2011年9月30日金曜日

■「前に進むのみ」 佐藤義正さん(国際観光旅館連盟会長)(1)


「前に進むのみ」 佐藤義正さん(国際観光旅館連盟会長)(1)
http://www.travelnews.co.jp/closeup/interview/1109261209.html
トラベルニュースat

本紙8月25日号掲載の前回に続き、佐藤義正・国際観光旅館連盟会長(岩手県盛岡市つなぎ温泉・南部湯守の宿大観)のインタビューを掲載する。前回は、東日本大震災後の東北観光の現状と復興への方向性を尋ねた。今回は、日本観光旅館連盟との統合を2011年度総会で決め、12年4月の新しい宿泊団体設立に向けた作業の進捗状況などついて聞いた。

日本旅館のブランド力を強化


―オープン・ウェブ構想について教えてください。

佐藤 昨年までは国観連客室管理システムと呼んでいたものです。国観連が、自ら会員の客室管理をしようというものです。ユニレズが海外向けなのに対し、国内向けの販路拡大策です。
自分自身で客室の販売管理をすることで、従来からの旅行会社頼みから脱却して、会員同士が切磋琢磨して、魅力的な宿泊プランをつくり、それにより宿泊需要を増やそうという狙いがあります。経費節減も図れます。宿泊客が減り、宿泊単価が低下するなかで、旅行会社に支払う手数料の負担が厳しくなっています。従来の慣行を否定するものではありませんが、旅館が安定した経営をするためにもコスト削減は待ったなしです。

これまで3年かけて、イノベーション事業として国の支援も受けながら実証実験を行ってきました。国観連単独ではなく、関心とノウハウのある相手との協働も視野に、今年度中には会員に参加を呼び掛けられるような枠組みをつくりたいと思っています。

国観連オープン・ウェブ構想が実現すれば、これが求心力となり、国観連が再び魅力ある強い組織になれる。ウェブサイトからは、旅行者も旅行会社も自由に予約をしてもらいます。こうした趣旨がきちんと伝わることも考えオープン・ウェブ構想という呼び方にしました。誰かを排除するものではなく、オープンで公平なウェブサイトをつくります。


―来年4月に日観連と統合し新しい旅館団体を創設することが決まっています。5月の総会の時点で60%のところまできているという認識でしたが。

佐藤 生い立ちも目的も異なる組織がひとつになるのは大変なことです。しかし、国観連は会員の3分の2の賛成を得、日観連は会員の4分の3の賛成で、両組織の解散と新組織の設立を承認しました。後戻りはしません。双方が日本の旅館の将来はこうあるべきとの大局的な見地から、相手を思いやり話し合いを続けることが大事です。困難はあると思いますが前に進むのみです。


日観連との統合について
「後戻りはしません」と佐藤会長


―新組織に継承すべき国観連のDNAとはなんですか。

宿をカテゴライズし発信

佐藤 日本の旅館の姿をしっかりと継承したいということです。
この点については、どちらの組織も生い立ちは日本旅館の集まりですから心配していません。世界から見て魅力のある旅館、泊まりたいと思ってもらえる旅館であり続けたい。そのための努力が必要だと考えています。

観光庁がまとめた2010年版の訪日旅行者のアンケートでは、訪日時に温泉入浴体験者が38%あり、次回の体験希望率が51%です。これに対し、旅館の宿泊体験率が53%あり、次回の宿泊希望率が33%です。温泉入浴は希望率が増えているのに、旅館は減っている。宿泊して期待はずれ、と考えている旅行者がいるということです。

理由としては、低価格のパッケージツアーでの旅館利用が考えられます。例えば、きちんとした日本料理を期待していたのに、朝も夜もバイキングだったとか、本来の伝統的な日本旅館のもてなしを体験していないのではないでしょうか。

低価格のツアーは、インバウンドの量的拡大に貢献していますが、伝統的な日本旅館に対する期待と、提供する内容にミスマッチが生じている可能性があります。そうした意味からも、伝統的なサービスを提供している施設を旅館と定義し、それを国観連がRYOKANという名称で情報発信し、世界に定着させる努力が必要です。

低価格で合理的なサービスを提供する宿泊施設も必要ですが、伝統的で高品質のサービスを提供している施設が同じカテゴリーで認知されてしまうと、日本旅館というブランドの発信力が弱くなってしまう。旅館と名乗るために必要な要件を再整理し、カテゴリーを明確にすることが必要です。レイティングではなく、カテゴライズです。

例えばですが、「低価格で家庭的で小旅館」、「低価格で合理的なサービスを提供する大型旅館」、「高額で伝統的な旅館」、こうしたカテゴライズを行い新組織のなかですべての宿泊施設が共存していく。インバウンド誘客もカテゴリーに分けて取り組めば、より効果的なはずです。新組織発足に向けては、国観連として、こうした提案もしていくつもりです。

(トラベルニュースat 11年9月10日号)


0 件のコメント:

コメントを投稿