2011年11月11日金曜日

■観光には夏時間はいいことずくめ?


観光には夏時間はいいことずくめ?
http://mainichi.jp/select/science/nationalgeo/archive/2011/11/07/ngeo20111107001.html
2011年11月07日 毎日Web

 欧米の大部分で夏時間が終わるころ、毎年決まって大西洋の両側から不満の声が沸き上がる。「なぜ時計の針を元に戻すのか?」。夏時間の通年化を支持する人々はエネルギーの節約をうたい文句にしてきた。ところが最近、観光産業の起爆剤という新たな材料が浮上した。夕方の明るい時間が増えれば、公園などに人々が足を運ぶ可能性が高まるという主張だ。

 ツーリズム・アライアンスで方針決定の責任者を務めるカート・ジャンソン氏は、「簡単に言えば、観光産業にとっての端境期、春と秋が長くなる」と説明する。「夕方の明るい時間、人々は出歩き、アトラクションはまだ営業している。有効利用できる時間が増えるのは明白だ」。ツーリズム・アライアンスはイギリスで展開されている夏時間のキャンペーン(Campaign for Daylight Saving)で中心的な役割を果たす組織だ。

 ジャンソン氏は1つの調査結果を引き合いに出す。それによれば、夏時間を恒久的に維持すると、イギリスの観光産業は年間約56億ドルの収入増を見込めるという。

 アメリカ、シアトルにあるワシントン大学の環境経済学者ヘンドリック・ウルフ氏も、理にかなっていると考える。夏時間の間は、テレビ視聴などの体を動かさない気晴らしに使う時間が減り、屋外で活動的に過ごす時間が増えると統計が示しているためだ。


◆勝者がいれば、敗者もいる

「ただし、勝者がいれば、その一方で敗者も生まれるはずだ」とウルフ氏は言い添える。「1年通してとなると、映画をはじめとする屋内での娯楽は不利になるかもしれない。一方、ゴルフコースなどの屋外の娯楽施設は恩恵を受けるだろう」。


◆省エネルギーは幻想?

 歴史的には、省エネルギーの可能性が夏時間への支持を拡大してきた。
 しかし、ウルフ氏は自身の研究を含め、夏時間と省エネは結びつかないと示唆する多数の証拠を挙げている。むしろエネルギー消費量を増やしているかもしれない地域さえあるという。

 ウルフ氏はオーストラリアの電力に関する共同研究で、2000年のシドニー五輪の時期を対象にエネルギーの使用量を比較した。当時、一部の地域では五輪に合わせて夏時間を延長していた。

 研究の結果、「われわれは省エネルギーの仮説を否定した」とウルフ氏は言い切る。同氏によれば、夕方が明るくなって電力の使用量は減ったが、その分、朝が暗くなって電力需要が増え、減少した分が帳消しになったという。

 省エネについての結論はまだ出ていない。少なくとも一部の地域では、夏時間がエネルギーの節約につながるという研究結果も出ている。


◆健康を促進?

 夏時間の通年化が一部の支持を得ている理由は、エネルギーの節約と観光業の活性化だけではない。

 健康上の利点を指摘する者もいる。人々が活発に動き回る時期が増えると予想されるためだ。
 一方、反対派には農業従事者が含まれる。動物や植物にとって時刻の変更は何も関係がない。
農作業の多くは太陽の動きに合わせて行われており、早朝の貴重な作業時間が失われてしまう。

 健康上の利点についても評価は容易ではない。ドイツにあるルートビヒ・マクシミリアン大学ミュンヘンで時間生物学の研究をするティル・ローネバーグ(Till Roenneberg)氏は、24時間周期の体内時計は明暗によって設定されており、明るい時間を朝から夕方に移動させても適応できないという研究結果が出ていると話す。同氏によれば、夕方に明るい時間が増えると疲れがたまったり、病気にかかりやすくなったりするだけだという。

 夏時間の賛成派も反対派も、ある点では意見が一致している。年に2度時計を動かすという現在のやり方は不便で、かなり不自然な調整を強いられるということだ。



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