2013年3月24日日曜日

■現金が命のキプロス市民


現金が命のキプロス市民
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2013年 3月 22日 17:57 JST
By JAMES ANGELOS

 【ニコシア(キプロス)】アンドリアス・イアーニさんは、キプロスの首都ニコシア中心部で来客の多いガソリンスタンドを経営する。そして、給油を待って列を作る客に対し、切実なお願いをしている。現金でお願いします、と。

 イアーニさんは20日、商売を続けるためにガソリンの供給確保に、代金の約3分の1に相当する2万2000ユーロ(約210万円)を現金で前払いしなければならなかった。イアーニさんは今、在庫を補充するために十分な現金を調達する必要がある。

 キプロスでは21日、銀行閉鎖6日目となり、同国の経済は現金ベースの急激なダイエットの真っただ中にある。国民の購買力は、現金自動預払機(ATM)からの毎日の引き出しが認められている限度額以下に抑えられている。

 同国の政治家が欧州連合(EU)との新たな救済策交渉に努めるなかで、同国のよろめく金融システムの将来をめぐって不透明感が強まっている。商店はおおかた小切手での買い物を拒否し始め、窮境にある銀行口座とつながっているデビットカードやクレジットカードでの決済に対する不安がますます高まっている。

 イアーニさんは「明日はいったい何が起こるのだろうか」と問いかけ、「欧州が私たちを助けないといけない」と話した。

 欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)は、100億ユーロの支援の条件としてキプロスに銀行預金への課税を求めていたが、同国議会は19日、預金課税の法案を否決した。欧州中央銀行(ECB)は25日までに新たな合意に達しなければ支援を打ち切ると迫っている。

 一方、キプロスの一般国民は必需品以外は購入を避け、できるだけ可能な限りの現金をATMから引き下すために、ATM前に列を作って待っている。

 化粧品輸入会社の経営者、ギオルゴス・キリアキデスさんは21日朝、キプロスのライキ銀行のATMに並びながら、「明日になったら何も引き出せないかもしれないのでここにいる」と話した。

 商店や小規模企業の大部分は引き続き営業を続けているが、取引がすべて現金にシフトするなかで、経営者が業務のやり方を調整しつつあり、経営者の多くは新規の仕入れについては縮小せざるを得ないと話している。

 家族経営のスーパーマーケットを営むキリアコス・パパイアニスさんは、現金をなるべく使わないように一部商品については少なめに仕入れているという。パパイアニスさんは21日、通常仕入れるよりもずっと少ない赤ちゃん用の粉ミルクの仕入れに400ユーロの現金を払った。

 ある年配の女性がパパイアニスさんの事務所に来た。ライキ銀行の170ユーロ分の小切手で食品を買い、残りは現金でもらえるかと尋ねると、パパイアニスさんは即座に、「あり得ない」と答えた。この女性は何も買わずに出て行った。

 また、レストランと売店を経営するサキス・シアコポウロスさんは、支払いのために物々交換を行っている。シアコポウロスさんは、ギリシャの肉の供給元が銀行振替での支払いの代わりにキプロス産ハルミチーズを送ることで合意してくれたと話す。

 シアコポウロスさんは「もし私があなたに小切手を渡しても、私が明日も生き続け、破産していないかどうかは誰も分からない」と話した。同氏はその後、急いで売店に戻り、たばこの卸業者に550ユーロをもちろん現金で支払った。

 商店がクレジットカードやデビットカードの受付を停止するのではないかとの懸念が広がるなかで、国民の多くが21日夜、できるだけ多くの現金を引き出そうとATMに駆け付けた。

 土木技師で2人の幼い子供の父親であるペトロス・プロコピオウさん(34)は、ライキ銀のATMから500ユーロを引き出した。翌朝には商店でカードが使えないのではないかと懸念していると語った。

 プロコピオウさんはこれまで日常生活にそれほど変化なく何とかやってこられたが、将来に対する不安は日に日に高まっていると話す。

 「明日は問題が生じるかもしれない」と言い、「どこでもカードが使えなければ、現金が必要だ」と語った。



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