2012年9月6日木曜日

■進む採用ボーダレス化 日本に「就活」する外国籍学生=リクルート


進む採用ボーダレス化 日本に「就活」する外国籍学生=リクルート
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2012&d=0905&f=business_0905_167.shtml
2012/09/05(水) 17:08

 新卒日本企業の新卒採用におけるグローバル人材確保の動きが目立ってきている。採用の中でも「グローバル採用枠」が過半数を占める大企業も現れる中、ボーダレス化する日本の新卒採用市場は、今後どのように展開していくのかリクルートエージェントのグローバル総合企画部 WORK IN JAPAN グループマネジャーの小山秀幸氏に聞いた。(写真は北京での説明会の様子=「リクルート」提供)

――国籍を問わず優秀な人材を採用したいという日本企業の採用ニーズが拡大傾向にあるといわれます。新卒採用における外国籍学生の採用について近年の傾向を教えてください。

 日本本社による外国籍学生の採用は、2010年を契機に大きく拡大しているように感じています。2~3年前にパナソニックが現地法人も含めたグループ全体でのグローバル採用枠の拡大と、日本国内での採用も海外からの留学生を積極的に採用する意向を表明されました。また、ローソンの外国人留学生積極採用、ユニクロ、楽天などでの海外外国人大学生の日本本社直接採用など、一部の先取的な企業の取り組みを契機として外国籍新卒採用は広がりをみせ、今では決して「一部の企業による特別な取り組み」ではなくなってきています。

 特に日本国内にいる外国人留学生は、日本の学生と就職活動スケジュールも同一で、日本語もある程度わかるといったことから、既に国内における新卒採用活動の一環として定着しつつあります。いわば市場浸透期に入ったといえるでしょう。取り組んでいる企業の業界も製造業からサービス業まで、職種もエンジニアから総合職まで多様です。

 他方、海外、特にアジアからの外国籍学生の日本本社採用は、学事日程、文化、言語も異なる活動となるため、数は年々倍増しているものの、こちらはまだまだ市場拡大フェーズといえます。IT、機電系のエンジニアから、総合職採用まで幅広い求人があるものの、文系職種は日本語を必須要件とする企業がまだ多く採用数は若干名がほとんどです。半面、ITエンジニアの採用数は2桁を超える企業も珍しくなくなってきました。

 例えば、ソーシャルゲーム業界では事業のグローバル展開、スキルの高い新卒エンジニアの確保といった目的から海外からの採用を強化しています。日本国内から目をアジアに向けることで採用ターゲットとなる学生の母集団は国内の何十倍にもなりますし、初任給の格差も大きい日本本社採用という条件の提示によって現地の優秀層のみにリーチできる点がその取り組みの動機となっています。

 また、大手企業に限らず100名以下の中小企業でも採用に成功しています。というのも日本での知名度が高い企業でも海外ではあまり知られていませんのでブランドがハンデキャップになりません。競合企業も少数であり「国内よりも優秀な方を採用しやすい」という評価をいただいています。

 全体を通した外国籍学生採用のステップとしては、まず日本国内の留学生から実施し、そこから海外での採用活動に展開される傾向が見られます。

――実際に新卒を海外から受け入れた企業からは、海外の学生採用について、どのような評価をしているのでしょうか?

 リクルートの海外子会社RGF(Recruit Global Family)では2010年9月から海外の学生を日本企業に紹介する「WORK IN JAPAN」というサービスを提供しています。このサービスを利用して2010年度は22社が50人に内定を出し、2011年度は約60社が約150人の学生に内定を出しました。海外の学生を2011年9月に迎え入れた企業からヒアリングした結果では、おおむね高い評価をいただいておりまして、7~8割程度の企業が採用活動を複数年で継続されています。

 あるコンサルタント会社からは「すでに同期を牽引するスター候補もでてきており、、学習力、構造化力、成長意欲、アウトプットのスピードなど文句のつけようがない」という高い評価を聞きました。また、とあるIT企業からは「即戦力としても期待できる。日本で研修した後に上海プロジェクトのリーダーとしても活躍を期待したい」という声もありました。一方、総合職として学生を採用した企業の担当者からは、「配属先では、戸惑いもあった」という話も聞いています。初めて外国籍の新入社員を受け入れる現場では、人事・現場・同僚同士の密なコミュニケーションが鍵となります。

――海外から学生を採用した企業からは、日本の学生と比較して海外の学生は優秀な人材であるという評価が多いようです。学生の意識の違いが、就業後の評価の差につながっているのでしょうか?

 はい。中国に代表されるように、成長率が高く学生数も多い国の学生は、成長スピードに対してイメージする時間軸が短く、他社との競争心も日本と比較すると相対的に高いです。また、海外で就業するからにはできるだけ多くのことを短期間で経験したい、という志向もあります。結果、仕事に対して貪欲でアグレッシブな学生が日本人学生と比較して多い、という就業後の評価につながっているのではないかと思われます。

――海外から学生を受け入れている企業について、全てが成功しているというわけではないと思います。海外から学生を受け入れる上で、企業側が準備すべきこと、また、気をつけておきたいポイントについて教えてください。

 海外学生の採用にあたっては、自社内での採用目的の明確化と採用責任者・教育研修部門・配属先の間のコンセンサス、その後のコミットメントが重要です。海外学生は語学のハンデキャップもあるため、入社初期の立ち上がりがどうしても遅れがちです。採用背景の共有および受け入れ側の配慮がないまま現場に配属してしまうと、学生・配属先の双方が効用感を感じられずお互いにとって不幸なことになります。これを避け、学生に本来のポテンシャルを発揮してもらう上で、部門間の枠を超えて入社前後のコンセンサス形成をしておくことが受け入れにあたってのポイントになるかと思います。

 また、業務目標の設定、査定においてもあいまいさを許容する文化はあまりなく、職務要件などに基づいた明確な役割と、合理的な評価を求めます。このような価値観の相違を理解して、バックグラウンドが異なっても納得を得られるようなマネジメント体制、評価基準を確立する必要が出てくるかと思います。海外から学生を採用することは、グローバルな人材を雇用できる体制かどうかをはかる試金石であるともいえるでしょう。

――今後の動向として海外から新卒を採用しようという動きは続くのでしょうか? 新卒採用についての今後の見通しをお聞かせください。

 外国籍学生の日本本社採用の人数は現状、国内新卒採用と比較すると数%程度のシェアであり、今後もそれを脅かす規模感にはならないと思いますが、外国籍学生の採用に取り組む企業数、採用数は、まだまだ拡大していくものと思います。

 海外採用と一言でいっても日本本社採用が現地トップ学生にとって魅力的と映る国は限られます。中国、東南アジア、インドなどは給与格差が大きく、技術力などの面においても日本、日本企業に対して先進国の一角であるとリスペクトされる面があります。しかしながら、シンガポールや韓国においては必ずしもそうとはいえません。給与格差もほぼなく、ワールドワイドに魅力的な企業も多いからです。

 この観点から考えると、各国の経済成長によって日本への留学、本社採用に対する魅力因子はマクロ的には低減していくといわざるを得ません。レバレッジが有効な今は、外国籍社員の採用、育成ノウハウを身につけ、グローバルレベルでの採用、人材競争力を高めるチャンスであるともいえます。一部の先進的な企業では戦略的にこれを意識した取り組みをされています。

 人材面でもアジアがワンマーケットと捉えられるようになっていく今後において、このような企業の外国籍学生の採用に対する取り組みが、大学の教育現場の変革を促す力にもなっているのではないかと思います。例えば、東大が秋入学を検討し始めましたし、学生の間でも海外インターンシップや留学への関心は高まっています。日本が少子高齢社会になっていく中にあって、多くの日本企業は海外に出て行かなければ成長のチャンスはなかなか得られません。企業の海外進出を支える優秀な人材を世界中から採用する流れは止められないといえます。



0 件のコメント:

コメントを投稿