2013年3月24日日曜日

■音楽売り上げが13年ぶり増―ミュージシャンはファンに「直送」


音楽売り上げが13年ぶり増―ミュージシャンはファンに「直送」
http://jp.wsj.com/article/japan-us-watch.html
2013年 3月 21日 12:57 JST 津山恵子のアメリカ最新事情

 2012年の世界の音楽の売上高(推計)は、前年比0.3%増の165億ドルと、1999年から実に13年ぶりにプラスに転じた。スマートフォンの普及により、音楽のダウンロードや、定額制の音楽ストリーミングサービスの利用が増えて、デジタル音楽の売り上げが前年比9%増となったのが、13年ぶりの増加につながった(国際レコード産業協会連盟=IFPI調べ)。


 IFPIのフランシス・ムーア理事長は、「レコード業界がこんないいニュースで活気があった年はあまりに前で、覚えていないほどだ。業界にとって、このニュースは、新しい技術を取り入れ、戦いを受けて立ち、10年以上に渡って自らを変化させて、やっと得た成果だ」とコメントした。

 同連盟が示した数字は、デジタル音楽の市場が近年いかに「主役」になってきたかを物語る。

 デジタル音楽の売上高は、12年に56億ドルで、業界全体の34%を占める。ダウンロードはこのうち7割を占め、前年比12%増となった。

 また、Spotifyなど定額制のストリーミングサービスの存在も、無視できない存在になった。売り上げの伸びは44%となり、デジタル音楽売上高の1割を占めるという急成長だ。

 これらの成長を支えるのが、スマートフォンやタブレット端末、そして「iPod」などのモバイル端末であるのは間違いない。つまり、ハードの革新が、デジタル音楽市場の成長を助けている。

 このトレンドは、ミュージシャンにとって「エキサイティングで、従来よりも利益を得られるようになるチャンスだ」と語るのは、業界のトレードショー「カナディアン・ミュージック・ウィーク」の理事長を務めるニール・ディクソン氏だ。

 同氏によると、以前はレコード会社が、曲の発表のタイミングや流通、コンサートの回数、ファンクラブなどをすべてコントロールし、いくらレコードやCD、コンサートのチケットが売れても、ミュージシャンは「ファンが一体誰なのか」把握することができなかった。

 しかし、現在は、ダウンロードの仕組みでファンに直接音楽を販売することができ、ソーシャルメディアでファンと直接コミュニケーションを取ることができる。ビデオをアップすることで、コンサート以外にはなかった「露出」の機会も増える。

 一方、フェイスブック、YouTubeなどソーシャルメディアで最も検索されているのは、音楽であり、ファンにとっても、音楽とミュージシャンの情報を得るのが簡単になった。

 「その結果、7社あったメジャーレーベルが現在は3社になり、タワーレコードなどレコード店が倒産し、多くの人が失業した。しかし、ミュージシャンは以前よりもパワーを持つようになり、自由にコンサートを開いたり、曲を発表できるようになった。それが本来あるべき姿だ」とディクソン氏は指摘。

 「今後、業界全体の売り上げが上向いていけば、以前、レコード会社やレコード店など中間業者が得ていた利益が、ミュージシャンに配分されるようになる」と同氏は予言する。

 前出のIFPIのムーア氏もこう語る。

 「音楽業界は、インターネットを中心とする世界への適応を果たし、消費者の必要にどう応えるか学び、そしてデジタルマーケットから収益を得るにいたった」

 レコード業界はCDの売り上げが減少し続ける中、10年以上も縮小を続けてきたが、逆に音楽業界としては、消費者とより近くなる発展を遂げてきたという分析だ。

 では今後、音楽の売上高はいつ、1999年のピークに戻るのだろうか。

 「底を打つのに13年かかった。その分を回復するのは10年かかるのではないだろうか。音楽がほぼすべてデジタルに置き換わるには、それぐらいかかる。現在はその意味で過渡期だ」とディクソン氏は予想している。



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