鳥インフル、中国政府が恐れる「治療費なく、病院に行けない人々」
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2013&d=0429&f=national_0429_029.shtml
2013/04/29(月) 10:35
中国の李克強首相はH7N9型鳥インフルエンザなど伝染病にかんして浙江省および(20日に震災が発生した)四川省蘆山地区の衛生関連当局と行った28日のテレビ会議で、「費用問題で、病人の治療が滞る事態を絶対に出現させてはならない。病人が時を移さず治療を受けるように、全力で救うようにせよ」と強調した。社会保険が整備されていない中国で、政府当局が「費用問題で治療を受けられない人が出て、感染が拡大する」を懸念していることが、改めて浮き彫りになった。
中国政府はこれまで、H7N9型鳥インフルエンザの治療が社会保険の適用対象になることの啓発や、医療機関に対して治療費の問題で感染の疑いがある患者を放置することを厳禁する通達を出してきた。医療関連を所管する政府・衛生と計画出産委員会だけでなく、財政部も23日までに、医療費の問題でH7N9型鳥インフルエンザの患者に応急措置を施さず、たらい回しにすることを厳禁すると通達した。
同通達は、貧困な人がH7N9型鳥インフルエンザにかかって治療を受けた場合には補助金制度の適用対象になり、身分が特定できない患者に対しても、緊急基金による補助金支払いの対象になると説明した。これまでに、個別の地方政府が、H7N9型鳥インフルエンザの治療についての予算を計上したとの報道も相次いだ。
しかし低所得層の人々にとっては、インフルエンザの症状が出ても自分自身でH7N9型鳥インフルエンザに感染したかどうかを知る手立てはなく、医療機関に出向いて診察を受けることに二の足を踏むケースが多発するであろうことは、十分に考えられる。
中国は1990年代以来、経済の高度成長を実現したことに伴い物価が上昇、医療費も高騰した。その一方で、貧富の格差が拡大し、社会保険の整備も遅れた。裕福な人々はさほど無理なく、発達しつつある医療の恩恵を受けられるようになったが、貧困な人々は「悪平等」などと言われた教条主義的な社会主義の時代よりもむしろ、「医療とは縁遠くなってしまった」という構図だ。
経済発展に伴う過渡期特有の現象と言ってしまえばそれまでだが、中国はH7N9型鳥インフルエンザの発生という状況に直面し、社会構造のひずみに起因する感染拡大のリスクに対応するため、首相自らが医療関係者の自覚を懸命に訴えねばならない事態になった。
◆解説◆
日本では、中国政府が発表するH7N9型鳥インフルエンザの患者数などに対する不信感も根強い。過去の事例を見ても、2002-03年の重症急性呼吸器症候群(SARS)の発生時、中国中央政府は北京市が患者数について「ごまかした」と宣言した。09年の新型インフルエンザ発生時には呼吸器疾患などの権威である鐘南山氏が、地方政府に「新型インフルエンザの可能性がある患者について、ウイルスの検査を行わない」例があるなどと、感染者数についての“ごまかしのテクニック”を暴露した。
したがって、H7N9型鳥インフルエンザの感染者数や死者についての「中国政府の発表は信じられない」との見方も、理由がないことではない。過去の事例をみれば、地方の行政に、感染者数をごまかすなどの現象がみられた。中央政府などからの責任追及を回避することが主な動機だったと考えてよい。
しかし、「費用面を恐れて、症状が出ているのに医療機関に足を運ばない」人が多発すれば、中国政府にとっては「ごまかし」が存在するかどうかの以前に、H7N9型鳥インフルエンザ蔓延(まんえん)の実態すら掌握できないことになる。感染拡大を阻止するために、一層深刻な事態が出現することになる。
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