■「iPhone」や「iPad」も受託生産 世界最大、台湾の「鴻海」とは何者だ
http://www.j-cast.com/2012/03/28127000.html?p=all
2012/3/28 19:27
電機大手のシャープの筆頭株主に、電子機器の受託製造サービス(EMS)の世界最大手で、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業がなる。シャープが鴻海グループを引受け先とする第三者割当増資を実施、シャープ株の約10%を取得する。
さらには亀山工場(三重県)とともに、「液晶のシャープ」のシンボルでもあった堺工場(大阪府)を運営するシャープディスプレイプロダクトに、鴻海の郭台銘董事長などが約46%を出資することになり、シャープは「単独路線」を転換、鴻海に飲み込まれかねない雲行きだ。
売上高約10兆円、電子業界最大の「黒子企業」
シャープは2012年3月27日、鴻海グループとの戦略的な業務・資本提携を発表した。この日の記者会見で、次期社長の奥田隆司常務執行役員は「研究開発や設計、生産から販売まですべて自前で手がける単独の垂直モデルには限界があった」と語った。
シャープが出資の約93%を保有し、今回の提携で鴻海精密工業の郭台銘董事長や他の投資法人などが約46%を保有することになったシャープディスプレイプロダクト(堺工場)は、2011年末まで80~90%の稼働率を維持してきたが、世界的なテレビの販売不振と価格下落などで足もとの稼働率は50%程度にまで下落していた。
今回の提携によって、設計から原料の調達、生産工場などの「共同化」でコストダウンを図るとともに、奥田常務は「鴻海グループがもつ高い生産、加工技術力とコスト競争力を融合して、両社の強みを生かしたグローバルな垂直統合モデルを一緒につくり上げる」と説明した。
堺工場で生産する液晶パネルや関連部品についても、鴻海グループが最終的に50%まで引き取ることで合意。12年10月の供給開始を目指し、「フル操業できることで減損のリスクはなくなった」という。
では、シャープが提携先に選んだ鴻海精密工業とは、どんな企業なのか――。
同社は、郭台銘董事長が1974年にテレビの部品製造を始めたのが始まり。中国に巨大な工場群を展開し、世界中から電子機器の生産を請け負って急成長を遂げた。
徹底した秘密主義で有名なスマートフォンの「iPhone」や「iPad」のほとんどすべてを受託生産しているとされ、またソニーのメキシコ工場(テレビ)や米デルコンピュータのポーランド工場(パソコン)を買収するなどして規模を拡大してきた。
鴻海精密工業が3月27日に発表した2011年12月期決算によると、売上高は3兆4526億台湾ドル(前期比15%増)、日本円でじつに約9兆7000億円にものぼり、シャープの3.2倍の規模にあたる。
世界最大の「黒子企業」、下請け企業といっていいかもしれない。
日立にも「接近」していた
鴻海精密工業の郭台銘董事長はかねてから、「われわれと日本企業が組めば、サムスン電子(韓国)に勝てる」とし、日本の電機メーカーとの資本・業務提携を模索してきた。
日本企業が有する先端技術の取り込みを狙い、需要の拡大が見込める中小型液晶パネルでは日立ディスプレイズの経営権の取得を目指した。結局、日立とは破談したものの、その一方でシャープとの提携交渉を進めていたというわけだ。
一方、シャープといえばほんの5~6年前までは「亀山ブランド」の液晶テレビや「AQUOSケータイ」で成長し、2006年度連結決算(07年4月発表)では売上高は3兆1277億円を記録して4年連続で過去最高を更新するなど、まさに「飛ぶ鳥を落とす勢い」だった。
それが09年度決算で1300億円の最終損益となり、上場以来初の赤字を計上。11年3月期は過去最大となる2900億円の最終赤字を計上する見通しだ。
■NECは「賃下げ」、シャープは「定昇凍結」 春闘、大手電機メーカーが苦しむ
http://www.j-cast.com/2012/03/24126404.html?p=all
2012/3/24 18:00
2012年春闘は3月14日に一斉回答が行われたが、東日本大震災や歴史的な円高、さらにはタイ洪水、欧州危機などで、かつてないほど厳しい内容となった。
とりわけ薄型テレビや携帯電話などが不振の大手電機メーカーは苦しく、労使交渉の中でNECは賃下げ、シャープは定昇凍結に踏み込んだ。
労使とも賃金より雇用を優先
NECは労働組合に4~12月の9カ月間、一般社員約1万6000人の月給を4%削減すると提案した。同社は携帯電話事業の不振などで2012年3月期に1000億円の最終赤字となる見通しで、構造改革が迫られていた。
シャープも定期昇給の一時凍結を労使で協議することになった。2012年3月期に過去最大の2900億円の最終赤字に転落する見込みのため、定昇凍結で人件費を抑制する。同社の定昇凍結はリーマン・ショックで上場以来初の最終赤字となった2009年以来3年ぶりとなる。
今春闘では大企業の多くは定昇を維持しただけに、NEC、シャープの苦境ぶりが際立つ。NECは一般社員の賃金カットだけでなく、役員は報酬を1~4割削減、管理職は5~7%賃下げすると提案した。
同社は今年1月に1万人規模のリストラを表明したばかり。同社の労働組合は「業績悪化でコスト削減が必要という認識は共有しており、今後の対応を検討したい」とコメント。1万人規模のリストラと賃下げが同時進行する形となり、労使とも賃金より雇用を優先せざるを得ないとみられている。
今春闘は、円高や東日本大震災の影響で定昇の維持が最大の焦点となった。大手電機の中で7800億円の最終赤字を見込むパナソニックはじめ、日立製作所、東芝、三菱電機など大半は定昇を維持した。トヨタ自動車、日産、ホンダなど自動車メーカーも一時金(ボーナス)の前年割れが目立ったが、定昇は維持した。
中小企業はこれからが本番
経団連は今春闘で、震災と円高を理由に2004年以来8年ぶりに定昇凍結の可能性に言及していたが、大企業の大半は一時金を削っても、組合員との約束である定昇維持を選択した。
今春闘の一斉回答について、経団連の米倉弘昌会長は「電機、自動車、鉄鋼など日本の主要産業が企業の存続や雇用維持を最優先し、精一杯の努力をした。定昇は経営サイドも重く受け止めており、一時金も微少な減少で済んだ」と評価した。
シャープは社長が事実上の引責辞任を迫られるなど、経営側にとっても「痛み」を伴う結果となった。
連合の古賀伸明会長は会見で「要求からすると十分でないかもしれないが、ぎりぎりの交渉で引き出した回答には重みがある。今回の中央の回答が地方の(中小企業などの)底上げとなるよう努力したい」と語った。連合が求めた総額人件費の1%上乗せは、今春闘でも経営側から明確な回答がなく、曖昧な決着となった。
多くの大企業は定昇維持で妥結したが、中小企業の春闘はこれからが本番で、雇用や定昇維持をめぐる攻防が続く。中小企業の春闘は、大企業の一斉回答を受けて労使交渉が本格化し、3月下旬から5月にかけて妥結するケースが多い。
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