2012年8月16日木曜日

■「海の時空館」再利用波高し 大阪市、頭痛める


「海の時空館」再利用波高し 大阪市、頭痛める
http://osaka.yomiuri.co.jp/e-news/20120816-OYO1T00734.htm?from=main1
(2012年8月16日  読売新聞)

 大阪南港に浮かぶ直径70メートルのドーム形海洋博物館「なにわの海の時空館」の後始末に大阪市が頭を痛めている。入館者の低迷で累計35億円の赤字を垂れ流したため今年度限りの廃止が決まり、2014年度から施設活用を引き受ける民間事業者を今秋に公募する予定だが、10億円をかけて復元した江戸時代の「菱垣廻船(ひがきかいせん)」が最上階4階まで占めており、施設の再利用が困難なのだ。「なんでこんなものを作ってしまったのか」。市役所内からぼやき節が漏れてくる。

展示されている菱垣廻船。撤去には多額の費用がかかる

 「和船の撤去に金がかかる。残したまま、民間事業者を探したい」

 廃止後の施設利用を巡り、市港湾局の担当者が市の幹部会議に提案した。

 全長30メートル、高さ28メートル。大坂と江戸を結んだ菱垣廻船は目玉展示物だ。「大阪南港のランドマークに」と、施設は鉄骨とガラス4200枚を組み合わせたドームをクレーンで持ち上げ、和船に覆いかぶせた構造だ。

 廃止後、無用になる船を撤去するには、再び、ドームをつり上げて船を動かすか施設内でばらばらに粉砕して持ち出すか。どちらにしても費用負担は大きい。

 「民間事業者に撤去費を負担してもらっては」「残したまま、企業が使ってくれるのか」。議論の末、船の扱いは民間事業者の意向を尊重するとして、結論を先送りにした。

 施設は当初、年約60万人の入館者を見込んでいたが、11年度は約9万人。06年度から4年間、吉本興業子会社などで構成する連合体が指定管理者になり、若手芸人が時代劇を交えながら館内を案内して集客を図ったが、客足は伸びなかった。

 市の担当者は「リピーターを獲得するほど魅力的な展示がなかった」と分析する。

 施設の維持管理だけで年約8000万円かかる一方、入場料収入は年約2600万円程度。人件費分を含めて毎年2億~3億円の赤字を市が埋めてきた。結局、10年に市が実施した事業仕分けで「廃止・不要」と認定された。

 翌年、市は大手企業など30社に施設の再利用について打診したが、意欲を示す企業はなかった。橋下徹市長は就任直後の昨年12月、「撤去を含めて検討を」と指示、14年の廃止予定が1年前倒しになった。

 開業当時、港湾局幹部だった市OBは反省を口にする。「計画当時は、市の財源は豊かだったので外見も中身も豪華にしたが、見通しが甘かった」

なにわの海の時空館 海とともに発展してきた大阪の歴史について学んでもらおうと、市制100周年記念事業として2000年7月にオープン。総事業費176億円。直径70メートル、高さ35メートル。ドーム形の奇抜な屋根が特徴で、菱垣廻船の復元船のほか、図書や船の模型など計約9000点を展示している。



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