2012年9月11日火曜日

■加賀温泉郷 続く苦闘 ホテル百万石休業


加賀温泉郷 続く苦闘 ホテル百万石休業
http://www.chunichi.co.jp/hokuriku/article/news/CK2012090902000190.html
2012年9月9日

観光業者ため息

 石川県加賀市山代温泉の老舗旅館「ホテル百万石」の休業が、加賀、同県小松両市の四温泉地でつくる「加賀温泉郷」に波紋を広げている。休業から初の週末を迎えた八日、観光客数の減少など不安を口にする関係者が目立った。一方で北陸新幹線の金沢開業を二〇一四年度末に控え、早期の営業再開を期待する声も聞かれた。(服部展和)

 「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」。加賀温泉郷の玄関口のJR加賀温泉駅では、温泉郷で働く女性による話題のグループ「Lady Kaga(レディー・カガ)」のメンバー二人が観光客らに声を掛けていた。

 加賀市片山津温泉の矢田屋松濤(しょうとう)園のフロントマネジャー忠谷真紀子さん(46)は、スカイツリー開業で沸く東京や新幹線が開通した九州などと比べ、北陸の温泉地はアピール材料に欠け苦戦が続いていると指摘。「イメージダウンでお客さまの足が遠のかなければいいのですが」と懸念した。

 「百峰閣もやめたしなあ」。この日、山中温泉文化会館で開かれた山中温泉旅館協同組合の理事会。山中温泉の旅館「想(おも)い出づくり百峰閣」が今年七月に事業停止したばかりだけに、出席者たちからため息が漏れた。

 この日はレディー・カガの案内で山中温泉をめぐるツアーを予定していたが、申し込みがなく中止に。苦戦の一端が表れた形だ。

 ホテル百万石の地元の山代温泉では、商店主らが不安を訴えた。菓子店経営の女性(53)は「昔と違って団体客が減った。さらにお客さんが減らないか心配」と人通りのまばらな温泉街を見つめた。

 別の商店主の男性は「いずれ営業を再開するにしても難しい面がある」と打ち明けた。「格安の宿を展開する県外の資本が入り利益だけ追求されると、一生懸命まちづくりに取り組んでいるのにマイナスになる。それは避けたい」と話した。

 一方、飲食店経営の東光博さん(44)は「やり方次第で起爆剤になる」とみる。「大規模な施設を生かせばテーマパークのようにできる。早く営業を再開してほしい」と期待を込めた。
山代温泉の中心部にある共同浴場の古総湯(手前)と総湯(右奥)=8日、石川県加賀市山代温泉で

宿泊客減少の一途 10年211万人
新幹線開業に期待

 石川県の加賀温泉郷は宿泊客数の減少に歯止めがかからない。

 県の観光統計によると、温泉郷の四温泉の二〇一〇年の宿泊客数は二百十一万二千人。統計を毎年取るようになった〇一年以降では、ピークの〇二年の二百六十万人から四十八万八千人(18・8%)も落ち込んだ。

 四温泉の旅館協同組合などによると、各組合に加盟する旅館・ホテル数は現在、山代の十九館が最多。山中の十八館、片山津の十二館、粟津の六館と続き、加盟以外の旅館・ホテルも若干ある。

 各温泉ともここ十年間で、数館ずつ廃業。今年は、六月に山中の老舗旅館「花紫」の元経営会社が特別清算の開始決定を受けて経営再建中。七月には粟津の老舗旅館「湯元かみや」、山中の「想い出づくり百峰閣」が相次いで経営破綻している。

 宿泊客数の落ち込みは全国的な傾向で、観光関係者は「観光ニーズの多様化や海外旅行ブームなどが複雑に絡んでいる」と指摘。粟津の関係者も「会社関係が泊まりがけの忘新年会をしなくなり、大人数の社員旅行も激減した」と語る。

 四温泉とも手をこまねいているわけではなく、行政と連携して温泉街の魅力向上策に取り組んでいる。その一つが街並み整備などと合わせた総湯(共同浴場)のリニューアル。四月の片山津のオープンで、四温泉とも新たな総湯が出そろった。

 北陸新幹線金沢開業という好材料もあり、山代の観光関係者は「新幹線を励みに、おもてなしなど魅力アップに努めるしかない」と力を込めた。 (基村祐一)


核となる強み必要

 マーケティングコンサルタントの西川りゅうじん氏は旅館経営について「価格競争がどんどん激化している。特に初期投資が大きい大型旅館の場合は、回収に時間もかかり経営が難しい」と指摘。再建には「料理や雰囲気など、核となる強みを持つこと」と強調する。

 加賀温泉郷には「官民でPRに力を入れること。ライバル関係にある旅館同士が共におもてなしの質をあげていくこと」とアドバイスする。

 ◇加賀温泉郷◇ 石川県加賀市の山代、山中、片山津温泉と同県小松市の粟津温泉の総称。米女性歌手レディー・ガガさんをもじって名付けたレディー・カガの動画第1弾は動画投稿サイト「ユーチューブ」で30万回以上の視聴があった。4温泉の観光協会などの加賀温泉郷協議会や県は6月から4カ月間、観光客をもてなす「加賀温泉郷おもてなしプロジェクト」を展開中。

 ◇ホテル百万石◇ 1907(明治40)年創業。83年に石川県で全国植樹祭が開かれた際は昭和天皇が宿泊されるなど県内有数の老舗旅館として知られる。70~80年代に積極的な設備投資で成長。1100人収容で、売上高はピークの91年7月期に約87億8800万円。景気低迷や団体客の減少で2000年代は大幅な赤字だった。



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