2012年4月30日月曜日

■【ビジネスアイコラム】いまだ芸者の写真を使う観光局のセンス


【ビジネスアイコラム】いまだ芸者の写真を使う観光局のセンス
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/120430/mca1204300503003-n1.htm
2012.4.30 05:00

 国内の公営ギャンブルが売り上げジリ貧で赤字に悩んでいる。どこの施設もオヤジばかり。主たる顧客は年金生活者で、国が支払った年金を地方自治体が巻き上げるという笑えない現象が起きているそうだ。

 先日シンガポールに建設された世界最大級の総合リゾート施設「マリーナベイ・サンズ」のトップに会う機会があった。同氏によればマリーナベイ開業以来シンガポールへの観光客は激増しており、本年は1500万人を見込んでいるとのことだ。東京23区と同等の面積、人口500万人でさほどの観光資源もないシンガポールがこれだけの訪問者を見込んでいる。一方の日本は、温泉、富士山、世界遺産と観光資源の宝庫であるのに、2010年に来日した観光客は860万人にすぎない。

 シンガポールの観光客誘致成功の秘密はどこにあったのだろうか? 答えは簡単、マーケティングである。新しい観光商品作りに成功したからだ。商品はシンガポールの国そのもので、その核となったのがカジノを含めたIR(インテグレーテッド・リゾート)。最高の会議施設、高級ホテル、一流レストラン、ブランドショップ、テーマパーク、劇場、水族館や博物館、カジノを併設した巨大な複合型リゾート施設のことだ。

 サンズがシンガポール政府と共同で開発し10年にオープンしたマリーナベイの建設には50億ドルを投資し、すでに3万人以上の新規雇用を創出しているとのことだ。日本ではカジノ導入に関していろいろな意見があるが、シンガポールのしたたかな戦略には学ぶべき点が多い。

 まず、マリーナベイ内のカジノの面積はわずか5%で、ホテルの地下にあるから、一般の観光客には目につかない。外貨獲得がカジノの主たる目的であるので外国人が優遇され入場は無料、シンガポール人は8000円。場内にATMは置かない、国内でカジノの宣伝はしないなど、国民の間にカジノ依存症患者が蔓延(まんえん)するのを防ぐ徹底した施策をとっている。つまり、マリーナベイのイメージをカジノではなく、ファミリーとコンベンション目的の観光客をターゲットとする統合型エンターテインメント施設としてブランディングしたのだ。

 莫大(ばくだい)な雇用と消費を生み出す観光産業は世界最大の産業。各国とも観光客誘致には大いに力を入れている。アジア各国には新しい中間所得層が登場し海外旅行がブームになっている。

 ツーリズムの市場が変わりつつある今、わが国も観光庁を中心にYOKOSO JAPANやCOOL JAPANのキャンペーンを広げているが、日本の国自体を観光商品と見立てたマーケティングと商品力強化の戦略が見えない。観光立国を目指す日本の戦略本部でもあるJNTO(日本政府観光局)のホームページにはいまだに芸者の写真がトップに載っている。



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