2013年5月14日火曜日

■【オピニオン】新卒者のみなさん、私は君たちを採用しないだろう


【オピニオン】新卒者のみなさん、私は君たちを採用しないだろう
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2013年 5月 12日 13:24 JST  By KIRK MCDONALD


 大学を卒業するみなさんへ

 大学卒業という大きな節目を迎えるみなさんにとって、来月はわくわくする月になるだろう。今は華やかで厳かな卒業式や祝いの言葉、そして卒業パーティーを楽しんでほしい。しかし、すべてが終わって、君たちが社会に出る準備ができたとき、君たちはおそらく、私のような人間に会いたいと思うだろう。私はみなさんにとって、憧れの上司かもしれない。私はデジタル分野で成長著しい、素晴らしい企業を経営している。仕事は面白いし、やり甲斐がある。 しかし、残念なニュースをお知らせしなければならない。それは私がおそらく君たちを採用しないだろう、ということだ。

 我が社に空いているポストがないから、というわけではない。それどころか、私は才能のある新しい社員を常に探している。適切な技能を身につけた人が私のオフィスにやってきたら、魅力的なオファーを手にオフィスから出てくることになるだろう。問題は、適切な技能を持った人材を見つけることが非常に難しいということだ。こんなことを言って申し訳ないのだが、大学を卒業する君たちはおそらくそのような技能を持っていない。

 君たちのせいにばかりはできない。米国では大学レベルのコンピューター・サイエンスの授業を行う高校より高校のフットボールチームの数のほうが8倍も多い。米国で育ち、学校に通った君はそういうシステムの中で教育を受けたのだ。大学でも事情はほとんど変わらない。最近発表されたある報告書によると、10年後、コンピューター・サイエンスの学士号を取得して米国の大学を卒業する学生数は4万人と予想されているが、米国内でコンピューター・サイエンスの学士号が必要なコンピューター関連の求人は12万人に上るとされている。数学を専攻していなくたって、これくらいの計算はできる。その仕事に就く資格のある人の数の3倍の職があるということだ。

 この危機的状況に取り組むときがやって来た。州政府は追加的な予算を投じて、小学校から高校までの教育機関で最新のハードウエアとソフトウエアの利用促進を図ったり、科学、技術、工学、数学といった分野の教師の訓練・採用を進めたりすべきである。企業も、厳しい業界で働ける学生を育成 できるように学校の講座に資金援助を行って側面支援をする必要がある。私の会社も含めて情報技術への依存度が高い企業は特にそうするべきだ。しかし、もう1つ、重要なことを忘れてはいけない。それは自分が最もコントロールできると思っているもの、つまり君たち自身である。

 君たちにもいろいろと事情があるだろうし、稼げる仕事を見つけなければならないという非常に大きなプレッシャーを感じていることもわかる。しかし、今から いうことを理解してほしい。君たちの将来を左右しかねない問題だからだ。それは、米国経済の中で生き残りたければ、コンピューター・コードを学んでおいたほうがいい、ということだ。

 米航空宇宙局(NASA)のコンピューターにいたずらで侵入するような天才プログラマーになる必要があると言っているではない。そのレベルのプログラミングは非常に特殊かつ稀な技術で、私自身を含めほとんどの人はそのような技術を持たない。私たちにニューヨーク・ニックスでプレーする運動能力がないのと同じだ。

 一般の人にあるのは情報システムの仕組みを知る能力だ。そういう知識があれば、他の人とシステムについて議論するときに私たちは役立つ存在になれる。例えばこんな例を考えてよう。顧客との会議中に、誰かが君にあるデジタルプロジェクトについて、どれくらいの時間がかかるか質問したとしよう。

 エンジニアやプログラマーがやっていることの基本を理解していなければ、会社の内部がどのように動いているかを理解できる程度にプログラミングの原理や舞台裏を熟知していなければ、質問に当てずっぽうで答えていることになる。そしてその答えはおそらく間違いだ。マーケティングや営業などプログラミングとは関係なさそうに見える職種を希望していても、私の会社が少なくとも基本的にどう動いているかを理解することができなければ、私は君たちを雇うつもりはない。そして、そう考えているのは私だけではない。

 メディアやテクノロジー、またはそれに関連する分野で働きたければ、今年の夏の間に基本的なコンピューター言語を習得することを目指せ。助けてくれ るサービスはたくさんある。無料のサービスもあるし、手ごろな価格で利用できるものもある。

 全体像が描ける程度にコンピューター言語の文法とロジックを独学で身につけてほしい。APIに詳しくなれ。パイソンも少しかじっておけ。それだけ知って いれば、ほとんどの雇い主は十分だと思うだろう。少なくとも2つのプログラミング言語に詳しいと言えるようになったら、履歴書の送付を開始しよう。

 君たちがこれまで成し遂げたことにもう一度お祝いを申し上げる。そして、実社会で必要な知識を身につけられるよう幸運を祈る。

 (マクドナルド氏はマンハッタンにある広告関連のテクノロジー企業パブマティックの社長。前職はタイムのデジタル部門の社長)




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