2013年5月28日火曜日

■インド 結婚に「トイレの証明写真」を義務付け

インド 結婚に「トイレの証明写真」を義務付け
Men Pose With Toilets to Woo Brides
屋外排泄が一般的なインドでは「トイレ持ち」の男は結婚に有利。深刻なトイレ不足の解消にも一役買っている
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2013/05/post-2937.php
2013年5月22日(水)18時47分
エイミー・シルバースタイン、ジェーソン・オーバードーフ

 自分たちと同じように、女性もトイレを使う必要があるなんて信じられない。それがインドの男たちの考えだ。

 インドでは女性が公共トイレを使う場合、お金を払わなければならないことがほとんどだ。もちろん男性ならそんなことはない。ムンバイの中心部にある公共トイレは、女性用より男性用のほうがずっと多い。

 昨年は、女性用トイレがないから屋外で用を足すように、と言われた若い妻が夫の家から逃げ出す事件があり、ニュースになった。

 トイレ問題に気付いた一部の独身男性は、自分の家には安全で清潔な室内トイレがあることをアピールして、女性たちを引き付けようとしている。英字日刊紙タイムズ・オブ・インディアによれば、インド中部マディヤプラデシュ州のセホーレでは、自治体主催の合同結婚式に参加する新郎は自宅トイレの横でポーズを取った写真を持参することが義務付けられている。

 セホールにおける深刻なトイレ不足から生まれた強制措置だが、新郎たちはこの変わった解決方法を受け入れているようだ。「携帯電話やデジタルカメラで撮影した写真をうちのスタジオへ印刷に来るよ」と、セホールでカメラ店を経営するデベンドラ・マイティルは言う。

サリーをまくり上げて線路脇で用足し

 インドでは屋外で排泄をするのが非常に一般的で、この国に来た観光客が最初に目にする光景の一つだ。列車の往来が激しい線路沿いでも、線路脇の側溝や斜面でも人々はうずくまっている。通り過ぎる列車の傍で、顔までサリーをまくり上げて用を足す女性もいる。

 5つ星ホテルの近くのビーチをちょっと歩くと、砂浜がトイレになっている。デリーやムンバイのような混雑した都市でも、スラムの住民が空き地やゴミ捨て場を臨時トイレとして使っている。ムンバイでは用足しの最中にヒョウに襲われる人もいる。

 健康に及ぼす影響は深刻だ。WHO(世界保健機関)によれば、約6億2600万人のインド人が屋内トイレを利用できずにいる。その数は、「トイレなし人口」2位以下の18カ国の合計の2倍以上だ。何トンもの排泄物が下水道で処理されることなく、給水システムにしばしば流れ込み、下痢などの病気を引き起こす(インドでかかる病気の約10%は、危険な水や不衛生が原因となっている)。

 しかしセホールの政策から分かるように、最近のインドはこの問題に真摯に取り組んでいる。ジャイラム・ラメシュ農村開発相の下、インド政府は10年以内に屋外排泄を撲滅するという目標を掲げる。農村開発省はトイレ敷設のための支出を大きく増やし、人々が自宅にトイレを作るよう促すさまざまな革新的制度を考え出している。

 それでも状況の深刻さと悪化する水不足のせいで問題はなかなか改善されず、新たな排泄物処理技術の開発がどうしても必要だ。WHOが提案する一番単純な解決策は、コンクリートの大きな穴を使って排泄物を肥料に変えるというもの。これはNPOのスラブ・インターナショナルが採用している。

 一時しのぎの手段として、農村部には適しているだろう。しかし大都市では、長期にわたって有効な解決策にはなり得ない。それにこうした設備を政府が設置したところで、使われずに終わることが多い。臭くて排泄物の飛び散ったコンクリートの穴を使うより、大自然の中でするほうがいいと村人たちは考えるだろうから。

(GlobalPost.com特約)



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