2012年9月10日月曜日

■日本への強制送還も多発!? 「ビザ奴隷」「無給インターンシップ」 無償、劣悪な待遇でコキ使われる米国留学生たちの現実


日本への強制送還も多発!? 「ビザ奴隷」「無給インターンシップ」
無償、劣悪な待遇でコキ使われる米国留学生たちの現実
http://biz-journal.jp/2012/09/post_650.html
2012.09.07

 不景気下であっても、いや不景気だからこそ、海外に活路を見いだそうとする若者は少なくはない。語学をはじめ、さまざまな分野での留学、海外就職を目指す日本人は多く、米国はその留学/海外就職先の人気国の一つである。
「夢を追いかけるために米国に留学。なにかと厳しい海外暮らしであっても、目的に向かって頑張りながら、空いた時間は生活費のためにバイトもこなす」

 このような生活を夢見る若者は多いだろうが、実はここには大きな落とし穴があり、それが日本人の若者を苦境に陥らせている状況は、なかなか日本へは伝わらない。今回は、米国に留学した若者であれば一度は直面する、「ビザ奴隷」「無償インターンシップ」についてお伝えしたい。

 米国に来た留学生のアルバイトは、実は違法であることが多いというのは、あまり知られていない。そもそも米国に留学してくるためには「Fビザ」と呼ばれる「学生ビザ」の取得が必須となっているのだが、このビザの場合、米国内での就労は基本的に禁止。一部学内での制限された労働/時間に限っては認められる場合もあるのだが、学校が終わって夜間にレストランでウエイトレスをするというようなケースは総じて不可。米国でアルバイトをしている留学生たちは、そのほとんどが「不法就労」という現実があるのだ。

 不法就労を覚悟でアルバイトをしようと思っても、今度は雇用側からそのことで足元を見られ、非常に安い賃金しか提示されないケースもある。最悪のケースでは、深夜に水商売のアルバイトをしている最中に、移民局の摘発により検挙され、即時日本へ強制送還されるというのも珍しくない。そう、強制送還されるのは、何も日本領土に上陸した外国人ばかりではないのだ。

無償インターンシップ

 では、働けるビザを取得すればよいのでは? 

 と考えるのは当然だが、これがまた非常な困難なのだ。就労が許可されるビザは、雇用主が決まっていること」が前提。このため、悪条件であっても、まずはどこかの企業に採用してもらう必要がある。ビザ取得の手続きには、企業側にもさまざまな負担が発生するため、おのずと「試用期間」として、一定期間「インターンシップ」という形で無償で働くことが求められるケースも多い。

 しかし、そのインターンシップが終了した後に本当に雇ってもらえるかどうかは、なんら確約がないことがほとんど。もちろん試用期間であるのだから当然ともいえるが、学生たちにとっては貴重な時間を費やすのであれば、少しでも可能性のあるところで経験を積みたいもの。特に大学/大学院を修了した学生には1年ほどの就業可能な期間「プラクティカル・トレーニング」が与えられることもあり、仮に薄給であっても、この間になんとか就職先を探したいと考えるのが一般的となっている。

 ところが、たちのよくない企業であれば、このインターンシップというものを「無償で労働力が得られる手段」と捉え、期間終了後には当然のように採用はせず、あらためて別な若者をインターンシップとして募集するという手法を繰り返すところも少なくないのである。そして米国にはひっきりなしに留学生がやってくるため、現状を知らない若者は、そのような企業にインターンシップとして応募をするのである。

資金も底をつき、日本へ帰国

一方、インターンシップ期間が終わった若者は、資金もビザの期間も底をつき、最悪は日本へ帰国するという羽目になってしまう場合も多いのだ。

 なんとか就職にこぎ着けても、企業側もビザの件は熟知しているため、どうしても足元を見られ、提示される待遇は決してよいものとはいえない。また、解雇された時点でビザも無効となるため、悪条件といえども辞められないジレンマに悩まされる。

 このように、不本意ながらビザのために我慢しなければならない状況を指して、「ビザ奴隷」といった呼び方まであるほど、このような悪状況は広く蔓延してしまっている。

「ビザ奴隷」に「無給インターンシップ」。

 いずれも現地の生活が長い日本人たちには広く知られているのだが、今まさに米国にやってきたばかりの若者たちには、その不条理が見えにくい。これを悪用しようと考える企業が、毎年何も知らない若者を無償でインターンとして採用していく、もしくは低い待遇で社員を雇用し続けていくことが可能となっている。まさに「女工哀史」の世界だ。

 もちろん米国の一流企業に就職すれば、このような問題は解消されるが、そのような人材はごく一部。米国内でも失業者があふれる現在、このような状況が連綿と継続してしまうこととなっているのである。

 ここまでの事例は、どちらかといえば米国で創業された零細企業に多いケース。一方、誰もが知っている日系の大手企業に就職できた場合にも、別な問題がある。

日系企業の現地採用という落とし穴

 それは「現地採用」という落とし穴だ。大企業ともなれば本社から多くの駐在員がやってくるのが常なのだが、彼らと、現地で採用された社員との待遇の差が、驚くほど大きいのも、米国で就職活動をする若者たちの悩みの一つ。給与格差はもちろん、家賃補助や健康保険など福利厚生の面でも、明確な差を付けられているケースもしばしば。駐在員は郊外の高級住宅地に一軒家を構える一方、現地採用社員は小さなアパートで、似たような環境のルームメイトと同居、というケースも多い。

 もちろん駐在員の多くが役職者として責任ある仕事をこなしているという事情もあるのだが、あまりにも格差が大きいこともまた事実。先の「ビザ奴隷」「無給インターンシップ」のようなケースほどではないが、やはり夢を持って海外に出て行った若者をくじけさせてしまいかねない悪習であるといえるだろう。

 不景気も相まって、現在海外に留学する日本人の若者は、どんどん減っているという。一方、中国や韓国といった他のアジア諸国からは、ますます多くの若者が米国の大学に留学している現実と比較すると、いささか寂しいものがある。今後世界の舞台で活躍できる若者を、一人でも多く輩出するためには、海外におけるこのような不公平、搾取にも近い状況を払拭することが必須ではないだろうか。

 そして、前述した日系大手企業の駐在員たちには、

「まずは自ら襟を正す姿勢こそ、日本のビジネス、ひいては日本人ならではの美点である」

ということを、認識してほしい。
(文=田中 秀憲/NYCOARA,Inc.代表)



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