2013年1月2日水曜日

■【コラム】自分の夢が分からない子どもたち


【コラム】自分の夢が分からない子どもたち
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2013/01/01/2013010100311.html
2013/01/01 08:11 金亨基(キム・ヒョンギ)論説委員 朝鮮日報


 「私はもうすぐ高3なんですが、いくら考えても得意なことは一つもないし、どうしていいか分かりません。勉強もできないのに、大学に行っても入学金や授業料がもったいないです」

 「何かの本に、大きな夢をはっきり決めるのではなく、生きて行く中で探すようにと書いてありました。でもとても不安です。学校や塾が忙しくて時間もないのに、どうやって急に夢が決まるのでしょうか…」

 「まだ進路も決まっていないし目標もないのに勉強ばかりしているので、いらいらするし面倒に感じます。本当に私が望む人生は何なのでしょうか。時間はどんどん過ぎて行くのに、ただ毎日毎日単調な暮らしをしているようで、なんだか悲しくて悔しいです」

 韓国職業能力開発院のウェブサイトで進路相談コーナーのページに入ると、このような相談が3万4000件ほど書き込まれている。中高校生からの相談が多いが、小学生や大学生も少なくない。このコーナーは2010年1月にオープンしたため、1日平均32件ずつ書き込まれたとになる。先月の大学修学能力検定試験(修能、日本のセンター試験に相当)直後には、相談の書き込みがさらに殺到した。当初このコーナーを開設した際には、大学の学科選択や就職情報などの助言を求める学生が多いと考えられていたが、そうではなかった。相談の大半は、自分が得意なことは何なのか、自分がやりたいことが何なのか分からずつらい、と訴えている。「自分の夢を実現できるよう助けて下さい」ではなく「自分が探している夢が何なのか、自分でも分かりません」という悲鳴だ。

 これらの内容を見ると、韓国の教育に何らかの変化が必要な時期に来ているのは明らかだ。今も韓国の児童・生徒たちは国際学力評価で最上位圏を維持しており、外国からは韓国の教育に羨望(せんぼう)のまなざしが向けられる。しかし実際には、韓国国内は不満だらけだ。学力重視の教育に対する疲労がたまり、産業化時代の優秀な人材養成に焦点を合わせた教育が限界に達したのではないかという懸念の声も多い。だからといって、左派の主張のように、韓国の教育の長所と競争力を全て捨て、平均化万能の世の中に向かうこともできない。

韓国の教育の弱点は「トラック(進路のコース)」があまりに単純なことだ。全ての子どもが小学校の時期から「いい大学への入学」という一つの目標に向かって走る。「5特小(5年後に特殊目的高校=外国語や科学などに特化した進学校、に行ける小学校という意味)という流行語があるほどだ。このように小中高校の12年間、勉強しかせずに過ごし、大学入試に失敗すると、突然人生の落後者となる。大学に入学しても大学の看板によって1、2、3流に分けられ、ともすればそれが一生続く。自分が探している夢が何なのか、自分に向いている道がどの方向なのか、考える余裕すらないまま青少年期が過ぎてしまう。人生設計のためにできることが勉強しかないというのは、個人にとっては不幸なことであり、国家的には資源の無駄遣いとなる。

 ドイツでは小学校4年生のときに、大学に進学するのか職業教育を受けるのか、進路を決め、それに合った上級学校に進学する。ドイツのモデルをそのまま導入するのは不可能だが、われわれも韓国の実情に合わせて子どもたちができるだけ早く自分の進路を見つけられるようなシステムを作るべきだ。そのためには単一トラックを複数のトラックに変えなければならない。勉強の素質がある子どもたちにはその才能を発揮する場を与え、他の方面に適性がある子どもたちにはその潜在力を伸ばす道を準備してやるべきだ。それが韓国の教育の長所をそのまま活かしながら、弱点を克服する「第3の道」だ。

 先進国は、進路教育システムをある程度整備するのに数十年かかっている。韓国が今から準備を始めても、目標までは遠い。しかし、大統領選挙の朴槿恵(パク・クンヘ)、文在寅(ムン・ジェイン)両候補の教育公約からは、韓国の教育が直面している本質的な問題に対する問題意識が見えてこない。無償教育、大学授業料の半額化など、金さえ掛ければ誰でも実現できる「ばらまき政策」ばかりだ。票集めに忙しい候補者たちの耳には「自分の夢が何なのか分からない」という子どもたちの悲鳴は聞こえるはずがない。




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