2012年12月6日木曜日

■家事戦争の休戦-男女平等の時代にどう対応するか


家事戦争の休戦-男女平等の時代にどう対応するか
http://jp.wsj.com/Life-Style/node_558914?mod=Right_pickfree
2012年 12月 5日  13:28 JST

 忘れないで欲しい。「For better or for worse(この先どんな運命が待ち受けているとしても、という結婚式の時に立てた誓い、あるいは(結果がどうなろうと)の意」は、家事にも当てはまるということを。

 大手の家庭用品メーカーは、米国の家庭内で起きている大きな行動上の変化に注目している。それは男女間における家事分担の比率の変化だ。それは、ゆっくりながら着実に変化しており、皿洗い、床のモップがけ、洗濯をする男性が増えている。

 理論的には、妻たちは喜んでいるはずだ。しかし、何世代にもわたって家事の大半をやっていることに不満を漏らしていたにもかかわらず、多くの妻は家事を細かく管理するのをやめられずにいる。

 有名家庭用品メーカーのマーケティング担当者たちも、男性―その多くがリセッション(景気後退)後の世界で不本意な不完全雇用状態にある―も重要な顧客であることを認識し始めている。メーカー各社は製品や広告を刷新して、男性が不慣れな清掃の仕方を覚えるのを手助けしたり、女性が安心して男性に家事を任せられるようにしたりしている。

 米労働統計局によると、2011年の調査では、男性が1日に家事に費やす時間は16分間で、03年から2分間増えた。女性は平均で1日52分間の家事を行っており、03年から6分間減っている。

 家庭用洗剤「スクラビングバブル」を製造するSCジョンソン社によると、11年の調査では、57%の女性がパートナーや配偶者にもっと家事を手伝って欲しいと答えた。これは女性1500人と男性500人を対象に調査を行った。しかし、42%の女性はパートナーや配偶者が(家事を行っても)自分たち女性が考える「きれいさ」の基準を満たせるとは思えないと回答した。

 家庭用品大手のプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)は今年、洗濯用洗剤「タイド・ポッズ」を発売した。洗濯を夫や子どもなど家族に任せるときに女性がストレスを感じることに対応した商品だ。これは洗剤が1回分ずつパックされたもので、洗剤を計って入れる必要がなく、洗剤の量が多すぎたり少なすぎるといった一部の女性の心配を軽減できる。また同社はバウンス・ドライヤー・バーも発売した。これは一度乾燥機に入れたら何カ月ももつような柔軟剤だ。

 タイド・ノース・アメリカの研究開発部門責任者、シェリー・ポーター氏は、「女性は誰かに洗濯をやってもらうことに対して非常に神経質だ。なぜならその人なりの特別なやり方があるからだ」と話した。

 男性の家事用品への熱意の高まりは、家庭による製品の購入に影響を及ぼしている。家電メーカーのダイソンの広報担当者は、フルサイズの掃除機を購入するなら女性が主導権を持つが、コードレス掃除機を購入するなら、男性が女性と同じくらいの発言権を持つという。ここからは、男性がすぐ使える便利なものを好むことがうかがえる。

 オレゴン大学の学部長を務める社会学者のスコット・コルトレーン博士によると、男性は現在、平均で家事の約3分の1をこなしており、1965年の5分の1未満と比較するとかなり増えている。65年当時は、男性は主にゴミ捨てと庭の手入れしかやっていなかった。同博士はデータから変化が今後も続くことがうかがえると述べ、「男女の役割分担はなくなり、もはや意味をなさなくなっている」と付け加えた。

 女性の家事に対する思い入れが夫よりも強いのは、家が汚いと女性が男性より厳しい批判を受けるからだ、と心理学者のジョシュア・コールマン氏は言う。同氏は「女性のアイデンティティーにおいて、家の状態はまだかなりの部分を占めており、さまざまな社会階級や教育水準でそう言える」と述べた。

 コールマン博士によると、家の汚さは男性よりも女性に恥ずかしいと思わせる可能性が高い。その汚さの一番の原因が男性の方にあったとしてもだ。家事分担を話し合い、つまり交渉によって合意するなら、女性の側に巧妙さと外交手腕が必要だ。同博士は「家がどう見えるべきかや清掃の仕方について女性が細かく指定すればするほど、男性が交渉のテーブルから離れていく公算は大きい」と話す。

 シェリル・コートニーさん(52)が夫のコニーさんと家事を分担し始めたのは、最初の子どもが生まれた時だった。現在10代の2人の息子は、ケンタッキー州メイフィールドの自宅で家事を手伝っている。シェリルさんは「家事の先生として、わたしはかなりの完全主義者だ」と述べ、「タオルをたたみ直したり、皿洗いや後片付けする息子たちの後ろで見張っている」と語った。

 シェリルさんは最近、少し寛容になってきたという。とりわけ自分の健康上の問題で家事について家族の手を借りる場合が多くなっているためだ。彼女は「(夫や息子たち家族の家事のいい加減なやり方に)時々腹立たしくなるけど、それは乗り越えなければね」と言う。

 P&Gは最近、「スウィッファー(清掃用モップ)」用に「Man Up, Clean Up」というコマーシャルキャンペーンを打ち出した。これは男たちにもっと家事を引き受けるよう促したものだが、女性たち向けでもあるのだという。スウィッファー北米販売部門の副ディレクターのスコット・ビール氏は「一部の人々は自分の掃除のレベルが高いことから、これを他人に任せたがらないかもしれないが、スウィッファーのメッセージは、誰がこの清掃用モップを使っていても、皆さんの期待する成果が得られるということだ」と語った。

 P&Gの洗剤「タイド」のコマーシャルでは今年、洗濯をする夫たちを登場させた。これは「タイド」ブランドの66年の歴史上初めてだ。あるスポットでは、stay-at-home mom(専業主婦)ならぬstay-at-home dad(専業主夫)が自慢してこう言う。「洗濯物は素晴らしい出来ばえだ。そしてパパはというと、ヒーローなのだ」。

 P&Gの北米洗濯部門の販売部門の副ディレクターのクリス・リリック氏は「われわれはこうした新しい家庭の姿を出来るかぎり製品に反映させるよう努めている」と述べ、「父親たちは不幸ではないし、自分たちが何をしているのか良く理解している」と語った。

 赤ちゃん用おむつ「ハギ-ズ」のメーカーであるキンバリー・クラークは、同社が実施した調査の結果、親としての仕事に相当あるいは平等に参加している父親は3分の1程度だと分かったという。ハギーズのブランドディレクター、アリック・メルゼル氏は「父親が赤ちゃんと過ごす優しい瞬間を伝えると、母親たちの共感を得ることができた」と述べた。本物の父親が自分の赤ちゃんを寝かしつけている広告は母親たちの間で高い評価を得たという。 

 男性たちが引き受ける家事の責任が重くなるにつれて、男性は、家事をすることで彼らが不幸だとコマーシャルの中で描写されたくないと考えている。キンバリー・クラークは今年初め、父親がアメリカンフットボールの試合に気をとられて赤ちゃんのおむつを取り替えない場面を映したコマーシャルを放映した。すると、視聴者の父親たちから抗議が殺到した。そこで、このコマーシャルの放映を中止し、他の広告のナレーションも変更した。これは「ハギーズが父親たちを試そうとしているのではなく、彼ら父親にハギーズを試してもらいたいことを明確にする狙いがあった」(同社広報担当者)という。
  
記者: Ellen Byron



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