2012年5月21日月曜日

■「病気欠勤」スト、進まぬリストラ… エア・インディア、やまぬ混乱


「病気欠勤」スト、進まぬリストラ… エア・インディア、やまぬ混乱
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120521-00000502-fsi-bus_all
5月21日(月)10時44分 フジサンケイ ビジネスアイ

 インド国営航空エア・インディアが揺れている。操縦士による長期ストライキでデリー-東京便など国際線を中心に大量の欠航便を出す事態になっているからだ。今月7日以来、約200人が断続的に「病気」を理由に欠勤。2週間が経過しても解決のめどが立たない事態は、世界の成長を引っ張る新興国でありながら、社会主義の影を色濃く残し、構造改革が一向に進まないインドのアキレス腱(けん)をまざまざと示している。

 エア・インディアの操縦士の要求はいずれも理不尽なものばかり。2007年に国際線を運航するエア・インディアが国内線のインディアン航空と吸収合併した後、それぞれを母体とする操縦士同士が反目。同社が、新規に導入されるボーイング787型機の操縦訓練を元インディアン航空の操縦士にも課そうとしたところ、元エア・インディア(合併前)の操縦士で作る「インド操縦士協会」が、新型機は自分たちだけが運航すべきだと主張した。

 同協会は経営者側と操縦士が10年たっても機長になれない場合は、能力に関わらず自動的に機長になれるとの合意をすでに結んでいるが、今回は10年の期間を6年に短縮するよう求めている。シン民間航空相は「ストライキは違法」だとして、操縦士側が業務に戻るよう繰り返し要求し、操縦士協会の承認を取り消す事態になった。デリー高裁も9日、ストを違法と認定し、操縦士らの病気欠勤やデモを禁止した。エア・インディアは一部の操縦士を解雇する強硬手段に訴えている。インディアン航空との合併後のトラブルは、こうした操縦士間の対立にとどまらず、経営面でも顕著になっている。

 すでに別の航空会社に吸収された格安航空会社の設立者、ゴピナト氏が15日付のタイムズ・オブ・インディア紙に寄稿した記事によると、エア・インディアは、4000億ルピー(約5800億円)もの累積赤字を抱えているにもかかわらず、リストラはほとんど進んでいない。航空機1機に対する従業員の数は475人。インド航空6社のうち、2008~11年の間に利益を計上できたのは、格安航空会社のインディゴ航空だけだが、同航空の場合は70人で6倍以上の開きがある。月120万ルピーにも及ぶとされる操縦士の高額な給与などがエア・インディアの経営を圧迫し続けているのが現状だ。こうした現状にメスを入れる必要性は明らかだが、政府にはとても、痛みを伴う抜本策に踏み込む気配はない。それどころか、逆にエア・インディア救済のために3000億ルピーの拠出を決めた。ゴピナト氏に言わせれば「ブラックホールにほうり投げるようなものだ」。

 インドの航空業界が抱える問題は多い。一つは高い税金が上乗せされた燃料費だ。アジア太平洋航空センターのカピル・カウル所長は「インドのジェット燃料の価格は、世界で最も高額な部類に入る。航空会社の運用コストの約半分を占め、財務体質を悪化させている」と指摘する。昨年11月にインド紙が報じたところでは、国際航空運送協会(IATA)は、インドでの燃料の価格は1トン当たり1560ドルで、国際平均(約1028ドル)を大きく上回った。航空会社が支払う空港整備料も経営に重くのしかかる。デリー国際空港は10年の新ターミナル完成後、空港整備料は2度も値上げされている。

 さらに、経営に苦しむ民間航空会社はいずれも、外国企業の投資による経営参加を望んでいるものの、インドの外資規制がそれを阻んだままになっている。シン民間航空相は本紙の取材に「外国企業投資問題は間もなく解決する。エア・インディアの財政強化策も練っている」と話したが、具体策はまるで見えてこない。一方、民間航空会社については「政府による支援はない」と強調するばかり。インドの空の混乱はまだまだ続きそうだ。



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