2011年9月24日土曜日

■流通科学大、復興と観光探るシンポ開催

流通科学大、復興と観光探るシンポ開催
http://www.kankokeizai.com/backnumber/11/backnumber/kanko_gyosei.html
観光行政 第2626号《2011年9月24日(土)発行》    

 流通科学大学(神戸市西区)は19日、大学内のRYUKAホールで、シンポジウム「震災復興と観光の力—その未来に求められる人材を考える—」を開催。シンポジウムでは、大震災から復興した神戸で、震災復興の観光産業のあり方や旅行業の取り組み、復興と今後求められる観光人材などについて、基調講演やパネルディスカッションを実施した。

 基調講演では二階俊博衆院議員(元経済産業相、全国旅行業協会会長)、金井耿日本旅行業協会会長、小久保恵三・同大教授がそれぞれ講演。

 後半は「震災復興と観光の力」をテーマにしたパネルディスカッション。パネリストは、二階議員と金井会長、国土交通省から前観光庁次長の武藤浩・大臣官房総括審議官、俳優で観光庁アドバイザーの辰巳琢郎氏、中西理香子・神戸市観光コンベンション推進室主幹、佐藤洋詩恵・山形県かみのやま温泉日本の宿古窯女将。司会は高橋一夫同大学教授が務めた。

 被災地の東北を代表して意見を述べた佐藤氏は「東北6県で頑張ろうといっても温度差がある。福島県の女将さんの思いは言葉にできない。福島や宮城の状況を知ると、山形が風評被害払しょくのキャンペーンをして良いのだろうかと思った。しかし女将会の中で、何もしないと東北はこのままだめになるという結論になった。女将が連携して、明るくお客さんをお迎えしている」と震災の中のキャンペーンの苦労を語った。

 中西主幹は「3年で神戸の観光客は回復したが、当初は国や関係団体などの協力で国際会議の誘致があったからで、個人客の神戸への旅行控えはなかなか回復しなかった。震災以前と同じ観光施策ではなく、付加価値のある神戸観光に取り組んできた。その成功事例が神戸ルミナリエ。被災地を元気づけ観光客も誘致する。ルミナリエを開催していなければ、震災以前の観光客数には、戻っていない」と神戸観光の復興について話した。

 このほか、風評被害のメカニズムや、風評被害対策として観光産業でつくる共済の設立の可能性について意見が交わされた。

 二階氏はまず、「阪神淡路大震災の時は当時の新進党の指示を受けて、同士の国会議員とともに神戸に入った。地元選出以外の国会議員の中では、私が初めてだった。燃えさかる神戸の街、変わり果てた街を確認した1人として、今日の神戸の復活、復興の様子を見ると感慨無量だ」と述べた。

 震災復興のあり方については「観光で地域経済を活性化させることが極めて重要。東北地方において観光は農業と並ぶ基幹産業であり、その意味では旅行業が担っているともいえる」と指摘。
 その上で、「全旅が7月に福島県で観光復興支援会議を開いた。(原発事故の影響で)福島への修学旅行は激減することが予想されており、全旅協では東北への修学旅行誘致を強く呼びかけている。また東北の復興のために日中韓のトライアングルで臨むことが重要で、来年の『日中国交正常化40周年』、韓国の『麗水国際博覧会』開催を契機に相互の交流を一層促進するべきだ。全旅協としても外客誘致だけでなく、海外旅行にも力を入れ、交流を拡大していく」とした。

 風評被害では「福島に対する風評被害が極めて深刻。実際に(福島県に)入ることができないのは県全体の5%にすぎない。それ以外の観光地には入ることができる」として正確な情報発信の必要性を強調。
 さらに、「福島県産の食材を使うことを心がけている。経済協力開発機構(OECD)の事務総長との昼食会に福島の食材を使った料理を提供した。また、中国の邵琪偉観光大臣が100人の観光関係者とともに来日した際にも、福島産の食材で料理を提供し喜んでもらえた」ことを明らかにした。
 また、「自民党組織を総動員して今夏に『ひまわりキャンペーン』を展開した。北海道から沖縄までひまわりの種を植え、黄色いひまわりの花で被災地の人々を元気にする取り組みだ。ひまわりの花だよりを東北に送ったほか、写真作品を集めてコンクールも行う。秋からは菜の花を植えるキャンペーンを行う」考えを示した。

 人材に育成については、「質の高い観光サービスを確保するためには高度な感性、適切な能力を有する次代を担う若い人材の養成、つまり『観光立国教育』が不可欠だ。早くから観光人材育成に着目し、力を注いできた流科大に深く敬意を表する」と講演をまとめた。


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