270人余りの生徒がいて、多くの生徒は交通の不便な山間の僻地に生活していて、歩いてしか家に帰れない生徒もいるという。しかし、これが殆ど全ての生徒が学校に寄宿する唯一の原因ではない。多くの生徒の家に両親がおらず、親たちが都会へ出稼ぎに行っているからだ。

 このような留守児童は中国全国で5800万人に達っしており、彼らは親が側にいない環境で育つわけだ。厳格な戸籍制度により、これらの子供たちは異郷で無料入学する機会はない。そのため多くの農民工たちは子供を都会に連れて行くことができない。

 授業と授業の間の休憩時間に彼らは狭い庭で遊ぶ。彼らは学校を自分の家のように思っている。本当の家ではこのような感覚がないからだ。多くの生徒は勉強ができなくて困っている。彼ら同様家に取り残された爺ちゃん婆ちゃんはほとんど学校すら行ったことがなく、勉強の指導は到底出来ないからだ。

 子供たちが大切にされない、愛されない結果、多くの子供たちは出来るだけ早く学校を離れ、膨大な数の出稼ぎ軍団に加わり、工場へ働きに行こうとする。そのため、多くの留守児童は自分自身に自信がなく、人との交流や感情交流が欠けていると専門家は見ている。

 これらの留守児童の中には、一歳未満でその親が出稼ぎに行き、お爺ちゃんお婆ちゃんとの生活を余儀なく強いられ、自分の世話さえ出来ないまま寄宿学校に預けられるケースが多い。これらの爺ちゃん婆ちゃんはたちは「社会の背面」で生活していると言われる留守老人たちだ。

 2005年に中央政府が「新農村建設」を推し進め、2006年に農業税を廃止し、2008年に「都市化」が国の次の30年発展の国策とされた。これら上向きの経済データから見ると、「三農」問題は幾分好転し始めたようで、マスコミの話題にもならなくなっている。しかし、農村社会で個々人の境遇、焦り、彷徨いや頼るところの無さなどが依然深刻である。多くの農民工たちが都会の隅のほうで命懸けで働いているにもかかわらず、遥かなるその故郷の田舎では、子供たちが教育も受けられず、老人が頼るところもないのである。

 最も気掛かりなのはやはりこの5800万人の留守児童である。2009年の統計によると、14歳以下の留守児童は4000万人以上に達し、その内、57.2%の留守児童の片親が出稼ぎしており、42.8%の留守児童の両親が出稼ぎしている。留守児童の79.7%が父方か母方のお爺ちゃん、お婆ちゃんに育てられ、13%が親戚や友人に預けられ、7.3%が不確定か保護者がいない状態だ。

 1940年代に、著名な人類学者費孝通氏が有名な『郷土中国』を書き、その中で「中国社会の基層部は郷土的」であり、この「郷土性」が農村での人と土地の密接な関係や村落社会の低流動性と地方性、知人社会の信頼関係や共同倫理などを表していると指摘する。長い間氏のこの論述が中国の国情を理解するためのヒントとされた。

 しかし、100年も経たないうち、この郷土中国が土地革命、社会主義改造、人民公社運動、家庭請負制改革、市場化転換の衝撃を経験し、その上ここ20年来の工業化、都市化の潮流によって、「郷土性」が既にぼろぼろに打ち砕かれているのが実情だ。今では農村でも、「郷土構造が存続する」だけで、人と土地との関係は疎くなり、村落社会は高い流動性を持ち、知人社会が都会へ蔓延し再構築され、礼治秩序から行政秩序に変わり、これらは費孝通時代と丸っきり違うと、中国人民大学社会学教授の陸益龍氏は指摘する。

 今日の中国は既に深刻にアンバランスの郷土中国と都市中国の二つの部分に分断されている。日常生活で、誰一人農村と都会の間を行き来する人もはっきりとこの断層を意識できるはずだ。

 都市と農村の二元化戸籍制度がこの断層を合法化している。資源分配の不均衡がこのアンバランスを深刻さ化している。国家最高権力機関において、都市部では人口5万人に1人の人民代表の資格があるが、農村では20万人に1人しかない。

 2億人の農民工たちと彼らの家庭が、制度的な原因で都市に溶け込むことが出来ず、また、自らの自由選択で都会に出てきたから田舎にも戻れず、このような大規模で(5000万人)、長期的な(数十年)家庭解体がいつまで続くのか知る由もない。また、どんな結果をもたらすかも想像できない。



0 件のコメント:

コメントを投稿