2011年9月30日金曜日

■変貌する銀座・有楽町の姿を俯瞰する


変貌する銀座・有楽町の姿を俯瞰する
http://www.insightnow.jp/article/6809
2011年9月28日 12:32金森 努

 街は生き物のように進化し変貌し続ける。そして、そこに集う人々も様変わりしていく。今回は銀座・有楽町エリアの表情を覗いてみよう。
 高級ブランドとデパートが建ち並び、人々の夢とあこがれを集める大人の街、銀座・・・という認識はもう古い。その街並みと客層はすっかり変わっている。また、上記のように表現されるとき、近隣の有楽町は銀座とひとくくりに語られることが多いが、そこもまた大きな変化の時を迎えようとしている。

 銀座・有楽町エリアの地理感をざっくり押さえよう。両エリアを縦に貫くのは晴海通りで、中心点は4丁目交差点。晴海通りを中心に4、5丁目で分ける。皇居を背にして左手に1~4丁目、右手に5~8丁目。晴海通りと直行するのが通称銀座通りと呼ばれる中央通り。休日の歩行者天国でも有名な銀座の中心街である。中央通り平行しているのが有楽町に外堀通り、晴海方面が昭和通りだ。

 その中心街たる中央通りの新橋方面・5丁目側には百貨店の松坂屋が店を構えているが、実はそのエリアの特徴は従来の大人・高級という風情ではない。言い換えてみれば、外国人・ファストだ。ファストは、「ファストファッション」のこと。ユニクロ、H&M、ZARA、フォーエバー21が軒を揃える。フォーエバー21は2013年から始まる建て替えまでの期間限定契約とはいえ、松坂屋にテナントとして入居している。客層で目立つのは外国人。欧米人もいるが、中国人が圧倒的に多い。フォーエバー21同様、松坂屋に入居している中国資本となった家電量販店・ラオックスも集客に一役買っている。晴海通りの反対、京橋方面の4丁目側にはアップルストアなど目新しい店もあるが、三越と松坂屋が構えているため、旧来からの百貨店ゾーンといえるだろう。特に三越は2010年秋に売り場面積を1.8倍に増床した。三越、松坂屋の買い物袋を下げた人が目立つ。

 その百貨店ゾーンはさらにこの秋、活性化のために新たな展開を行う。松屋と三越の共同販促だ。長年のライバル関係にありつつも松屋は伊勢丹と提携しており、三越と伊勢丹の経営統合によって微妙な関係となっていたが、両社活性化と地域の盛り上げのため呉越同舟が実現したのだ。「ギンザファッションウィーク」と題して10月19日~25日の間、松屋と三越のロゴのが仲良く並んだ共通の紙袋を使用し、婦人服売り場での共同のショーなどを開催。2万円以上の買い上げ客にトートバックをプレゼントするなどの施策を展開する。

 銀座エリアにアクセスするには、地下東京メトロ鉄銀座線、丸ノ内線銀座駅か有楽町線の銀座1丁目駅、都営浅草線東銀座駅を利用するか、JR有楽町駅から歩くかが一般的だ。有楽町駅からのアクセスは有楽町駅を降りて「マリオン」を通り抜け、晴海通りに出て晴海方面に下っていくのが一般的だった。マリオンにいくつも入っている映画館に立ち寄る人も多い。

 明らかに人の流れが変わったのが2007年のことだ。9月に有楽町近くの外堀沿いに東急ハンズやユナイテッドアローズが入居した「マロニエゲート」がオープン。続いて10月に有楽町駅前に丸井が入居した「有楽町イトシア」が開業した。マロニエゲートの東急ハンズは5階~9階部分の約1,200坪を占め、「自分環境・暮らし環境のクオリティアップ」を提案する新しいフラッグシップ店と位置付けられている。また、ユナイテッドアローズも地階から1階にかけて原宿本店に次ぐ約236坪で展開している。イトシアの丸井も顧客の中心である学生層に加えて、丸井を卒業した若い社会人を呼び戻すという新基軸を打ち出し、オープン当日は平日にもかかわらず大盛況となった。そして、集う人と、人の流れが変わった。従来になく若い層が集まってきた。一様に渋谷や池袋など他の街に出かけるときよりオシャレをしている。そして、JR有楽町駅を降りたらマリオン・晴海通り方面に行かず、駅前のイトシアからマロニエゲート周辺を回遊する。

 有楽町エリアをさらにパワーアップしたのが、9月1日にオープンした。1998年5月30日から2000年12月13日まで宝塚劇場建て替えのため、東京都旧丸の内庁舎跡地に開設されたTAKARAZUKA1000days劇場跡をビックカメラテレビ館とリサイクルショップのコメ兵、無印良品が利用していた。ビックカメラとコメ兵が撤退した跡に「有楽町ロフト」がオープンしたのだ。同時に無印良品もリニューアルし、客層の近い両店の相乗効果で集客力は増し、エリアの魅力を高めている。

 マリオンはどうなるのかといえば、半分はしっかりと有楽町エリアの中核となるはずだ。半分とは、昨年12月25日に閉店した西武有楽町店の後継テナントとして10月28日にオープンする「有楽町ルミネ」のことである。若年層向けの低単価高回転商品を中心とした館造りで定評のあるルミネが、20代後半~30代の「大人の男女」をターゲットとして「これって、Otona?」をキーワードに新コンセプトで展開する。

 マリオンの双璧、阪急はどちらかといえば女性がメインのルミネに対して、ターゲットを完全に男性に絞って10月15日に「阪急MEN'S TOKYO」としてリニューアルオープンする。ストアコンセプトは「おしゃれにこだわる大人の男のための高感度メンズファッションストア」であるといい、スペシャリティーストアとしての性格を打ち出している。売り場面積が狭い館であるため、ターゲティングとポジショニングを明確化しているのだ。恐らく、JR有楽町駅の裏から東京駅丸の内口前の丸ビル・新丸ビルの間まで伸びるブランド店街「丸の内中通り」と性格が似ているのではないだろうか。だとすれば、うまくその導線が作れれば街が拡大し、面白いことになるだろう。

 かつて流通は商圏内の「地域一番店」を目指した。しかし、銀座松屋・三越の共同販促での呉越同舟の例だけでなく、有楽町エリアの活性化は、流通各社がドミナント(船団)を組んでいるように見える。それは、人口縮小と消費者の価値観・趣味の多様化に原因があるのだろう。高度成長からバブル経済の頃は、新規客として価処分所得が上昇した人が増えたり、農村部から人が流入したりして、市場のパイは拡大した。だが、人口縮小と経済停滞で拡大はもはや望めなくなった。個別の競争をしている場合ではない。ドミナント的にエリア(街)の魅力を高め、かつ、ターゲットを明確にして確実な顧客取り込みと囲い込みを果たすしかないのだ。他のエリアと客を取り合う「街間競合」の時代になったのである。



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