2012年10月4日木曜日

■意見違えば「裏切り」と決めつける愛国の亡霊=中国青年報


意見違えば「裏切り」と決めつける愛国の亡霊=中国青年報
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2012&d=0926&f=politics_0926_027.shtml
2012/09/26(水) 16:34
       
 25日付中国青年報は、「漢奸(漢族の裏切り者。奸は姦と通用)」のレッテル貼りの下にいる極端な亡霊」と題する論説を掲載した。北京航空航天大学の韓徳強教授が対日抗議デモに参加した際に、異なる意見を示した高齢者にビンタし、「漢族の裏切り者なので一掃したのは感情的にも理屈面でも正しい」と主張したを取り上げ、排他的な「愛国」を批判した。

 韓教授は、日本への抗議表明に故毛沢東主席を持ち出したことを批判する80代の男性をビンタで殴った。インターネットなどで批判の声が出ると、「私は人を殴ることに一貫して反対してきた」とした上で、「日本のために裏切り者になる者に遭遇すれば、我慢することは絶対にできない」、「私は法律にもとづいて罪を認める。しかし絶対に過ちだったとは認めない」と反論した。

 中国青年報の記事は、尖閣諸島の問題で対日批判が高まったことで、一部の人が「自分の愛国の熱情を表明すると同時に、自分と異なる論調に対してはすべて『愛国でない』として排斥する」と指摘。日本に対して冷静に対応すべきと主張したり、日本製品のボイコットに反対する人を無責任に「愛国でない」、「売国奴」、「裏切り者」と決め付けると批判した。

 さらに、自らと異なる主張を「裏切り者」などと決め付ける考え方については「国民は常に、警戒せねばならない」、「なぜなら、よく似たロジックや考え方の方式は、それほど古くない過去に、似たようなことがあった。国民はそのために、重い代償を支払わされることになった。今なお、残された毒は引き続き害悪をなしている」と指摘した(解説参照)。

 記事は、「愛国の表現方式は人ごとに異なっていてもよい」、「それぞれが選択してよい」と主張。「人助けが好きで、同胞を大切にするならば、対日強硬論を唱えなくても、愛国だ」、「たとえ国家のために命を投げ出すことまではせずとも、仕事に励み、きちんと納税しているならば、それも同様に愛国だと言ってよい」と、善良な市民であるならば、愛国的と呼んでかまわないとの見方を示した。

 愛国の目的については「国家がもっとすばらしくなることではないか。国民生活がもっとすばらしくなることではないか」と問いかけ、「国家の利益維持と国益について異なる意見を持てば“売国”や“裏切り者”と蔑(さげす)まれ、経済が全地球化しているのに国産ブランド以外の品を買えば、他人に破壊される危険に直面する。これは、あきらかに幸福な生活の中にあってよいことではない」と論じた上で、同胞の公民権を守ることは、領土と国家主権を守ることと同様に「神聖、不可侵な国家利益を守ることだ」と主張した。

 記事は最後の部分で、「裏切り者を一掃せよ」などとする主張について「一部の者が騒いでいるだけ」、「非主流の風潮」、「社会に大きな害悪を及ぼすには至らないと信じる」と論じた上で、「その背後には狭隘(きょうあい)で極端な亡霊がいる。われわれはいつも、警戒して反省せねばならない」と、人々に「愛国」の本質について改めて考えるよう求めた。


◆解説◆

 「自分と考え方が異なるだけで、裏切り者と決めつける現象があった、それほど遠くない過去」とは、文化大革命時期などを指すと考えてよい。権力闘争で、政敵に「階級の敵」とレッテルを貼り、追い落とす現象が見られた。大衆も、それに乗せられた。

 中国青年報は、中国共産主義青年団(共青団)の機関紙。共青団は胡錦濤国家主席の支持母体。1953年から78年までトップの第一書記を務めた胡耀邦(共産党総書記)の流れを汲み、日本とは融和を目指す考えが強いとされる。胡耀邦総書記は、“日本の過去の軍国主義者”についても「あまりにも狭い考えで国を誤ったが、(本来は日本における)愛国主義者だった」などと、公式の場で異例の発言をしたことがある。



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