旅館の格付け 外国人、いらっしゃい
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2012042902000092.html
2012年4月29日
外国人観光客向けに日本の旅館を格付けする動きが始まっている。数値評価を嫌う国民性から公的な制度はないが、外国人には便利な情報だ。観光立国に向けて訪日客数の増加につながればいい。
格付けといえばミシュランガイドを連想する。日本版も刊行されているが、大都市圏のレストランが主体で旅館の掲載は少ない。旅行会社ウェブサイトのランキングも評価基準は不明で、口コミサイトは主観的だ。
欧米からアジア、アフリカまで世界の主な国々は宿泊施設の格付けを導入済み。外国人はネットなどで旅行先の情報を十分に事前調査する傾向が強い。しかし純和風の旅館で日本文化を味わいたくても、情報は限られているのだ。
中部産業・地域活性化センターが導入に向けて研究している。調査では、外国人客はコストに見合ったサービスは重視するが、外国語の案内はそれほど重視していないことが分かった。少々不便でも、異なる習慣に親しむことに旅の楽しさがあるわけだ。
高山(岐阜県)と伊勢志摩(三重県)で試行後、新潟、長野、群馬の三県七市町村でつくる雪国観光圏が今年から導入した。ニュージーランドの実例を参考に外観や客室のハード面から、接遇や食事のソフト面まで三百超の項目で評価し、参加した旅館三十八軒を一~五つの星印で表した。商談が活発化し、震災前より客数が増えた旅館もあるという。
政府も過去に実験をした。数値評価をいやがる声や、日本特有のおもてなしをどう指標化するのか-との疑問が出て立ち消えになった。旅行消費や雇用創出など観光産業の経済波及効果は大きい。政府は先月、昨年は六百二十二万人に激減した訪日外国人を、四年後に千八百万人とする計画を立てた。達成には戦略が必要だ。
国内の旅行形態は団体から家族・少人数、量から質の時代に変わり、旅館の廃業が相次いだ。海外誘客は生き残りのカギになる。自ら正確な情報を発信しなければ、外国人が自分たちの尺度で日本旅館を評価しかねない。
大事なのは、評価基準を公開することだ。観光客の信頼が高まると同時に、旅館にとっても品質の向上につながる。
格付けに抵抗があるなら、予算を含めた情報開示ととらえればどうか。何よりウエルカムの意思表示になる。小さな温泉郷や民宿にも誘客のチャンスがある。工夫を凝らしながら、全国に広げたい。
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