2013年3月2日土曜日

■商品の包装、黒が大流行に シャンプーからビール、ジェラートまで


商品の包装、黒が大流行に シャンプーからビール、ジェラートまで
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2013年 3月 01日 13:45 JST  By SUZANNE VRANICA

 アイスクリーム、ビール、スープ、そしてシャンプーまでも、企業の商品担当者は、おしゃれな女性なら誰でもよく知っている例のことを発見しつつある。パーティーで2人の女性ゲストが同一の黒いドレスを着てきた時の、あの決まり悪さだ。

 ビール大手アンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABインベブ)は最近、傘下のベックのサファイア・ビール用に同社として初の黒いビール瓶を導入し、ラベルも黒色にした。米食品大手ゼネラル・ミルズ傘下のハーゲンダッツは黒い容器入りのジェラート製品を導入したばかりだ。

スープからシャンプーまで、商品の包装に黒色を用いることが流行している

 スーパーマーケットなどでは、洗濯用洗剤といえば青、緑にオレンジといった1960年代を思わせるような色を使い、華やかに見えたものだが、最近はそこでさえ暗くて黒に近い色調に変化している。スープの棚もだ。

 独ヘンケル傘下ダイアルの芳香剤「リナジット」のシニアブランドマネジャー、マイク・セシル氏は、「黒が爆発的に使われている」と話した。ダイアルは昨年8月に黒の容器に入ったコーン(円錐)型芳香剤の新製品を発売した。

 しかし、リナジットのライバルブランドである英レキットベンキンザーの「エアーウィック」も先月、国立公園の名称を付けた黒い容器の芳香剤を発売した。エアーウィックのシニアブランドマネジャー、ドメニク・チジアーノ氏は、黒は企業が「さまざまな商品の氾濫から抜け出す」手助けになると語る。

 スーパーマーケット向けの大型ブランドは、混雑する店内の通路を急いで通り抜けていく買い物客の目にとまるのはどんな色か、そしてどんな形かを研究するのに計算不可能なほどの時間と費用を費やしている。このため、あるブランドとそのライバルがほぼ同時に黒を採用するというのは、不運の偶然のように見えるだろう。

 しかし、リナジットのセシル氏によれば、そんなことは一切ないという。リナジットのライバルであるエアーウィックはろうそく、芳香用オイル、自動スプレー製品に黒の容器を用いているが、コーン型には使用していない。

 大半の店舗は芳香剤をブランド別ではなく、形状別に陳列している。このため、リナジットとエアーウィックによれば、それぞれの黒の容器が隣に陳列される可能性は低いのだという。

 一部のマーケティング担当者は、黒の人気について、長引く景気低迷への反応ないし反発だと指摘する。景気低迷は消費者をより安価な商品に引き寄せる。そうした中で黒がそれとなく「プレミアム(高級)感」を伝えているのだという。

 アンハイザー・ブッシュのパット・マクゴーリー副社長(イノベーション担当)は、人々は価格がそれほど高くない限り、プレミアム商品を欲しがると指摘する。顧客たちは「高級車は運転できないが、たとえ大枚をはたいて破産しなくても、ちょっとしたプレミアム・ビールを飲むことはできる」と話しているのだ。

 実際、ベックのサファイアの価格は通常のビールより20-25%高い。アンハイザーによれば、サファイアにはドイツのサファイア・アロマホップが使用されているからだ。

 シャンプー業界でもライバル各社は、容器で似たような色彩の商品を登場させており、黒を使っている。フランスのロレアルは1月、しゃれた黒のボトルに入ったシャンプーとコンディショナーの新ライン、「アドバンスト・ヘアケア」を発売した。ライバルのプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)がヘアケアブランド「パンテーン」の黒バージョンである「エキスパートコレクション」を発売したのと同じ月の出来事だ。

 黒の使用はとりわけパンテーンにとっては衝撃的だった。同ブランドは長年、容器に白を用いてきたからだ。P&Gの社員でさえ時々、シャンプー売り場でパンテーンが陳列されている場所を指すのに「白い壁」という語句を使っている。

 P&G北米ヘアケア事業のマーケティング責任者であるケビン・クロチアータ氏は、パンテーンとロレアルが黒の容器で争うことを懸念しているかコメントを控えた。ロレアルの広報担当者もコメントを拒否した。

 これだけ多くのブランドが黒を使用するとなると、消費者がうんざりする、またはもっと悪いことにそれに気付かなくなるというリスクが存在する。

 リナジットは既に黒の芳香剤のパッケージをアップデートしている。この芳香剤は昨夏に発売されたが、陳列棚でより目立つように絵と文章を鮮やかにした。

 ダイアル社のセシル氏によると、「発売当初のパッケージは考えていたより少し暗かった」そうだ。

 パッケージの専門家によれば、黒色は長年、家電で標準的に使われているものの、かつては食品といった他の商品ではタブーだと考えられていた。

 ニューヨークに本拠を置くパッケージデザイン会社CBXの最高クリエーティブ責任者、リック・バラク氏は、「黒については会話にさえ上らなかった。ネガティブなイメージが強過ぎるからだ」と述べる。

 これが1980年代の好景気の間に変化した。パッケージデザイン会社ターナー・ダックワースのパートナー、デービッド・ターナー氏によると、豪華さを出すために黒のパッケージを採用する企業が増えたのだという。

 同氏によれば、ユニリーバのアイスクリームブランド「ブレイヤーズ」はその波に乗ったものの1つだ。しかし、そのトレンドも徐々に勢いを失った。

黒の復活の最初の兆候は2010年だった。当時、日用品大手のキンバリー・クラークはCBXと協力して、生理用品U by Kotex(ユーバイコテックス)用に黒の包装を導入した。薬局など店舗の女性専用製品の通路側に置いてあって、同種の製品に通常使われているパステルカラーとは対照的だった。U by Kotexは26億ドルの米国市場で7%のシェアを獲得した。

 ベックのサファイアについて、アンハイザー・ブッシュは徹底的な実験を行い、消費者に店舗の棚のコンピューターシミュレーションをみせ、視線追跡技術を使い、どうしたら自社製品を他の製品よりもよく発見するかを観察した。

 アンハイザーのマゴ—リー氏によると、同社は黒い瓶と黒いラベルの採用を検討した際、「若干のためらい」があった。「黒は重そうに見える」からだ。

 そこで同社は6パック用の紙ホルダーに金色のビールの写真を付け加え、ビール自体は黒くないことを示して消費者を安心させようと工夫した。

 パンテーンのエキスパートコレクション製品は約8.99ドルで販売されており、通常のパンテーンの基本商品の約3.99ドルを大幅に上回っている。P&Gのクロシアタ氏は「内部の技術が本当の突破口だ」と述べた。原材料の一つには厚みをもたせる成分があり、それが消費者に「ポニーテールにした場合、髪の毛が6500本増えた感覚」を持たせるのだという。

 ダイアルによれば、リナジットの芳香剤には上質のフラグランスオイルが25%ほど増量されており、同社の既存の円錐形芳香剤より25セントほどコスト高になっているという。

 P&Gは2011年夏、香りが長続きする「ダウニー・アンストッパブル」を発売した。黒い包装の香り付け専用補助剤で、洗濯物を「最大12週間新鮮にする」というのが謳い文句だ。

 ダウニーの広報担当者によれば、この製品は予想外に伸び、初年度で5000万ドル売り上げた。今年は売り上げが2倍になる見通しだという。価格はオンス当たり約32セントで、通常のダウニー製品の同9セントを上回っている。

 製品メーカー各社は、スーパーマーケットに溢れる各種製品の中でいかに自社製品を差別化するかに腐心している。

 過去10年間で、発売した新製品の数は爆発的に増加した。調査会社ミンテルによれば、2012年には市場に出回った新製品は4万0194点に達し、10年前の02年の2万6412点の実に52%増になっている。

 ミンテルの上級グローバル包装アナリスト、ベンジャミン・パンチャード氏は「包装の手法はもっと研究される必要がある」と述べた。

 ハーゲンダッツにとっては、買い物客の注意を迅速につかむのが決定的に重要だ。同社のブランドマネジャーで黒い容器のジェラートを売り出したばかりのケーディ・ベールズ氏は「多くの人々は冷凍食品の通路を歩くのを楽しんでいない。寒いので少々不快になるのだ」と述べた。

 ハーゲンダッツはジェラートの発売に数カ月先立つ昨年6月に消費者150人を集めて調査した。最初のグループの参加者は擬似店舗の棚の上に、他のアイスクリームの中に黒い容器の製品があるのを見つけた。次のグループは金と白色の容器を見た。

 このような実験をした結果、消費者たちは圧倒的に黒い容器に目を奪われ、魅力を感じた、とベールズ氏は述べている。




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