2013年3月5日火曜日

■進化するアプリの経済学


進化するアプリの経済学
http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887323994204578339311147474262.html?mod=WSJ_article_MoreIn_%25u30C6%25u30AF%25u30CE%25u30ED%25u30B8%25u30FC
2013年 3月 04日 14:24 JST
By GREG BENSINGER

 楽曲検索アプリケーションのサウンドハウンドは、マイクロソフトのウィンドウズフォン向けアプリストアでは特価、つまり無料で提供されている。

 しかし、同アプリのアップル・iPhone(アイフォーン)版の価格は6.99ドル、グーグル・アンドロイド版は5.99ドルだ。また、ノキアのアプリストアでは4.99ドルで販売されている。

価格を同一にしていないのは、サウンドハウンドだけではない。子ども向けゲームアプリからフィットネス情報記録アプリに至るまで、さまざまなアプリの開発者は、携帯端末から得られる貴重なデータを用いて、さまざまな価格設定やビジネスモデルを試すようになっている。

 アプリ開発者はいくつかの結論を導き出しつつある。まず1つは、無料アプリが王座にとどまるが、総じてアイフォーンとアイパッドのユーザーはアプリをダウンロードし、広告を非表示にするために料金を支払うことについてアンドロイド端末のユーザーよりも寛容であるということだ。一方、アマゾンのアプリストアで提供されるアプリのユーザーは、アプリ内で購入する傾向が強いという。

 しかし、全体的に見ると、人々がスマートフォンの乗り換えを行い、メーカーがより高機能な端末を発売するなか、アプリビジネスの経済学は依然として流動的だ。

 サウンドハウンドのケイティ・マクマホン副社長は「まだ何も固まっていない。これは進化中のビジネスだ」と話した。同社のアプリは約1億3000万回ダウンロードされている。

調査会社ディスティモによると、2012年末の時点で、アップルのアプリストアの有料アプリの平均価格は、アイフォーンで3.18ドル、アイパッドで 4.44ドルだった。ちなみにグーグルのアプリストア、グーグルプレイの平均価格は3.06ドル、アマゾンのアプリストアは2.84ドルだった。アプリストアは一般的に売り上げの30%を受け取る。

 アップルの広報担当者は「われわれは開発者に最上のエコシステムを提供するための投資を続け、開発者が世界で最も革新的なアプリを生み出せるようにする」と述べた。グーグルの広報担当者はコメントを拒否した。

 価格を統一しないトレンドは、じきにアプリ内購入の分野にも広がるかもしれない。例えば、アマゾンは開発者が顧客の行動を理解するためにアプリ内で違った課金手法を試すことを容認している。アマゾンのアプリストアの責任者、アーロン・ルベンソン氏が明らかにした。つまり、あるアプリユーザーは別のユーザーと違う段階でアプリの更新やバーチャルグッズの購入を促される可能性がある。これは顧客が最も料金を支払ってくれそうな時期や、顧客にどれほど料金を支払う気持ちがあるかを開発者が判断する一助になる。

 開発者は現在、グーグルプレイとアップルのアップストア向けを中心に取り組んでいる。調査会社のコムスコアによると、この2つで米国のスマホユーザーの約87%をカバーするからだ。アップルはアップストアに80万本のアプリを擁しているとうたっている。一方のグーグルプレイは70万本、ウィンドウズフォンは12万5000本、アマゾンは7万本を有している。

 これらのアプリの大半は無料だ。市場調査会社のガートナーは、アップルのストアのアプリの約半数、グーグルプレイの約4分の3が無料だと推測する。

 多くの開発者は、それぞれのアプリストアによって購入者の価格への敏感さが違うことが判明したとし、これが特定のストアごとにどう値段をつけるかに影響していると指摘する。開発者によると、アンドロイド端末の所有者は一般的に、アプリに料金を支払う可能性がiOS端末の所有者より低い。アプリ内購入のみならず、ダウンロードに関しても同様だ。この理由の1つは、アンドロイドのスマホやタブレットは低価格でも入手できるため、アイフォーンやアイパッドと比較すると、より低所得の人々を引き付ける傾向にあることだ。

 戦略ゲーム「Plague Inc.」を提供するNdemic Creationsのジェームズ・ボーン最高経営責任者(CEO)は昨年10月のアンドロイド版のリリースの際、価格をアイフォーン版と同じ0.99ドルにすることを検討していた。しかし、「グーグルプレイのユーザーは前もってアプリに料金を支払う可能性が低い」ことを理由に、無料で提供することを選択したという。

 ボーン氏は、無料アプリの利点がユーザーによるダウンロードが増えることにあると言い、こういったユーザーが後になってアプリの更新に料金を支払うかもしれないと説明した。約500万人のアンドロイドユーザーがこれまでにこのアプリをダウンロードしているが、これはおおよそ同氏の予測通りだという。同氏はこのうちどの程度が有料版に切り替えたかについては、「非常に高い確率」と述べるにとどめた。

 その一方で、ボーン氏は昨年5月以降、同アプリのアイフォーン版を0.99ドルで提供し続けている。アップルのユーザーは最初にアプリの料金を支払う傾向が強いことを受けた措置だ。同氏によると、同アプリのアップル端末版は400万回ダウンロードされている。同氏はNdemic社の総売上高についても「百万ドル単位の高位」と述べるにとどめた。

 アプリの価格を統一しないことはリスクにもなり得る。フォレスター・リサーチのアナリスト、セーラ・ロットマンエプス氏は、開発者が価格の面で多くの選択肢を提供しすぎることで、顧客を混乱させたり、怒らせたりする可能性があると指摘する。とりわけ、人々が複数の携帯端末に手を伸ばし始めているからだ。同氏は「できるだけ透明性を高める必要がある」と述べる。

 しかし、開発者たちは、彼らがユーザーの支出傾向を知るにつれ、価格の選択肢が今以上に増える可能性が高いと述べる。彼らは将来的には、顧客がどの端末を持っているかによって、アプリや広告のほか、楽曲やバーチャルグッズといったアプリ内購入にさえ、違った値付けができる可能性があるとみている。しかし、彼らはこれが技術的に困難であるのと同時に、間違った端末を買ったために罰を受けているのかと顧客が感じ、怒り出しかねないリスクもあると考えているという。




0 件のコメント:

コメントを投稿