2013年4月8日月曜日

■【コラム】もはや「笑えない」金正恩


【コラム】もはや「笑えない」金正恩
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2013/04/06 11:53 ワシントンイム・ミンヒョク特派員

 「米国はキューバのカストロや北朝鮮の『キム・ジョン3世』のような独裁者たちと妥協してはならない」

 昨年初め、米共和党の大統領選候補者フロリダ州予備選挙を取材したとき、ある候補の演説で飛び出した言葉だ。「キム・ジョン3世?」。文脈上、北朝鮮の新指導者として登場したばかりの金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党第1書記のことを指しているのは確かだが、なぜこのような表現を使ったのかは分からなかった。

 謎が解けたのはだいぶ後になってからのことだ。その候補者は「金正日(キム・ジョンイル)」総書記のアルファベット表記「Kim Jong Il」のうち「Il(Iの大文字+Lの小文字)」をローマ数字の「2(II)」と間違えて読んだのだ。金正日を「キム・ジョン2世」だと思い「その息子が3代目を世襲したのだから『キム・ジョン3世』」という名前が頭に浮かんだというもの。この候補が時事に疎いのを笑うこともできるが、北朝鮮に対する当時の米国の関心はそれほど低かった。ひとたびワシントンを離れると、北朝鮮の新指導者の名前をきちんと知っている人はそれほど多くない。

 その後も米国メディアにときどき登場する金正恩第1書記の姿は「脅威となる存在」というよりも、戯画化されたキャラクターに近いものだった。祖父の外見に倣おうと努力し、反米を叫びながらもミッキーマウスを公演に登場させる遠い国の若い独裁者は、米国国民の目には「笑えるとんでもない若造」と認識された。北朝鮮が昨年4月に長距離ミサイルを発射すると、ワシントン・ポスト紙はおむつをはいた金正恩第1書記が揺りかごで核兵器の形をしたおもちゃを手に遊ぶ風刺画を掲載した。人気の政治風刺番組「ザ・デイリー・ショー」には、金正恩第1書記に扮(ふん)した俳優がつたない英語でジョークを言う姿が何度も登場した。

 しかし、現在の米国は雰囲気が全く違う。毎日のように主要ニュースに金正恩第1書記の名前が登場、それなりに時事問題に興味がある人ならその名前を間違えることはない。さらに「金正恩の脅威」に関する報道からは「笑い」が消えた。「北朝鮮は実際に米国を攻撃できるのか」を特集したCNNの番組は「今や金正恩についてクスクス笑っている場合ではない」という言葉で始まった。チャック・ヘーゲル米国防長官の先週の記者会見も、テーマは「予算削減」だったが、報道陣の最初の質問は「金正恩は6カ月あるいは1年前に比べ、今では米国にとってはるかに危険な存在になったのでは?」だった。

 ワシントンのシンクタンク関係者は「米国が緊張しているのは、北朝鮮の核・ミサイル能力が向上、それに金正恩のとんでもない面が加われば、どのような行動につながるか予測できないから」と話す。論理的で正常な思考では到底想像も付かない挑発も「金正恩ならやりかねない」という漠然とした懸念が広がっているという。ある外交消息筋は「金正恩はエリック・シュミット(グーグル会長)には会わないが、デニス・ロッドマン(プロバスケットボール界の往年のスター)にはごちそうでもてなす人物だ。こうした彼の行動をどのような論理で説明するというのか」と語った。このため「ある程度は予測可能だった金正日が懐かしい」という本気とも冗談ともつかない声もある。

 どちらに弾んでいくか分からないボールをキャッチしなければいけないとしたら、どうすべきか。ひとまず「弾んでいく可能性がある、あらゆる方向にキャッチャーを置く」という方法しか思いつかない。今こそ韓米両国の「あらゆる可能性に備える」という言葉が外交上の決まり文句ではなく、実際の政策として必要とされる時期だ。



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