百貨店は生き残れるか
http://jp.reuters.com/article/jp_blog/idJPTYE87E01J20120815
2012年 08月 15日 10:41 JST ロイター
今夏、小売り業界で話題だったのはセールの分散化だ。従来通り7月1日前後から開始する小売り・商業施設と、2週間程度後ろ倒しにした店舗とに対応が分かれた。
7月上旬の低めだった気温や亜熱帯化を思わせる集中豪雨などの天候不順に加え、今回の動きは消費の現場を惑わせる要因の一つとなった。
セール時期の分散だけが原因ではないものの、7月の百貨店売上高速報は大手4社ともマイナスとなった。ただし正規価格での売上げ比率が高まれば、利益面ではプラスになる可能性がある。
業界内の小さな話のように思えるが、仕掛けた側の思いは熱い。慣習に一石を投じた三越伊勢丹ホールディングスの大西洋社長は「目先の売上げではなく、10年後に百貨店が残るかどうかを考えて議論してほしい」と力説する。「百貨店のあるべき姿を追及して生き残っていきたい」と大西社長は語る。
百貨店のメーンである衣料品は、3―5月が春、6―8月が夏、9―11月が秋、12―2月が冬と大きく4シーズンに分かれる。これまでは、7月上旬という夏シーズンの真っただ中にセールが行われており、早い時期から欠品などが発生していた。大西社長は「本来、色やサイズが不足してきて初めて値引きするもの。欲しい時に、欲しい商品を、欲しい量だけ提供するためには、これをやらなければ百貨店はダメになるとして踏み切った」と話す。
百貨店らしさを取り戻すという考え方は、改装中の伊勢丹新宿本店でも随所にみられる。婦人靴の試着用の椅子を増やしたり、通路を広くするなどしたことで、改装前よりも売り場面積は縮小するものの、顧客がストレスなく買い物ができることを優先したという。
2011年の百貨店業界の売上高は約6兆円となり、9.7兆円あった1991年のピーク時から3分の2に縮小した。業界では、5兆円を割り込むとの予想もある。危機感を募らせた業界では、セブン&アイ・ホールディングスのグループ力を集結して乗り切ろうとするそごう・西武、パルコを買収して都心で上質な商業施設を目指すJ.フロント リテイリング、そして、百貨店の王道を守り抜こうとする三越伊勢丹など、それぞれの個性が出てきている。
他社と同じブランドが同じように展開されている百貨店では、セール時期の分散化はプラスに働かない。個性あるブランドの誘致や企画力も必要となる。また、足元では、ネットショップや駅に隣接する商業施設など、競争相手は多い。他よりもセール時期を遅らせる以上、それらの商業施設に勝つだけの魅力を備えなければならない。
百貨店という業態の生き残りをかけた勝負が始まったとも言える今夏――。皆さんは、百貨店に何を求めますか。
(東京 8月14日 ロイター)
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