2012年8月4日土曜日

■五輪不況に苦しむロンドン、ビジネスの金メダル獲得なるか


五輪不況に苦しむロンドン、ビジネスの金メダル獲得なるか
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2012&d=0804&f=business_0804_018.shtml
2012/08/04(土) 07:34  サーチナ
       
 オリンピック期間中のロンドンの街は二分されている。東部には、賑やかで、頻繁にメディアに登場するオリンピックパークがあり、スポーツ選手、観客、世界中のメディアが生き生きと活動している。一方、西部には従来からのショッピング街と歓楽街があるが、ゴーストタウンと現在言われている。

それでは、市民はどこにいるのだろう?当局によると、彼らはロンドンの中心部から離れて過ごしているのだという。しかし、多くの企業は、ロンドンのボリス・ジョンソン市長や交通関係の責任者、オリンピックゲーム組織委員会関係者が、ロンドン市民を脅しに近い呼びかけで追い払ったとして非難している。市内の公共交通機関ネットワークに多大な負担がかかるのを見越して、ロンドン市民は、自宅から職場への代替ルートを探すか、休暇を取るように繰り返し命じられていた。

メッセージは、どうやら、あまりにもうまく伝わりすぎたようだ。

さらに、潜在的なロンドンの交通機関に関する問題と、あふれる観客によって混雑する可能性があると聞いて、多くの観光客がピークに達する7月、8月の2か月間のロンドン旅行を避けた。
その結果、オリンピックによる不況が、景気低迷の中で切実な問題になっている。


オリンピック神話

五輪開催中のロンドンが東西に二分された状態のいま、オリンピック神話と呼ばれている事例、つまりオリンピックは「経済的な棚ぼた」になるという期待について、深く考えさせられる。

キャメロン英首相は、五輪開催には90億ポンド(約1.1兆円)以上の高額な費用がかかるが、「困難な時代の贅沢」と見なされるべきではないと述べた。キャメロン首相は「オリンピックを開催した結果、これから4年間にわたり、英国経済に130億ポンドの利益が発生すると確信している。建築物からの利益を追加するなら、総利益はさらに大きくなる」と述べた。

しかし、各オリンピック大会、特に規模の大きい夏の大会では、同じようなシナリオが繰り返される。つまり主催者や政府当局者は、五輪開催の驚異的な経済効果を売り込む。だが、いわゆるメリットと言われるものは、結局はあまり実現されない場合が多い。

例えば、オリンピック開催による圧倒的な需要を見込んで、ロンドンの多くのホテルがオリンピック期間中の料金を2倍~3倍に設定した。しかし、料金が非常に高額になったため、パッケージ・ツアーを提供している旅行代理店はツアーの販売に苦労した。

価格の歪みは7年前にオリンピック主催者が、選手、関係者、スポンサー、メディアのためにロンドンのホテル10万室のうちの4万室の予約を押さえたときから始まった。今年1月に主催者は、押さえた部屋の20%の予約を取り消した。

ホテルの供給過剰にもかかわらず、ホテル経営者は、予想されたビジターラッシュが実現しなかったことを大会1か月前まで認めず、高価格を維持した。その後、価格を下げたが、結局は目標の予約数を達成することはできなかった。ロンドン近郊の4つ星高級ホテルの客室は、現在1泊170ポンド(約2万円)で提供されているが、100ポンド以下で提供するという行動に出なければならない状態だ。

Hotels.comによる調査では、ロンドンのホテルの部屋代の相場は、五輪開催中は平均25%値下げされていることが明らかにされた。

ホテルだけではない。ツアー会社から映画館までの広範囲に及んで影響がでている。「オリンピックが劇場を大虐殺」とサンデー・エクスプレスの評論家は言う。ウエスト・エンド地区のいくつかのショーはチケットの売れ行きが悪いため、オリンピック開催中は公演中止になったと伝えられている。また映画興行も同様の状態となっている。

多数のオリンピック観戦客が訪れ、大会中のロンドンは不便な場所になるとの予想は、あまり当たってはいない100万人に及ぶビジター増加を予想した交通システムは、大会初期のわずか7.5%増に容易に対応した。通常よりも地下鉄の駅が静かだと言っている乗客もいるほどだ。

ロンドン当局は今、将棋倒しやゴーストタウンといった予想していた最悪のシナリオに疑問を感じている。


同じシナリオが続く

五輪を主催するのはギャンブルであり、新しい施設や既存のインフラとセキュリティをグレードアップするために費用をかけると、非常に高額になる。例えば、2004年のアテネ五輪には16億ドルが必要と予想された。しかし実際の費用は予想の10倍かかり、ギリシャの現在の経済危機に結びついている。アテネでは当時、毎晩少なくとも10万5,000人の宿泊を期待したが、実際には1日平均1万4,000人程であった。
2008年のシドニー五輪では、大会中に13万人の観光客を動員との目標を設定した。結局、観光客数は9万7,000人で、その後数年にわたり観光旅行の成長は見られなかった。

この問題に関してロンドンは、以前のどのオリンピックよりも多い、1日10万人が訪れることを目指している。しかし、ヨーロッパのツアーオペレーター協会は、通常の夏のピーク時の30万人をも下回るのではないかと見ている。

ロンドン塔や大英博物館のような主要観光アトラクションを統括するビジター・アトラクション協会は、2011年に比べてここ2週間の訪問客数は3分の1も減少していると述べた。また調査会社エクスペリアンは、ロンドン中心部の店の客数は、7月末時点で前年同期比約12%減であることを明らかにした。オリンピック会場がある東部ロンドンでも、ショッピングは7.5%減少した。

タクシー運転手の団体のスティーブ・マクナマラ(SteveMcNamara)書記長は、売上げはおそらく40%ほどダウンしているだろうと言う。同氏はスカイテレビで「通常、私たちの客の約90%はロンドン市民だ。しかし、市民は皆ロンドンを離れていて、観光客がその代わりをしているわけではない」と述べ、「これらのすべての観光客が、どこにいて、どのように動いているのかはわからないが、ロンドンはゴーストタウンだ」と語った。

経済学者は、五輪のためのすべての建設作業と投資が完了した後、オリンピックが、不況に見舞われた英国経済の後押しするとは思えないと長年にわたり警告してきた。現在、これらの経済学者が正しかったことが明らかになりつつある。

それでも、オリンピックを支持するために言わなければならない。オリンピックは国家のプライドを高め、ブランドとして都市を促進し、世界中の人の心にロンドンという場所を刻む。観光数値が減少傾向にあった都市に、その後も悪影響が残ると主張するのは難しい。

英政府は1日、「総括的な展望を判断することは重要である」と声明を発表した。「五輪は、長年にわたりロンドンが利益を享受するためのグローバルな宣伝活動だ」と主張した。実際に多くの地元当局者が主張していることだ。貿易と観光の面での「計り知れない」利点は増加し、彼らが言うには、今後数年にわたり英国の利益になる。

ジョン・ペンローズ(JohnPenrose)観光・文化・遺産大臣も楽観的である。CIT誌によると、ペンローズ大臣は「私はオリンピック後に、この地域が活性化されることを願っている。人々が大会運営は成功したという結論を下すことを願い、期待している」と述べた。



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