2011年9月30日金曜日
■国内消費に失速の可能性、生産活動に外需減とのダブルパンチも
国内消費に失速の可能性、生産活動に外需減とのダブルパンチも
http://news.infoseek.co.jp/article/29reutersJAPAN234120
[ 2011年9月29日16時12分 ] (ロイター)
9月29日、東日本大震災の影響から脱し、回復軌道に乗りかけてきた個人消費に再び失速の可能性が高まってきた。都内で4月撮影(2011年 ロイター/Yuriko Nakao) [東京 29日 ロイター] 東日本大震災の影響から脱し、回復軌道に乗りかけてきた個人消費に再び失速の可能性が高まってきた。円高の長期化と海外需要の縮小が企業収益を悪化させ、所得を抑制する圧力がかかっているためだ。
10─12月は国内総生産に対する寄与もマイナスとなるとの見方が強まっている。国内消費の減少は、海外需要の減速と相まって、生産活動を圧迫する悪循環にもなりかねない。
<夏場の反動減と円高デフレの影響も>
国内消費は、大震災の打撃を脱し、夏場までは持ち直し傾向にあった。しかし、29日に公表された8月の小売業販売額は3カ月ぶりに前年を割り込み、しかも2.6%減と大幅な落ち込みとなった。地上波デジタルテレビ放送導入前の駆け込み消費や昨夏の猛暑による夏物需要の反動が出たほか、節電商品の販売が一巡するなど特殊要因のはく落が消費回復の足を引っ張った面もある。
BNPパリバ証券では、震災後からの急回復局面が終わり、さらに7月下旬から耐久財特需が一巡した途端に「消費はたちまち勢いを失った」と指摘。震災以降の消費持ち直しは「基礎的回復力」が弱かったとみている。
今年年末にかけての消費動向についても、失速を予感させる様々な要因が表面化している。
最大の要因は、所得環境悪化の可能性だ。夏場からの円高水準の定着で企業収益は低下の見通しにある。8月景気ウォッチャー調査では、企業部門のDIが、景気の分かれ目を示す50を再び割り込んだ。9月ロイター企業調査では、円高により企業活動に悪影響が出ているとの回答は製造業で63%と半数を超え、円高対応策として半数近い企業は「仕入れ先や協力企業のコスト削減要請」を挙げている。
こうした状況について、ある政策当局幹部は「日本企業ではコスト削減が賃金カットに直結しデフレを招く要因となる」とみており、今後の所得環境に懸念を示している。
第一生命経済研究所では「好調が持続している自動車販売も、今後は次第に伸びが鈍化していくとみられる。個人消費は低調に推移する可能性が高い」と予想する。シティグループ証券では、百貨店での高額商品の販売好調や大型商品である自動車の販売増をあげ、「基調としての個人消費には一定の底堅さがうかがえる」と指摘しているが、「10─12月期は減少する」とみる。
すでに小売業関係者では、売り上げの伸び悩みを訴える声が増え、9月ロイター短観でみると小売業のDIは12月にかけ23ポイント悪化。先行き、消費の失速を予想した動きとなっている。
<回復基調の生産にかげりも>
国内最終需要の大半を担う個人消費の失速は、企業活動を支える生産にも影響を与えかねない。
これまでのところ、秋口までの生産計画は、自動車や一般機械などで従来の遅れを取り戻し在庫を積み増す動きが続く見通しだ。ただ、震災後の急回復局面は一巡し、需要の動きに見合った生産ペースに戻りつつある。そうした中で、9月の鉱工業生産統計の予測調査では多くの業種が前月比で減産を計画。国内製造業PMI(マーキット発表)でも海外からの受注は減速しつつあり、企業がどこまで生産回復を続けられるか、注目が高まっている。
8月の貿易統計をもとに内閣府が試算した輸出数量指数は4カ月ぶりに増加傾向が止まった。世界的なIT関連需要の減退によりアジア向け輸出が減少したことが主因だが、今後は欧州での景気後退を予想する声が増えているほか、米国個人消費が期待ほど回復していないことも加わり、輸出減少への懸念は高まっている。
シティグループ証券では輸出が緩やかな減少に転じた場合、今はまだ一部で底堅さを保っている個人消費がどこまで持ちこたえられるかが当面の焦点になる、とみている。国内個人消費の失速が加われば、自動車をはじめとする生産への下押し要因は強まることになりそうだ。
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