2012年9月9日日曜日

■ハラル対応で観光客呼び込み:沖縄と北海道、イスラム市場に着目[観光]


ハラル対応で観光客呼び込み:沖縄と北海道、イスラム市場に着目[観光]
http://news.nna.jp/free/news/20120910myr001A.html
マレーシア  2012年9月8日(土曜日)

日本ではこれまで対応が遅れていたイスラム教徒(ムスリム)観光客の受け入れ態勢整備に、沖縄県などが乗り出している。同県は豚肉を使用しないハラル(イスラム教徒向け)メニューを提供できるレストランの確保などに着手。中間層の多いマレーシアで「ハラルツアー」として売り出し、将来的にはインドネシアや中東市場の開拓も視野に入れている。

沖縄県は、7日にクアラルンプールで開幕した旅行見本市MATTAフェアに設けたブースで、初めて「ハラルカウンター」を設置し、今夏から力を入れているハラルツアーをアピールした。

ハラルツアーの運営を担当する旅行会社、沖縄ツーリスト(那覇市)のデニス・トルトーナ主任によると、沖縄におけるハラルツアーの開発には3年前から着手し、今年6月にシンガポールから100人規模のムスリム客受け入れが初めて実現した。

沖縄といえば豚を使った料理が有名で、ハラルとは相いれないように思える。しかしデニス主任は粘り強く交渉し、ホテル2軒、レストラン4軒のハラル対応を実現。ブラジルやオーストラリアからパッキングされたハラル対応食肉を調達し、調理器具なども専用のものを用意させた。レストランの一角に祈とうスペースを設けるといった配慮もしている。

今回、MATTAフェアで地場旅行会社向けに紹介しているのは、クアラルンプールから上海や台北を経由して沖縄入りする5日間のツアーだ。食事はハラルに対応しつつ、天ぷらや魚をだしにした沖縄そばなどをメニューに盛り込み、沖縄らしさを出している。一方で一般のツアー客に人気の市場見学などは、豚肉販売店もあるため、コースから外すといった対応を取っている。

デニス主任は「まずはマレーシアのムスリム市場を開拓してから、インドネシアやブルネイ、中東の富裕層にも働き掛けたい。医療ツーリズムの売り込みも考えている」と期待を示した。マレーシア向けには、今回のMATTAフェアで、シンガポールムスリム客の受け入れ実績をアピールしていく。このほかマレーシア地場の旅行会社との間で、11月に25~50人規模の沖縄ツアー催行に向けて商談が進行中という。

■キロロリゾート、今冬からハラル対応

スキーで有名な北海道余市郡のキロロリゾートでは、一部レストランで今年12月からハラル対応を始める。ハラル食肉を仕入れるほか、キッチンを別に設置、ハラル対応経験のあるシェフを雇用するなどし、ムスリム客の誘致を強化する。今回のMATTAフェアでも北海道観光振興機構のブースに出展し、マレー人観光客にハラル対応をアピールした。

キロロリゾートを運営するキロロアソシエイツ(余市郡)札幌営業所の米山佳奈子係長は、「現在はムスリムのマレー人宿泊客は非常に少ないが、マレーシアのほかインドネシアなどのムスリム市場は今後期待できる」と、ムスリム宿泊客が少ない現状にもかかわらず、“先行投資”に踏み切った経緯を説明している。

■エアアジア契機にマレー系の訪日増加

MATTAフェアへの日本の自治体、企業のブース出展をとりまとめている日本政府観光局(JNTO)シンガポール事務所の清水泰正次長は、「格安航空エアアジアXが日本に就航してから、マレー系の訪日旅行者が急増した」と説明している。マレーシア人の訪日旅行は従来、比較的所得の高い中華系が中心だった。ただ交通手段の選択肢が増える中、マレー系のツアーや個人旅行が拡大しているようだ。具体的な統計はないが、清水次長は「エアアジアの機内は半分ぐらいがマレー系ではないか」とみている。

清水次長によると、沖縄や北海道のハラル対応は“観光先進地”ならではの将来に先手を打った取り組みで、日本全体ではハラルへの関心は高まっているものの、具体的な動きは鈍いという。

マレーシアの人口は約2,830万人(統計局の2010年国勢調査)で、中国や韓国といった日本の近隣諸国と比べれば市場は小さい。ただマレーシアの背後には、業界関係者が期待するように16億人とも言われるイスラム市場が広がっている。中国や韓国市場は時に歴史や領土問題の影響を受けることもあり、観光業界にとって市場の多様化は今後の課題と言える。沖縄や北海道で芽生え始めたハラル対応への取り組みがどのような成果を挙げ、また全国へ広がっていくのか注視される。



0 件のコメント:

コメントを投稿